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#小説
RAIN④〜薄暗い場所、暗い場所〜
ドアを開けると、正面にはひたすら廊下が続いていた。青白い照明の下で、敷かれているペルシャ絨毯は不気味で、それだけで恐怖を煽るには十分であるように思えた。窓に駆け寄ると、針葉樹の林が窓を覆うように生い茂っており、そのため月も星も見えない。木々の隙間から遠方に海が見える。ここは階上だ。少なくとも、一階ではない。青年は、部屋に閉じ込められていた時以上の悪寒に身震いした。窓を開けようにも、立て付けが悪く
もっとみるRAIN③〜謎解き、次なるステージへ〜
タイマー終了のアラームが鳴った。映像は切り替わり、パンダのお面の男が現れる。 「終了だ!!!」その甲高い声は、コンクリートの、狭い室内にはよく響いた。青年は耳障りだと、モニターに映る、その男を細目で睨みながらも、ぐいと口角を上げ、口だけで笑った。不敵な笑みだった。「威勢がいいね。では早速本題だ。犯人と本当の事を言っている人間をそれぞれ答えてくれ。もちろん三分も与えたんだ、単なる運試しでは無い。その
もっとみる【RAIN②〜嘘つきは誰?〜】
「早速だが、問題について話を始めよう。今私が映っている、モニターの映像が切り替わり、これから五人の人間によって劇が行われる。その劇の中での登場人物は五人。そしてそのうちの一人が、監禁事件の犯人という設定だ。それぞれ容疑者として、証言を行うが、その5つの発言本当のことを言っている人間は一人で、四人は嘘をついている。つまり、4人が偽証罪を問われる案件となっている。そしてその発言の真偽を考え、犯人と本当
もっとみる【RAIN①〜始まりの時〜】
時は1994年7月、時刻は22時を少し過ぎた頃。人里離れた場所に、ゴシック建築を思わせる、荘厳な御屋敷がどっしり鎮座していた。屋敷は周辺の村や町から完全に孤立しており、周囲は干満の激しい、海に囲まれている。その為、外部との接触手段になる、唯一の救いとして屋敷に通じている道も、満潮時には海に沈み、よりその孤独性を増す。屋敷の人が外出する、あるいは(そんな人はいないだろうが)外部の人が屋敷を訪問できる
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