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ICTで世界をバランスし地球人意識を高める

松下幸之助 一日一話
10月24日 地球人意識

いま世界は、本格的な国際化時代を迎えつつあります。政治、経済、あるいは資源、食料などの問題にしても、一国の問題がすぐ世界の多くの国ぐにに影響を与えることが少なくありません。その意味では、世界は非常に狭くなったと言えましょう。それだけに、たんに自国の問題をのみ考えるのではなく、もっと視野を広くして、地球人の一員という意識でものを考え、行なうことが大事だと思います。たとえば、援助を願っている国があるとすれば、他の国ぐにはそれぞれの実力に応じて助け合うべきでしょう。そのようにお互い地球人といった意識を持って、なすべきことをなすということが基本の心がまえになると思うのです。

https://www.panasonic.com/jp/corporate/history/founders-quotes.html より

地球人意識が必要となる背景である国際化時代について、松下翁は言葉を換え以下のように仰っています。

日本という国は、資源なき工業国として、今後とも世界の諸国との密接なつながりの中で生きていかなければならない。だから、いたずらに警戒されたり嫌われたりするようでは非常にマイナスである。そうならないためには、日本人お互いが、これまでの行き方を大いに反省し、また誤解があれば誤解をといてもらえるように、日本と日本人の考え方を正しく伝えていくことが必要である。そのためにもまず大事なことは、お互いにこの国日本と日本人自身というものの特性なり背景を、みずからしっかり把握することではないだろうか。そしてその上に立って、国際化時代に処する道を、ともども真剣に考え合うことだと思う。
(松下幸之助「国際化時代と日本人」より)

更には、国際化時代における正しい国家意識のありかたについて、以下のように仰っています。

昨今の国際情勢は、一方で“世界は一つ”と言いつつも、その一方で各国が過度の国家意識に立ち、自国の利害を優先してしまうため、対立や紛争が一向に絶えない。それでは日本はどうかというと、反対に国家意識がきわめて薄いため、かえって問題が起こっているようである。個人でも正しい自己意識、人生観を生み出し、自主性を持って生きていってこそ、そこにはじめて他の人びとに対しても、おごらず、へつらわず、仲よくつき合っていけるわけである。国でも同じである。国民が正しい国家意識を持ち、他の国ぐにと交流していくことが大切であろう。“過ぎたる”もいけないが、“及ばざる”もいけない。
(松下幸之助「正しい国家意識を」より)

本格的な国際化時代を迎えた現状においては、松下翁が懸念されていた通りで、世界は非常に狭くなり、自国の利益を優先する一国の姿勢が世界の多くの国々に即座に影響を与えるようなってきました。加えて、自国の利益を優先する背景には、混沌とした世界への不安を打破したいという民衆心理が高まることで、独裁的で強い権力者を生むという傾向が強くなっていることが要因の一つとして挙げられます。具体的には、米国のトランプさんしかり、ロシアのプーチンさんしかり、中国の習近平(シー・チンピン)さんしかり、融和型や協調型ではなく強さを前面に出した指導者が時代をリードし、その独裁的で強い指導者が必要以上に民衆に迎合することで、ポピュリズムがハイパー化しています。更には、ポピュリズムが加速することで、ナショナリズムが高まり、強すぎるナショナリズムから各国がショウビニズムに陥ってしまっていると言えます。

排他的な自国第一主義における国の強さというものは、他国との比較の中でしか生まれません。つまりは、強い国が存在するためには、弱い国の存在が必要になり、世界中の全ての国が強い国であり続けることは出来ません。強さを求める国同士が対峙したならば、当然、どちらかの国が弱い国になりませんとバランスしません。

第二次世界大戦後(1945年から1989年まで)の44年間は、強さを求める国同士が対峙し冷戦が続くことで世界がバランスしていた時代と捉えることも出来ますが、それと引き換えに世界各国における抑止力としての核開発を加速させてしまう要因になったとも言えます。同時に核開発技術が進化し過ぎてしまい、弱小国でも核兵器を持つことが可能となり、それが現状での新たな火種になってしまいました。

今一度私たちが地球人という意識に立ち返るならば、世界をバランスさせるのは弊害を伴う核兵器という強さによる抑止力ではなく、国境を瞬時に越え世界を繋ぐICTネットワークを経由した「情報による抑止力」であると言えるではないでしょうか。例えば、今尚核開発を促進する北朝鮮に対して核開発の中止や核の放棄を求めるよりも、北朝鮮国民が世界市民と情報で容易に繋がることができるICT環境の導入を促した方が、現実的な問題解決策となるのではないでしょうか。時間の経過と共に北朝鮮国内のグローバル化が進み、北朝鮮国民も地球人となり、自国の行く末を自らで選択をしてもらうということも可能になるのではないでしょうか。朝鮮半島の統合が正しい答えと考えがちですが、別の形の正しい答えに導くことも可能になるかもしれません。

ICT時代においては、世界における「情報の非対称性」をなくすことが可能となり、それが世界をバランスすることとなり、延いては地球人同士としての意識を高めることになるのでないかと私は考えます。


※記事:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ 2017年10月24日付 を読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

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