見出し画像

光のどけき春の日に

目の前を、黄色い帽子をかぶった園児たちが先生たちに引率されながら歩いている。

スズメの群れのように賑やかだ。

大きな声を出す子、歌を歌っている子、笑いあってる子、見てて飽きない。

つい、あとをついて行きたくなった。

温かな午後、今日は日差しが眩しい。

陽気な子供たちに影響されて、私も楽しい。

一緒に歌って、歩きたくなった。

歌を口ずさみながら大きく手を振っていると、なんだか目線がどんどん低くなってきた。

気付けば手も足も小さく、子供になっている。

顔を触れば、ほっぺは大きく鼻は小さく鼻ぺちゃだ。

手足はぷくぷくで軽く汗ばんでる。

大きくなった靴をスリッパのようにつっかけてパタパタと歩く。

困った。どうしよう。

でも、見渡せば周りの景色が急にすごく鮮やか。

目が良くなった感じ。

目の前にあった曇ったガラスがなくなったようだ。

呼吸はハッハッと早いが足は軽く、よく動く。

走り出したいほど気分がいい。スキップしようかな。

なぜか楽しい。どんどん歌が出てくる。

ただ散歩しているだけなのに、笑顔が溢れてくる。

見渡せば溢れる光の中、花も空も公園の木もとても美しい。

そうか、子供たちはいつもこんな風に感じているんだ。

だからいつも笑顔で走っているんだ。

前を行く子供たちがこっちを見てニコニコ手を振っている。

しばらくお澄ましして歩いていたが、なんだかいっしょに仲間入りして遊びに行きたくなってきた。

いけない、いけない。

ここは大人の判断。

でももうしばらくは、この素晴らしく輝く楽しい世界を味わいたい。

さっきから公園の砂場が目に入って、行きたくてたまらない。

指先にはあの、しっとりとした砂の感覚が蘇っている。

一人で砂遊びもいいな。

よし、今日は何もかも忘れて遊ぼう!


絵 マシュー・カサイ「光のどけき春の日に」水彩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?