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【シベリア鉄道】飛ばずに大阪〜パリ #2


上海→北京

今日の天気は、昨日とうってかわって雲一つない青空が広がっていた。前日訪れた外灘のあたりをもう一度めぐってみる。

自称"日立のエンジニア"だったおっさん

外灘からはなれて、ちょっとした路地の中にはいってみた。歩いていると、60代ほどの中国人男性に声をかけられた。なぜか前歯が抜けている、怪しい風体のオヤジである。私が背負っていたザックが気になって声をかけてきたようだ。そのとき、私は50Lの登山用ザックを背負って街ブラに興じていた。地元民からしたら異様な光景であったかもしれない。

その人物は、中国語で話しかけてきた。身振り手振りでわからないことを伝えると、たどたどしい英語に切り替えてきた。すかさず私もインチキ英語で応戦した。

話してみると、その男性は、かつて日本の茨城県土浦市に住んでいたことがあるそうだ。そこでは、日立の関連企業でエンジニアとして働いていたとのことだった。

それならば、「多少は日本語を使ってくれてもいいのでは?」と頭の片隅にうかんだが、気にしないことにした。その男性は、現在、上海市の郊外に住んでいるらしく、今日はお茶を買いに市内へ来たのだそうだ。

「せっかくだから、君もお土産に買ったらどうだ」

そう言われた私は、知らない土地で、英語を駆使する前歯のない中国人にホイホイついていった。そして、気がついたら高級茶葉を買わされていたのである。

海外旅行の初心者っぽい、苦いイベントであった。

寝台高速鉄道

本日の宿は列車である。上海駅19時53分発北京南駅行きの高速鉄道だ。北京には翌朝8時ごろの到着予定である。

上海駅に停車している高鉄=2017年3月6日、上海市(中国)

寝台列車なんて日本ではなかなかお目にかかれない。国内で気軽に乗れる定期列車なんてサンライズ瀬戸・出雲ぐらいだ。しかも日本でいう新幹線の寝台特急は、中国特有のものであろう。はやる気持ちをあまり抑えずに、駆け足で車内に乗り込む。

部屋は4人用個室である。軟臥車と呼ばれるクラスだ。私のほかに2人の乗客と北京までともにする。室内はひどく乾燥しており、持っていたタオルを濡らしてハンガーにつるし、少しでも湿度をあげようとしたが、あまり効果がなかった。

列車は定刻通り上海駅を発車した。ベッドメイクを終え、ひと段落する。車内見学という挙動不審なオタクムーブをかましたのち、列車の心地よい振動を味わいながら眠りについた。


上海駅を19時53分に出発した列車は、北京へ向けておよそ160km/h程度の速度で走行していく。私が乗っている車両の設計最高速度は300km/hなので、かなり余裕のある走りをみせている。

同じ個室には中国人男性2人と相部屋であった。そのうちの1人から何か話しかけられたのだが、たどたどしい中国語で「私は日本人だ。中国語わかんない。」と告げると(伝わっていたかは定かでないが)、がっかりされてしまった。

いくつかの駅を細かく停車していったのち、列車は朝の8時まえに北京南駅へ到着した。

とりあえず腹ごしらえをしなくてはと思い、駅構内の飲食店を探してみる。中国のファストフード店もあるが、日本の吉野家や、喜多方ラーメンの店も出店していた。私は新しい飲食店を開拓していくのが苦手なので、コンコースにあるファストフード店のなかから、安心と信頼のマクドナルドをチョイスした。

北京市内

この日の予定は何も決めていなかった。とりあえず、明日はさっそくモスクワ行きの列車に乗らなければならない。急いで観光しなければ。朝マックを頬張りながら考える。北京といえば…

天安門=2017年3月7日、北京市(中国)

とりあえず紫禁城に来た。かなり混んでいた。2、3時間は並んだであろうか。ようやく荷物検査のゲートにたどりつき、紫禁城内にはいる。天気もよかった。スモッグひとつない冬晴れであった。


天安門近くの入場待ち列=2017年3月7日、北京市(中国)
景山公園から=2017年3月7日、北京市(中国)

天安門広場のあたりはやけに警備が厳重だった。この日は、全人代の期間中であった。いたるところに警察官が配置されており、周囲は物々しい雰囲気が広がっていた。


今日の宿もユースホステルである。地下鉄2号線の安定門駅からほど近い「北京ホームユースホステル」という宿を予約しておいた。

ここにいく途中、道に迷ってしまい、たまたま通りすがった学生風の青年に、英語(っぽいなにか)で道を尋ねたところ、困惑されてしまったことを鮮明におぼえている。


とりあえず洗濯機をつかわせてもらい、衣類を洗った。脱水の間、フロントのちかくでうだうだしていると、スタッフの女性が音楽を聴いていた。よくよく耳をそばだててみると、それは初音ミクでカバーした「3年目の浮気」であった。なんでそんな曲知ってんだろうと思いつつ、つい一緒になって口ずさんでいた。

ついに明日は念願のシベリア鉄道に乗車する。


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