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【タイトルのかかるクラシコ】スーペルコパ決勝 FCバルセロナ対レアル・マドリー マッチレビュー【23/24】

クラシコはやってくる。チームの調子が悪くても、怪我人が多発していようとも。

前回対戦は10月28日のラ・リーガ第11節。ジュード・べリンガムに「黙らされて」以来、バルセロナはどうも進むべき道を見失ってしまったように思える。リーガの優勝争いはいまやマドリーとジローナのつばぜり合いとなり、バルサは勝ち点差8を必死にキープしているのが現状だ。

クラシコは劇薬だ。勝てば天国、負ければ地獄。さらにこの対戦ではタイトルまでついてくる。

どこか自信をなくし、立ち尽くすチームを変えるために必要なものは何か。結果である。目に見える、心から喜べる、血が沸き立つような勝利。それは目の前に用意されている。エル・クラシコでテンションが上がらない選手などいない。勝てば喉から手が出るほど欲しい、再浮上するキッカケが手に入る。

それでは、決戦といきましょうか。


スタメン

決勝を戦う22人

もともと少数精鋭の両チームだが、怪我人に次ぐ怪我人でお互い大変なことになっている。マドリーはシーズンの頭にクルトワとミリトンを失い、アラバも今シーズンはもう見られない。気づけばもう32歳、ルーカス・バスケスも太ももを痛めて離脱している。でもCBの補強はしないらしい。

バルセロナはもともとトップチームに19人しか登録しておらず、その代償がガビに降りかかった感がある。過労が祟った結果シーズンアウトの大怪我を負った。ペドリの時から何も学んでいない。テア・シュテーゲン、イニゴ・マルティネス、マルコス・アロンソの30代トリオにカンセロも離脱し、毎試合走りまくっていたハフィーニャも3日前にハムストリングを痛めてしまった。ギュンドアンが元気なのが不思議。

ハフィーニャが離脱したことで注目されたのは両WGの人選。なぜ左も注目なのかというと、最近はフェリックスの序列が下がってフェラン・トーレスがスタメンを任されているから。これはシメオネにも口酸っぱく言われていたであろう、継続性の不足が理由らしい。

バルセロナの中盤以前の選手の中で、非保持の走り合いも含めたデュエルでマドリーの選手たちに対抗できそうなのはガビ、ハフィーニャ、デ・ヨングの3人しかいない。そのうち2人が離脱しているなら、ラインを下げてフェリックスの推進力に賭けカウンターを狙うのも選択肢の1つだ。チャビはクラシコでその選択を日和るような監督ではない。

だが、チャビが選んだのはセルジ・ロベルトの起用による4MFスタイルだった。右はヤマルではなくフェラン・トーレス。ここから読み取れるのは、あくまでプレッシングは捨てずにアグレッシブに行くぞ、という姿勢。そしてボール保持を基調とした試合運びをするという宣言である。



前半

そういう宣言だと受け取ったものの、試合はマドリーのボール保持から始まった。バルセロナが思ったようにプレスを掛けられなかったからだ。

マドリーの保持

2人で4人をピン止め。メッシ偽9番の解説で何度も見た図

バルセロナは、ヴィニシウス対策でアラウホを右SBに配置した。これは何度も繰り返した、言わばクラシコにおけるいつもの風景というやつだ。当然、アンチェロッティが対抗策を考えていないなんてことはありえない。

アラウホは基本的にヴィニシウスにかかりきりで、放置して前進してくることはないと言っていい。そのためヴィニシウスを中央から動かすことで、最も厄介な守備者をゴール前から追い出すことができる。ロドリゴは残った3枚が絶妙にマークを指定しづらい位置をうろうろしている。こうして、4人のDFラインを2人でピン止めしておくことができた。

バルセロナはせっかく4MFの布陣でスタートしたものの、2人も数的優位を作られては手を出しづらい。ペドリを前に押し出した442で守るのが基本だが、クロースがチュアメニと横に並んだり、縦関係になってみたり、CB間までサリーしてみたりとペドリがどこまでついてくるか探るように移動を繰り返す。べリンガムとバルベルデには過去にゴラッソを決められており、この2人は自由にさせたくない。

結果として、マドリーの最終ラインの選手はほぼフリーでボールを持てることになった。ガビとハフィーニャが両翼ならもっとアグレッシブに上下動させられたが、このへんはないものねだりとしか言えない。形だけ過去の焼き直しをやっても、その布陣で優位性を保てていたコアとなる選手がいないと意味がないのであった。


クンデがめちゃくちゃ目立つけど、あそこを1vs1にした時点でだいぶチームとして負け

そのままふんわりプレスに行ったり行かなかったりするバルセロナだったが、そんな甘さを許してくれる相手でもなく。代償を支払ったのは試合開始からわずか6分後のことだった。鬼2人のロンドとかやったらだいたい罰ゲームで腕立てをやる羽目になる「2人の間を通される」をやってしまい、ナチョからチュアメニにボールが渡る。あとはペドリが遅れて戻り、デ・ヨングが遅れて加勢に行き、最後はクリステンセンが遅れてすっ飛んできたのも織り込み済みなべリンガムにあっさりスルーパスを通されて勝負あり。

最後のクンデの対応も確かにまずかったが、これだけ派手にCBが釣りだされた時点で勝負ありとも言える。普通ならアンカーポジションの選手が穴を埋めに下がるところだが、そんな仕組みも今のバルセロナにはない。というかそういうキャラの選手がロメウくらいしかいない。そもそも、これだけ頻繁にDFラインが変わるとラインコントロールを誰がやっているのかも定かではない。2失点目はもろにそんな感じだった。

