【大津市・九重味噌】甘みは当然、香りが命。無添加手作り「極上白味噌」の秘密に迫る。その2
その1はこちら。
綺麗で芳醇な極上白味噌を作る九重味噌さんの魅力をお伝えしていますが、いよいよ糀作りの本丸に潜入。その前に聞きたいことがありました。
「家庭での糀作りをされている人が増えてきて、SNSでよく聞かれるんですが、お米をまずどれくらい洗うのか。そんなに洗わなくていいよ、とか諸説ありまして。」
「ヌカ、、、はとった方がいいですね。割れるまで洗う必要はありませんが、綺麗に洗った方が絶対に良いです。というのは、農産物にはやはり土壌に住んでいる菌がいて100度で死なないのもいますし、味噌の香りに影響します」
「ヌカは麹菌の栄養になるって言っている人もいるようですが」
「笑 それは関係ないですね。全く。」
(ここは原料の洗い場でもある)
お分かりだろうか。発酵は諸説あり、正解は人それぞれなのは前提なのであるが、ここで大切なことは、九重さんには良い味噌の香りというものがあって、それを実現するためには原材料は綺麗に洗った方が良い、という考え方なのだ。
「雑菌をゼロにはできませんよ。でも、日本人の常識の範囲で、清める、ということですね。大豆も同じく綺麗に洗います。」
白味噌を中心に生産している九重さんならではの考え方と思う。九重さんの白味噌は塩分が極めて少なく(3.4%)、発酵期間も短い。そして極上白味噌は無添加だ。なので、「清める」という行為が、品質保持にモノを言うのだと私は思う。それは私がここの現場に足を踏み入れた時から、感じていることと一致している。
さて、いよいよ、醸造現場の聖域「糀室」だ。糀とはお米に麹菌をつけて、繁殖させたもの。お味噌作りにとって最重要の工程が、ここで行われる。
おっと、、、、意外にアルミのドア、、、、しかしドア上に気になる記しが貼ってある。
こう言うのをきちんと記録しているのが、九重さんのご性格。糀蓋とは、糀を盛る小型の木箱のこと。そして「菱六」とは、京都の老舗麹菌屋さんのことだ。菱六さん、糀蓋も斡旋してるのですね。
「10年ほど前に、糀蓋を新調しました。新品で買ったのは初めてで、それまで使っていたものは、酒蔵からお古をもらってたんですよ」
糀蓋に限らず、木製の醸造用道具を譲り受けることは、日本の文化だ。例えば木桶も、酒蔵→醤油屋→味噌屋と、受け渡されて行くのが慣例であったと聞いている。
さて、どんな糀室だろう、、、、ワクワクして入ってみる!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
杉板で作られた室に入るやいなや目に入るのは、めっちゃ大量の糀蓋(木箱)、その数150枚。そして、レンズの曇り具合からわかるように、湿度がすごい。室温30℃、湿度90%。
「90%が理想と言われています」
メガネが曇るから、このように上げるのが、職人あるある。
なんだ。メガネ外したら、九重さん、結構イケメン??(関係ない)
この湿度ムンムン狭い空間(3坪くらい)の中、男二人で話し込む。今音声録音見てみたら、ここに20分近くいた。普段の仕事的には、作業時間に概ね1時間かかるらしい。汗だく、、、。
さて、この糀室。30度くらいの部屋なんだけど、なんと!!基本的に熱源はいらない。麹菌が成長するときに出す熱で室温が維持されている。
「真冬でも大丈夫ですよ」
つまりだ。狭い糀室に、蒸した温かいお米と麹菌を大量(240kg)に入れることによって、室温維持しているのだ。
(ここに240kgの蒸米が一晩寝かされる。綺麗な床です。米粒一つ落ちていない。そしてちゃんと作業表をつけている。なかなかできないマメな仕事。)
「こんなに狭い部屋なら、麹菌が酸素消費して酸欠になりませんか?」
「結構しんどいですよ・・・・苦笑 年間75トンの白味噌を、完全に手作りの糀で作るって、もうマンパワー的にはギリギリだと思います。」
「夜は九重さんが守りするんですか?」
「そうですね、23時までは糀の様子を見守ります。年中そんな日々なので、商談であっても外に出かけることは控えているのですよ。申し訳ないんですけどね。」
これが白味噌の伝統を守る、九重さんの覚悟。お身体気をつけてください、、、、!
糀の話はまだまだ尽きない。その3に続く。(2回では全然語り尽くせない!)
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