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【読書記録】「さいはての彼女」を読んだ話

四編の短編小説からなる本書。
何れも女性目線で書かれている。

最初の3編は30代の女性が描かれている。
仕事をバリバリにこなす人生に躓き、旅を通して再生するというストーリーである。
旅先はそれぞれだが、その描写によってその風景が容易に脳内に投影できた。
ああ、北海道行きたいなぁ。
そんな欲に掻き立てられた。

私のような何の特徴もないサラリーマンでさえ、日々何かに押し潰されそうになる。
皆さんもそれが積み重なり、ふとしたきっかけで負の気持ちが溢れそうになった経験はないだろうか。
外に当たり散らす、思い切り泣く、思い切り飲む、体を動かす…その発散方法は色々だろう。
けどやっぱりそのストレスと対極のモノに触れることが1番の解決策ではなかろうか。
社会の何かに疲れたのなら、その社会から離れるのが1番。

そうだ、旅に出よう。

そんな気分にさせてくれる小説だ。

加えて登場人物のキャラが立っていて気持ちがいい。
バリバリの仕事人と自由人のコントラストがとても良い。
結局自分にはないないもの(人)を求めてしまうんだなあ。

タイトルにもなっている「さいはての彼女」にはこんな一節がある。
聴覚障害のあるナギが健常者に対して『線』が見えると訴えたときに父親がくれた言葉だ。

「ナギ。そんな『線』はどこにもない。もしあるとしたら、それは耳が聞こえる人たちが引いた『線』じゃない。お前が勝手に引いた『線』なんだ。」
「いいか、ナギ。そんなもん、越えていけ。どんどん超えていくんだ。」

何かに一歩踏み込めないと思ったとき、思い出したくなるセリフだった。


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