バルセロナの保持

走らせたくない選手のタスクをシンプルに

対して、マドリーは非保持もしっかりとプランニングしてきていた。サイドで窮屈そうにしているアラウホにヴィニシウスをマンマークでつけ、上下動の負担を減らすと同時に非保持で計算できる存在に。べリンガムはギュンドアンを、クロースはペドリをそれぞれ監視する。セルジ・ロベルトとレヴァンドフスキはDFラインとの駆け引きを繰り返すが、2CBとチュアメニがよく連携して仕事をほぼさせなかった。フレンキーの持ち出しには同等かそれ以上の馬力とスピードを持つバルベルデが対応し、バルデにボールが渡ればプレスバックして2人で守ることを欠かさなかった。意味不明なタスク量である。

バルセロナとしては1対1となっているペドリとギュンドアン、そしてフェランのところを突破口にチャンスシーンを作ることができた。惜しむらくは順足WGなのでシュートが難しい角度になりがちだったこと。あとはメンディを突破できた場面がひとつもなかったことだろうか。左サイドではネガティブトランジションで唯一太刀打ちできるMFであるデ・ヨングを前に出しにくく、孤立気味のバルデからいいクロスが上がることはなかった。カルバハルとバルベルデに監視されていては仕方ない部分もあるが、こちらも突破からのチャンスは見られず。レヴァンドフスキは業を煮やしてPA外に幾度となく顔を出し、結果的にスーパーミドルを決めた。すべてにおいて意味不明なゴラッソだった。

2点リードして押し込まれるのを許容していたマドリーを慌てさせることができたんじゃないか?という追い上げムードを呼び込めそうな衝撃的な一発だったが、なんと5分かそこらで再び突き放されるPKを与えてしまう。左サイドでマークの受け渡しがうまく行かず、どフリーでクロスを上げられた。初のコンビだったとはいえ、引き続きこういうミスを見逃してくれないのがマドリーの憎らしいところ。

後半

何かを変えたいバルセロナ

このままでは終われないバルセロナは、後半からセルジ・ロベルトとペドリの位置を変更。期待されるのは背走が得意でないクロースにセルジ・ロベルトをぶつけて負担を増やすこと、そしてペドリがチュアメニやバルベルデを引っ張り出してチャンスを創造することだろう。あとはセルジ・ロベルトを押し出すことによってプレスの強化を狙ったのかもしれない。マドリーは変更なくスタート。

しかし後半も突破口は見つからず。中盤3人の技術は折り紙付きで、マドリーの姿勢も相まって簡単に押し込める。セルジ・ロベルトが幅を取り、フェランはほぼ2トップのような位置でランニングを繰り返した。しかし決定的なチャンスは創出できず、60分に3枚替えに踏み切ることに。ペドリ→フェリックス、フェラン・トーレス→ラミン・ヤマル、セルジ・ロベルト→フェルミン。どれも同ポジションの交代。追う展開でペドリを下げたのは、復帰明けでのプレータイム管理という側面もあるかもしれない。

どうにかして追いつかねば


入ってきた3人は、いずれもボールを持って何かを起こせる選手。4-4のブロックに組み込みづらいのも共通点かもしれない。特にフェリックスは縦横無尽に動き回り、リュディガーにイエローカードを出させるなどクオリティを発揮していった。

選手交代の結末

しかし交代から5分も経たないうちに、ダメ押しとなる4点目を浴びて撃沈。フェリックスが逆サイドまで出張したものの周囲と呼吸が合わずボールロスト。回収したべリンガムにギュンドアンとフェルミン、デ・ヨングが吸い寄せられ、奪えず綺麗に逆サイドまで展開される。1点目もそうだが、べリンガムは本当にスペシャルな選手。あと10年もこれとクラシコやらないといけないんですか?

溜めて周囲の目を集め、さらっと展開

バルベルデはカルバハルとうまくパスを交換し、右サイドを爆走。結局バルセロナはクリステンセンが引っ張り出された穴を埋めるのも、DFラインの手前をプロテクトするのも誰の役割か曖昧なまま失点まで行ってしまった。前のクラシコでここのギャップ埋めてたの、そういえばガビだったよな。ロドリゴの足元にボールがこぼれたのが不運と言ってしまえばそれまでだが、2対1の状況でヴィニシウスにきちんとクロスを入れられたのも含め、同点に追いつけるチームとは思えない失点だった。

すっかり意気消沈したバルセロナは、アラウホの退場もあり万事休す。アンチェロッティは悠々と主力組を交代させ、最後にはフアン・マルティネス・ムヌエラ主審にも温情をかけられAT0分で試合終了となった。


チャビバルサに先はあるか

冒頭に書いたように、クラシコは劇薬だ。敗北を喫したいま、チャビの周りが騒がしくなるのは当然だろう。

昨シーズン、バルセロナは強固な4バックと猛烈なプレス、そして少しのひらめきを武器にラ・リーガチャンピオンとなった。いまのチームには何も引き継がれていない。チャビによる落とし込みはうまく行っていない。もちろんそうだろう。

それでも、チャビは自分の描くキャリアプランを曲げてここに来た。去年はラ・リーガ優勝監督にもなった。それがこれで終わりか?違うでしょう。これくらいで退くわけにはいかない。こんなところで終わるわけにはいかない。

次は国王杯だ。ラ・リーガだ。CLだってまだ勝ち残っている。勝ってくれ。勝って、自分たちの力を証明してくれ。喧噪を黙らせるには、結局目に見える結果しかないのだから。



2024/1/15 Supercopa de Espana Final
Real Madrid 4-1 FC Barcelona
Al-Awwal Stadium 





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