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【業界地図オフ会】介護業界 歪みゆく市場と成長戦略
こんにちは、がぱけん(@gapaken335)です。
このアカウントは私が仕事や書籍、日々の気づきを通して考察したものを共有するものです。少しでもみなさまのインプットや気づきになると嬉しく思います。
今回は、おしばさん(@lumanabu)が主催している、業界地図オフ会に参加してみましたので、その内容をシェアします。
今回のテーマは「生活・公共サービス」警備、ウェディング、介護など、普段ビジネス文脈で目立つことは少ない、でも生活する上で欠かせない。
そんな業界達にスポットライトを当てます。
全体を通して個人的な気付きは「労働集約型のビジネスで儲けるには一捻り必要」ですかね。
あとは、「プリンスホテルは華族の所有していた土地建物を買い叩いたのが紀元」とかでしょうか。
さて、今回の私のテーマは介護業界。
10.2兆円と言う超巨大市場でありながら、直近の確実な成長が見込まれている市場の特徴や構造と、その激しい環境で唸るような経営戦略で高利益を叩き出しているチャームケア・コーポレーションを紹介します。
(口頭プレゼン用パワポ資料メインでお送りします。ご了承ください。)
それでは本題にまいりましょう。
介護ビジネスの全体像。
まずは前提知識。
メガトレンドとして君臨する少子高齢化社会の介護需要から。
基本的に、被介護者の大多数は高齢者なので、高齢者の数が多ければ多いほど需要が拡大します。
2025年までは規模ベースで確実に成長を続ける見込みだが、意外にもその後は全体人口の減少に伴い徐々にシュリンクします。
しかし、その間も高齢化率は上昇し続け、2040年には75歳以上の割合が20%を超える見込みです。
当たり前のこととして知ってはいましたが、データを見るとなかなかに凄まじい環境ですね。国が年金受給年齢を引き揚げたり、高齢者の自己負担額を増やすのも肯けます。
さて、お次は現在の市場規模。
なんと10.2兆円の超巨大市場であり、そのうちの9割が介護保険給付、つまり純粋な自己負担額は1割程度です。
その代わりに、医療行為と同様に、介護サービスの報酬単価については政府が決定しており、民間企業自ら設定することはできません。
総じて、大きくて成長しているが環境依存度が高い市場と言えるでしょう。
次にカテゴリの全体像をみてみましょう。
一言で介護と言っても様々な種類のサービスが存在します。
まず、覚えておきたいのは、民間企業が参入できない領域があると言うことです。
国民のセーフティネットとしての役割を担う「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護老人保険施設(老健)」、「通所リハビリ」などは民間での運営は許可されていません。
民間企業で許されているのは「通所介護」「訪問介護」などの介護サービスをメインで提供する事業と、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」などの住宅と介護サービスがセットになった事業などが挙げられます。
では、民間企業としてはどのようなプレーヤーがいるのでしょうか?
各カテゴリごと、規模順にいくつかピックアップしてみました。
特徴として見て取れるのは、トップ企業でも、市場シェアは3%弱と低いこと。つまり、中小規模の企業が乱立していることです。
これは
①参入障壁が低く
②労働集約型ビジネスであり資産のレバレッジが利きづらく
③顧客との距離が近い必要があるが、顧客は全国に分散している
ことにより、起こっている現象だと推察します。
続いて収益構造について。
先に少し触れましたが、介護業界は労働集約型ビジネスです。
言い換えれば、売上を成長させるためには人を投入する必要がある業界なのです。
そしてある程度サービス単価が固定されてしまっている。
そうすると、重要なのが売上高に占める人件費率です。
以下にまとめています。
サービスの内容にもよりますが、売上の60%から70%が人件費で占められています。
さらに、この割合は年々上昇しています。
その理由は「介護人材の報酬単価上昇」です。
大変で需要のある仕事にはそれ相応の給与をもらうべきなので、正しい流れだとは思います。
しかし、経営へのインパクトは大きく、結果、2016年に取られた統計では介護事業の平均利益率は3.3%とされています。
そしておそらくそのトレンドは続くでしょう。
厚生労働省は2025年には介護人材の受給ギャップが37.7万人に拡大すると主張しています。
圧倒的人手不足です。
人材確保のためにも今後も報酬改定の流れは続く可能性があり、本格的に"儲からないビジネス"になってしまう可能性が高いと思います。
介護業界全体をまとめると
「需要があり、市場が大きいのに儲からない業界」と言うことになります。
社会としては必要な機能なので、なかなか渋い話ですね。
うーむ。現実は甘くないなぁなどと考えていたら、こんな企業が目にとまりました。
営業利益率9.7%!
