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コミュニティナースのお話を聞いて

こんにちは、松瀬です。
2019年1月16日、KAIGO LEADERS主催のイベント「PRESENT18」でコミュニティナースを立ち上げた矢田明子さんのお話を聞いてきました。

コミュニティナースを知ったきっかけは友人のヤマゲン君が関わっていたからで、非常に関心のある領域の素晴らしい取組だと注視していました。

●イベントの内容
●印象に残った言葉
●難しさとチャレンジ

イベントの内容

今回イベントの登壇者、矢田明子さんをfeatureした記事がいくつかあったのでご紹介します。

発表の内容は次のような構成でした。

●矢田さんの生い立ちとコミュニティナースを始めたきっかけ
●コミュニティナース立ち上げ時の実体験
●現在の、多様なコミュニティナースの活動内容

生い立ちときっかけは、概要として次のような内容でした。
お父さんの調子が悪くなり、通院したら既に末期状態だったこと。
重症化前には通院せず、同じような状況に至る人は多くいるだろうこと。
病院内で待っていても、その人たちに手を差し伸べることはできないこと。

このような課題を考えた結果、矢田さんは地元の喫茶店でアルバイトを始めてそこで健康相談に乗ることにしたということです。

こんなところが素晴らしい

地域に出て公衆衛生学アプローチを行うということは、ある程度すぐ思い付きます。ただ、相談室を設けても健康増進イベントをやっても、来るのは健康意識が高い層だけ。通常病院に来ないような層には到達できません。

矢田さんは地域の喫茶店で働くことで、わざわざ場やイベントを構えるのではなく「対象者の生活動線の中に自然に存在する」方法を選択しました。

また、基本的には店員として接することで「矢田さん(実は看護師)」という認識を得ることに成功しました。
実は、これがかなり重要だと思います。
病気や不摂生という事実は、医療者に伝えることが憚られます。
患者から診て、医療者は審判者に感じられるためです。
しかし予め気の許せる知人という認識が為されていれば、愚痴や悩み、相談のような形で自然体で伝えてもらうことができます。

その後の発表

矢田さんの生い立ちの後は、立ち上げ期の思考錯誤や既存の保健・医療サービスとの立ち位置に関するお話がありました。

エビデンスベースで考える業界の中で「まずやってみる」が難しかった点や、制度上刺されないような注意、保健師さんたちの業務との違いなどなど・・・。

保健師さんは行政マターの保健施策を実行することに適応した運営になってしまっている」こと、アウトリーチの難しさが伝わってきました。

また、現在のコミュニティナースの活動内容についても報告がありました。
育成プログラムを経て、全国各地で多くの実践が生まれています。

新しいプログラム参加者も募集中。「看護師以上の資格者、大歓迎」ですが、「それ以外を受け付けないとは、一言も書いていません。」とのこと。
実際には、様々な人が参加されているようです。
詳しくはこちら↓

コミュニティナースのコミュニティでは、継続的フォローアップやレビューに加え、実践事例の共有など手厚いフォローがあるということです。
ともすると、各現場では孤軍奮闘となりがちなところをサポートし、別の現場で苦戦した点を経験値として共有し活かすこともできているそう。

印象に残った言葉

本イベントに参加して、いくつか印象に残った言葉を列記します。

サービス提供者側の都合より、目の前にいる街の人に求められているかどうかが大事。
”これをやるべき”という想いで取り組む人が多いけれど、まずは”これをやりたい!”に目を向けるようにする。”やりたい"と”やるべき”の接点を見つけないと疲弊する。
生活者の既存の動線に存在する方法を見つけること。
特に最初の一人にフォーカスする。
そこで価値を出せば、口コミで他の動線を教えてもらったり、紹介してもらったりと道が拓ける。
(初めからマスにリーチする手段を探そうとしても動けなくなる)
看護師の矢田さんよりも、喫茶店の明子ちゃんと認識してもらう。
コミュニティナースや介護職は「通掛聞造」だ!

完全にUXとかデザインスプリントとかのレベルのお話でした。

難しさと、チャレンジ

コミュニティナースの活動は素晴らしい反面、難しさが多いと考えています。それは、既存の医療サービスと異なり保険対象(制度化)されていないから。具体的には、次のような点です。

●ユーザーへの価値訴求
収益モデルの確立
個別拠点の持続性担保

ユーザーへの価値訴求

一般に「このサービスは、こういうものです!」と利用者に明確に伝えることが差別化として重要です。
コミュニティナースはひっそりと動線の中に存在する手法をとっているので、なかなか体感者以外にその価値を訴求しにくいと懸念していました。

実際は口コミ普及が実現できているとのことで、この点は大きな問題になっていないと感じています。

収益モデルの確立

一番の課題はココだと思っています。医療は医療、飲食は飲食として「お金を払うことが当たり前」という既成概念が浸透しています。

イベントではいくつかの事例が紹介されていました。

・訪看事業所をやりながら
・公民館の職員として雇用されて
・ふるさと納税での寄付を受けて
・ガソリンスタンド/飲食店/移動販売で雇用されて

などです。ただ、この形だとコミュニティナースはオプションとしての付加価値であり、それ自体が収益モデルを持てているとはいいにくい。

可能性あるな、と興味深かったのはふるさと納税のモデルです。
ふるさと納税で寄付した人は、遠方に住む出身者が多かったそう。
自分の代わり(エージェント)として見守りを委託するという動機づけを、ふるさと納税というトリガーで実現するというのは単独モデルとして成立しうると感じています。

収益モデル強化は今後も課題として大きいと思いますし、パートナーモデル事業として法人と組む取組も進めているとのこと。
何かできることあれば積極的に協力したいな、と考えてます。

個別拠点の持続性担保

エリア単位でみると実践者が少なく、人的課題でエリア展開が止まりうる点が最後の課題だと思っています。
地域や行政との連携はさることながら、各拠点に3人以上の運営がいることが理想。これは、仮にコミュニティナースでなくても「●●地域コミュニティナースPJ」メンバーとしての運営者が仕組維持の担保責任者として機能していれば実現可能かなとも思います。

例えば受け皿としての訪看事業所がある、パートナー事業者が持続的な接点ビジネスを展開し続けているなどです。

実現手段としては、あるんじゃないかなと思います。

最後に

今回のイベントは、自分の考えの整理も含めて非常に勉強になりました。
主催していただいた、Join for Kaigoの皆さんありがとう。

個人的な興味の中心にある、行動経済学的なポイントやナッジのようなTIPSも色々聞けました。
本当はすべてをお伝えしたいところですが、文章が長大になってしまうのと、本質部分をうまく表現できない可能性が高いため断念します。

そのような点についてもっと知りたい、コミュニティナースの実践事例についてもっと詳しく知りたい!という方には朗報です!
コミュニティナースの活動が、本になったそうです。

発売は2019/2/9ですが、既にamazonでは予約販売開始とのこと。
ぜひこの機会にどうぞ。
この本を読まれた方、ぜひ街づくりや地域福祉についてお話ししましょう!

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