ずっと海を見ていた
白い光の溢れる海辺
まとったバスタオルを海風が揺らす。
ビーチパラソルの日陰から見る海は青が輝き昔見たフランス映画のようだ。
今日は音楽もいらない。波の音が心地いい。
ゆっくりと時間が過ぎていく。
日常が遠い昔のことになる。
今自分は本当に生きているのだろうか。
手や足の指の間からサラサラと砂がこぼれる。
さっきまで海に浮かんで水面や水中から空を見ていた。
空の澄んだ青、雲の優しい白。耳にはチャプチャプと水の音が聞こえていた。
ゆっくりと泳ぎながら手足が感じる水の感触を楽しんだ。
海の中は波の作る光の波紋が揺らめき、美しい。
色の綺麗な魚たちとともに波に揺られ自分の呼吸音だけが大きく感じる。
浜辺に上がった後の心地よい疲労感。
地元の人が売りに来たビールを飲みながら、ふと、ここの人たちは今自分が感じている幸福感をわかるかなと思った。
いつもこんな環境にいたらもはやこの気持ちは味わえまい。
おそらく、この海辺で今一番幸せなのは俺だ。
時が止まったような白い海辺で青い空と海を眺める。
長い人生、たまにはいいよな。
絵 マシュー・カサイ「海辺」水彩・ペン
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