まさかの超優良企業が介護業界にもあったのです。
と、言うことで後半はこちらのチャームケア・コーポレーションを個別分析していきます。
介護業界の星、チャームケア・コーポレーションを分析
まずは基本情報
東証一部上場、大阪がルーツの会社のようです。
売上の推移を見てみます。
気持ちいいほどの右肩上がり。創業後15年間で売上200億円を超える勢いまで成長させています。
まごうことなき高利益、高成長の超優良企業。
その成長戦略の秘密を探ります。
まずは提供しているサービスから。
事業は介護付き有料老人ホームに集中しています。
なぜか?
理由は参入障壁にあります。
介護付き有料老人ホームを運営するためには、自治体の公募に対して採択される必要がある。そうすると、実績と資金の少ない中小企業はなかなか参入できないのです。
サービスの特徴としては、近畿都市圏と首都圏に集中した好立地と、質感の高い住空間が特徴です。
高級住宅かホテルと見間違えそうな美観。
これをみて、正直私も入居したいと思いました。
結果として、利益率に大きく寄与する入居率は驚異の97%を叩き出しています。
野村総研の調査によると、介護付き老人ホームの平均入居率は87%、間違いなくこの数字は高水準です。
生活空間の質を高めることで、満足度を上昇させ、入居率を高める。
これが顧客を取りに行く戦略ですね。
高収益を実現するためには、顧客単価や費用構造も重要なポイントです。
物件の収益構造をみてみましょう。
介護付き有料老人ホームの良いところは、介護サービス以外の収入が存在することです。
住居や設備などの月額利用料が発生するので、そちらでの価値を高めることで政府主導の単価設定の呪縛から逃れることができます。
収益の中の介護サービスの比率は約40%と低く、前述のリッチな住空間やサービスを高単価で販売。貢献利益(本社費用などを除くビジネスとしての収益率)20%を確保しています。
これは私見ですが、死に向かって財産をゼロにしていく人は稀で、高齢者ほど現金を持て余している節があるので、いいものを作れば高くても売れると言う印象です。
(月額利用料約50万円の物件もあるそうですよ。)
また、このビジネスの優秀な点は人件費率を押さえたことと私は考えます。
前述の通り、人件費の高騰が予測される中、人件費率が高いモデルはリスクを孕みます。
抗えないメガトレンドに対して、収益構造を変えることで対処する。
素晴らしい戦略だと思いました。
ちなみに成長の見込みも折紙付きで、今後の高齢化トレンドは特に都市部で顕著に現れます。
都市部の団塊世代は資産額も大きいので、見込み顧客の拡大として伸び代は十分です。
まとめてみましょう。
チャームケア・コーポレーションは、厳しい外部環境の中、優れた経営戦略により、高利益体質で高成長を実現しています。
超優良企業ですね。
株価もグングン伸びています...!!
結びとして。
絶対に必要になることがわかっているのに、ジリ貧に追い込まれている介護業界。この構造はいずれ社会問題に発展するでしょう。
年金しかり、公的資金を注入して回している業界は支える人間と支えられる人間の比が大きく変動すると崩れます。
将来的には、少ない人員と質の低い環境で無理やり回す最低限の介護と、潤沢な料金を支払える人だけが受けられる高級介護の格差が広がっていきそうな気がします。
そう考えると老後資産の積立もちゃんと考えておかないといけないなあなどと感じる今日この頃です。
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