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選手と物語の間をとりもつ実況が好きだ。

えとみほさんのこちらのツイートに共感しました。


日頃から熱心にスポーツ観戦しない私のような層からすれば、やっぱり選手の情報というかサイドストーリーを教えてもらった方が感情移入しやすい。一方で、目の肥えたファンからすればそんなの知っていて当たり前。サイドストーリーなんていらない。競技の内容だけ言ってほしいみたいな気持ちになる人もいるんでしょうね。その気持ちもわかる。


名実況によって生まれる熱

詳しいとまではいかないけど、フィギュアスケートを見るのが昔から好きなんです。そういう私からすれば、やっぱりサイドストーリーを過剰に強調し、それを一人歩きさせるような手法は萎える。

とはいえやっぱり実況や解説の力って大きいなって感じています。選手の素晴らしい演技や努力がまずありきなんだけど、そこに名実況、名解説がのった瞬間ってものすごい熱が生まれる。アテネオリンピックの男子体操団体、富田選手の演技で刈谷アナウンサーが

伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ。

と着地に合わせて実況したのは典型的な事例ですよね。これ私もリアルタイムで見ていて、鳥肌がたったことを記憶しています。富田選手の演技がありきであることは間違いない。だけどこの名実況がなかったらここまでの熱が伝わらなかったと思うんです。だから選手の活躍の熱を上手に伝播させるような実況や解説は、あった方が楽しめると感じています。


佐藤有香さんの解説力

そんな私がフィギュスケートの解説において好きなのは、佐藤有香さんです。名コーチである佐藤信夫さんを父に持ち、オリンピックに2度出場し入賞を果たし、世界選手権でも優勝されたかつての名選手です。冷静かつ柔らかい口調で、喋りすぎず必要な箇所で適度にストーリーを伝えてくれるところが私は好きです。

今でも記憶に残っているのは、長野オリンピック女子フィギュアスケートでタラ・リピンスキー選手のフリースケーティングでの解説です。軽くこの時の選手の構図をご説明すると、アメリカのタラ・リピンスキー選手と、同じくアメリカのミシェル・クワン選手の実質2強状態だったんです。クワン選手は「ミス・パーフェクト」と形容されるほどその演技は美しく完璧。一方でリピンスキー選手は14歳で全米チャンピオンになったジャンプが得意な選手です。

で、この勝負、地元開催でしたし結末をご存知の方も多いかもしれませんが、優勝したのはタラ・リピンスキー選手なんです。優勝候補のクワン選手が先に完璧な演技を披露したんだけど、後に滑ったリピンスキー選手はさらによかった。この時の佐藤さんの解説を今でも覚えています。

youtubeを漁ったら動画がたくさん出て来ます。(貼ろうかと思いましたが、公式的なものはなさそうなのでやめますね。)後半スローテンポになった時の解説が特に好きです。

ここからですね。ミシェル・クワン選手と比べられてしまっているんですが、よく見てください。足のつま先から手の先、ジャンプだけでなくこういうところもスケートの技術を活かしたプログラムなので、これは評価してあげたいです。

そうなんです。リピンスキー選手がジャンプが得意な選手だったものだから、マスコミは「表現力のクワンVSジャンプのリピンスキー」みたいなわかりやすい言葉で煽っていましたが、リピンスキー選手には彼女なりの芸術性、美しさがある。それをここぞのタイミングで柔らかく伝える素晴らしい解説だなと感じたことを覚えています。

このあとリピンスキー選手は3回転+3回転のトリプルループを決めるんですが、これに対するアナウンサーの言葉もいいんです。

このコンビネーションが彼女を世界チャンピオンにしました。

このコンビネーションジャンプを決めることがいかに難しく、成功することがいかに価値があるかをわかりやすく、一言で視聴者に伝えるいい表現だなぁと。


選手の技術と物語の間をとりもつ実況・解説を楽しみたい

こんな風に選手のがんばりを中継する実況や解説は私は大賛成。競技自体が広く知られて広く愛されることで、業界が盛り上がりそれが選手へ還元されるはず。だから広く伝播させ、入り口を入りやすくすることってスポーツにおいて大事だと思うんです。その入り口にたちストーリーを伝えるのが解説者や実況するアナウンサーであり、彼らの力って大きい。

今回のオリンピックも選手の活躍はもちろんなのですが、実況や解説の言葉選び、タイミング、言い方に注目してしまうんだろうなぁ。それが私のウィンタースポーツの楽しみ方です。

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浜田 綾(コトバノ):ライター
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