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子どもの誕生日に「いつもと違うところ」へ行くのは親のエゴ?

一年の中で割と憂鬱な、子どもの誕生日がやってきた。先月迎えた長男の誕生日にはさすがに何もやらなさすぎたので、罪悪感から、長女の誕生日にはどこか楽しいところへ連れてってあげようと思い立った。

私には強い味方、八景島シーパラダイスの無料券があった。シーパラは正規料金では5,600円だし、遠いから気軽には行けない。誕生日にぴったりだ。しかし私は忘れていた。チケットには有効期限があることを。有効期限を見てみると、二日前に切れていた……。

お分かりいただけるだろうか……この悲しみを

夫が「どうしてそんなに段取りができないの?てか半年もあったじゃん」と呆れる横で、私は頭を抱えた。もう一度買い直す気も起きなかった、そもそも遠いし、他の行き先にしようと思った。ネットで探して、一通り候補を調べ上げた。まるで初デートを控える童貞みたいだ。

まず長女に「どこか行きたいところある?」と聞くと「〇〇スポーツプラザ(近所の区民プール)!」と言われた。「……せっかくの誕生日だし、他のところに行こうよ」と、キッザニア、カンドゥー、ABCクッキングなどの調べ上げた候補を見せた。もちろんドヤ顔で。私って良いママしてるわ~!と、思いながら。

でも見せているうちに気づいたのだが、どれも満席か、当日予約ができないものばかりだった。クソッッッ、どうして前もって予約できるような奴ばっかり生息しているんだ? そのせいでオレみたいな段取りができない人間が、隅っこに追いやられて……と、世間を呪っても仕方ない。そもそも長女は、どれも乗り気ではない様子だった。

どうしてもプールがいいというので、どうせならと高めのプール、ニューオータニとかヒルトンとかを提案したら、長女は「あのね、ママ。今日はあたしの誕生日なの!あたしの好きなところに行かせて!」と怒り出した。「でもせっかくの誕生日だから、いつも行っていないところに行こうよ」と食い下がると、彼女はうんざりした様子で言い放った。

「誕生日だから、いつも行かないところに行きたいのは、ママの気持ちでしょう? あたしはいつも行っているところに行きたいの!」

あぁ、そうか――と、私は思った。誕生日だから特別な場所で、楽しい思い出を作らせてあげたいというのは、ある意味、親のエゴだ。

「どうして、いつもと違うところに行きたくないの?」と聞くと「帰りに疲れちゃうから」と返された。確かに彼女は週5で保育園に行っている。もう疲れることはしたくないのだろう。でもさすがに区民プールはシャビーすぎると思って(帰り道にSeriaに寄って終わりなのが目に見えているから)、話し合って六本木に行くことになった。

六本木には子ども2~3人と行くことが多いから、長女と二人きりで行くことは初めてだった。蔦屋書店のシェアラウンジでパンを食べながらジュースを飲んで、ロボロボ公園で遊び、ZARAでリュックを買い、ボーネルンドでおもちゃを買う。いつもの週末と違い、きょうだい喧嘩もなく、私も一度もブチ切れず、穏やかに過ごせた。長女は「楽しかった~!」と言っていたし、これはこれで良かったのだろう。

誕生日にディズニーランドとかサンリオピューロランドとか(去年はサンリオピューロランドに行った。大雨だった)に行くのも素晴らしい思い出になる。でも、いつも行かない場所だけが、素晴らしい思い出を作れるわけではないのだ。

「誕生日こそ!」と力を入れてしまうと、だいたい私は失敗する。そうしてダメな母親だな……と自己嫌悪に陥って、イライラしてしまう。その未来が、長女には見えていたのかもしれない。六本木で済んだから夜ご飯を作れたし、家事も済ませられたし、夜に力尽きることなく、それほど憂鬱にならずに一日を終了することができた。

そして久々に掃除をしたら、おや、こんなところに東武動物公園の引換券が。来年1月までか……次女の誕生日に行こうかなあ(そして歴史は繰り返す!)


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