1兆ドルコーチ ビル・キャンベルからの学び
『1兆ドルコーチ ~シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え~』を読みました。そこには、故ビル・キャンベルさんのエピソードからリーダーのあり方とコーチの資質を学ぶことができました。VUCA時代だからこそ、リーダーには、メンバーやチームを導くためにコーチの資質がより必要となってきていると感じました。
故ビル・キャンベルさんについて、簡単に触れると、フットボールの選手、コーチから39歳でビジネス界に転身し、スタートアップ期のGoogleやスティーブ・ジョブズがアップルを立て直すのを助け、その他たくさんのIT企業の成長を支援しました。
本書は6章から構成されていますが、リーダーとして「1兆ドルコーチ」となるためには、大きくは以下の4つの行動がカギになると主張しています。
1. 「人がすべて」という原則に立つ
どんな会社の成功も支えるのは「人」である。マネジャーは肩書きがつくり、リーダーは人がつくる。リーダーの一番大事な仕事は、メンバーが仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことであり、リーダーはメンバーに対する「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきである。
「支援」は、ハイパフォーマーだが扱いの難しい「規格外の天才」には寛容で、守ってあげる支援体制を築きます。
「敬意」は、メンバーを会社の目標に強く結びつける効果があり、しっかり報酬を払うようにし、去る者にも敬意を払います。
「信頼」は、コーチングにとても重要で、信頼とは「約束を守ること」、「誠意」、「率直さ」、「思慮深さ」であると表現し、信頼関係を築くための素質が4つあると示しています(2.で詳細を説明)。
2. 人に対して「4つの(コーチャブルな)資質」を求め、潜在能力を引き出す
信頼関係が築く=「心理的安全性」のある環境をつくるために、リーダーは人に4つの(コーチャブルな=コーチングを受け入れる姿勢のある)資質=①知性、②勤勉、③誠実、④グリット(GRIT)を求め、ほかの多くの欠点に目をつぶり、支援をしていく。
リーダーは、コーチャブルな相手の話に一心に耳を傾け、何をすべきかを指図せず、物語を語って聞かせ、自ら結論を引き出すようにする。自分が率直になり、相手にも同じことを求める、といった「心理的安全性」のある環境をつくることである。結果、メンバーの潜在能力が引き出され、パフォーマンスが上がっていく(1.と重なる話)。
3. チーム・ファースト、チームを最適化すれば問題は解決する
問題や機会に直面したら、リーダーの最初のステップは、問題そのものではなく、チームに取り組み、そこに正しいメンバー(素早く学習する能力、厳しい仕事を厭わない姿勢、誠実さ、グリット(GRIT)、共感力、チーム・ファーストの姿勢など)を見つけることである。
4. ビジネスに愛を持ち込む
人に関心を持ち、プライベートな生活について尋ね、家族を理解し、大変な時には駆けつける。時間や人脈などの資源を、人のために惜しみなく使う。仕事でも仕事以外でもコミュニティをつくる、など、人々が絆で結ばれる時、チームは強くなれる。
(その他)
上記1.~4.の中に含まれる内容ですが、特に参考としたい点を以下ピックアップしました。
●コーチとは
コーチは、教える相手がどれだけ自己認識できているか知る必要があります。相手の強み、弱みを知るだけでなく、相手が自身の強みと弱みをどれだけ認識しているかを知り、彼らにそれを自覚させ、見えていなかった欠点に気づかせるのがコーチの仕事です。だからこそ、コーチを受ける人に「正直さ」と「謙虚さ」、「グリット」を求めました。
●コーチング手法
「アクティブリスニング」と「フィードバック」の手法。
話を聞くときはいつも、相手に細心の注意を払い、じっくり耳を傾けた。
いつも大量の質問を投げつけた。これは「アクティブリスニング」と呼ばれる手法で、どんどん質問を投げかけることで発見や洞察を促し、本当の問題に気付かせることができる。
正直で偽りのないフィードバックを行った。いつも100%正直で(ありのままを話した)、率直だった(厳しいことを臆せず伝えた)。多くのリーダーはフィードバックを人事考課まで待つが、決定的瞬間を捉えて都度適切なフィードバックを行っていた。批判的なフィードバックは必ず人目のないところで行うように気を配った。
●ミーティングは「旅の報告」からはじめる。
結果、チームに連帯感をもたらす。目的は二つ。一つは、チームメンバーが、家庭や仕事外の興味深い生活を持つ人間同士として、お互いを知り合えるようにすること。二つめは、全員が特定の職務の専門家や責任者としてだけでなく、一人のメンバーや人間として、最初から楽しんでミーティングに参加できるようにすること
●1 on 1ミーティングでは、議論すべき「トップ5」を挙げる
相手の興味関心のある「トップ5」を聞くことで、時間と労力をどう優先付けしているかを知ることができる。実践するなら、各々トップ5をホワイトボードに書き出して議論するのがよい。何が二人の間で共通しているかも一目瞭然となります。
●コンセンサス(合意)より「最適解」を求める
何かを決定するとき、グループのトップがすべての決定を下しているようでは、部下はマネージャーに自分のアイデアを売り込むことに終始してしまいます。そうした状況では本来求めるべき「最適解」よりもロビイングに長けた人の的外れなアイデアが採用され、グループ、ひいてはその企業を悪い方向に導いてしまう危険があります。
最適解を得るにはすべての意見を俎上に載せ、グループ全体で話し合うのが一番です。全員に忌憚のない意見を促すために、ミーティング前にメンバー一人一人と膝を交えて会話をする。そうすることで自分の意見が整理され、準備ができた状態でミーティングに臨むことができる。
●マネージャーが「決着」をつける
最適解が生まれない場合、マネージャーは決定を促すか、自ら決定を下す必要があります。
●マネジメントすなわちオペレーション・エクセレンスの実現を第一に考える
●正しく勝利する
勝利を目指す。献身、チームワーク、誠実さをもって、常に正しく勝利する。
以上