見出し画像

50代で変われた私だから、変わりたい人を支えていきたい

#出産退職 #子育て #資格 #社会保険労務士 #組織開発 #キャリア #ライフデザイン #インタビュー #働く女性  

「これからどうしよう?」と迷ったとき何かのヒントを見つけてもらえればという思いで【L100】自分たちラボが紹介してきた「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューエピソード。

今回は、出産前に退職し、40歳手前で再就職。社労士、組織開発のコンサルタントとして活躍している、りょうさん(仮名)のエピソードです。りょうさんのエネルギーの源となっている思いとは? 



りょうさん(50代後半) *インタビュー当時
経歴: 大卒後、企業に就職したが、30代での出産を機に退職。子育てをしながら資格をとり、40歳手前で再就職。現在は社労士事務所で「週4正社員」として働きながら、自ら学んでいる組織開発のコンサルも行い、経験の幅を広げている。特定社会保険労務士。家族は、夫と娘。 


―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?

私は均等法世代の最初の方で、大企業にいたし、数は少なかったですけどロールモデルの人もいて、すごくがんばれば出産後も両立することができる環境でした。私も続けるつもりでいたんですけど、うまくいかなかったのが一つの転機なのかなと思います。辞めたことは、いい選択だとは言えなかったけれど、後々につながる出来事でした。
もう一つの転機は子育て。30代で出産し、子育ては楽しみました。子育てを優先できたし、資格もとれたことで仕事の幅が広がったと思います。

りょうさんが描いた人生曲線 

最初の就職先を出産のために退職(20~30代前半:就職とやむなくの退職)


―――最初の転機は?

教員免許を持っていたのですが、私の持っていた教員像が保守的で、企業に就職しました。両親とも教員ですが、特に強いプレッシャーはなかったですね。
就職したのは金融系の会社で、関連会社に配属され、人事や経理の仕事をしました。その後、本社に異動になり、事務システムに関わる仕事に加えて、役員の秘書まがいなこともやるなど、何でも屋でしたね。女性差別などで悩んだことはありませんでした。
最後の方は、役職者になったこともあり、甘えてはいけないと思って、妊娠中にも出張に行くというような無理をしていました。本社・役職というせっかく掴んだチャンスをものにしたい、という意識もあったかもしれません。
二度の流産があって、三度目に妊娠したときはずっと入院していました。有休がある間はいいとして、その後、休職してまで会社にい続けるのは迷惑なのではないかと思って退職しました。お荷物になりたくなかった。今となってはお荷物とは思わないですけど、その時はそう思いました。妊娠・出産が順調だったら辞めていなかったと思います。夫は辞めるべきでないと100回くらい言いましたけど、私としてはそうするしかなかったです。


子育ては楽しかったが、40歳になる前に再就職したかった(30代後半:子育てと再就職)


―――子育てはいかがでしたか?

子育ては子育てで楽しみましたけど、娘が2歳になる前に再就職しました。まず、英語教室の仕事を始めて、娘が3歳くらいで社労士事務所に就職したので、子育てに専念していた期間は2年くらいでした。専業主婦はあまり向いていなかったのと、40歳になる前に再就職したいと思っていたんです。仕事と子育て、どちらも諦めずにできたのは、夫の支えと、何かあれば私の母がかけつけてくれたこともありました。

―――再就職するときに考えたことは?

前職でインストラクターなど、人を育てる仕事もしていたので、次は教育か、自分が出産との両立が難しかったということがあったので両立支援ができたらいいな、と決めていました。最初に再就職したのは英語教室なんですが、外国人の講師と価値観が違ってなかなかわかり合えなかったんです。
元々経理や簿記の知識もあるし、税理士事務所への就職も考えたのですが、確定申告の時期にすごく残業があるのを知っていたんです。で、ママ友の社労士の方から、それほど残業はないと聞いて社労士事務所に入りました。結局入ったら大変だったんですけどね。子供が小さかったので、両立できるところと考えました。

―――社労士事務所のお仕事はいかがですか?

就職した社労士事務所は、ボスが行動的な人で外に出ていることが多く、小さな事務所でしたから、実質私が実務のリーダーでした。ばたばたしがちで、辞めようかと悩むこともありましたが、他県に行くことになったボスが、他の事務所と合併するように道をつけてくれました。
今、所属しているところの代表は力がある人で、女性が子育てや介護があってもきちんと責任を持って仕事をしていける世の中を目指して、「週4正社員🄬」を広めたいというビジョンがある。彼女はそれを10年前から言っていて5年前に🄬マークがつきました。私自身は、妊娠と仕事の両立が難しくていったん仕事を辞めたという経歴があるので、より柔軟にできるこの制度を代表と連携して広めていきたいと思っています。だから、私の中ではすべてがつながっているんです。


組織開発の学びを力に、制度作りだけではないサポートを(50代:経験の幅を広げる)


―――セミナーをやったりコラムを書いたりもしているんですね?

コラムを書き始めたのは最近です。今の代表はそういう力もある人なので。
“社労士”としては、機密保持などの縛りがあって副業ができないんです。なので、それとは別に、個人的に組織開発の勉強をして、コンサルタントとしてセミナーをやったりコラムを書いていたりしています。こちらは副業です。

社労士事務所として、評価制度やJOB型人事制度などを提案していますが、私は制度だけ作っても組織が良くなるとは全く思っていないんです。たとえば再雇用の制度を作って定年を延ばしたり、70歳まで働けるようにしたりしても、それだけでいいのかなと思うし、女性活躍も30%とか数字だけ目指しても良くなるのかな?と。もうちょっと本質的なところをサポートできればいいなと思います。

―――制度は作れても、人はなかなか変われないのでは?

私は変われると思います。自分が変われたから。変わりたいと思っている人をサポートしたいと思っています。

―――ご自身が変わったなと思うのはどの年代ですか?

50代の最初です。組織開発の学びを通して、ずっと考えていたことがようやくつながった感じです。 
人と人は違う。脳の思考も、大切にしていることも、皆、違うんです。それがわからずに自分の価値観だけで、この人は、人の気持ちがわからないなどと一刀両断しても何の解決にもならないんです。
それと「氷山モデル」。出来事や数字に一喜一憂しないで、もうちょっとその下がどうなっているのか、生み出している構造をシステム的に考えようということです。
 
20代の頃は「こうあるべき」というのがすごく強かったから、そこにマッチしないと全部ストレスになっていました。今、それはストレスにならないです。人と人は違うということや、氷山モデルを学んだからです。
不満を言ってくる部下がいても、そう言っていることの背景は何だろう?と考えるようになりました。それに不満を抱えてもやもやしている時が成長のチャンスなので、あまり決めつけないで見ていこうと。役職としては、どこかで指摘しなくちゃいけないかもしれないですけど。会社で過ごす時間は長いのに、それが楽しくないのはもったいないですよね。


変わりたい会社や人をサポートしていきたい(今後について)

 
―――今後についてはどう考えていますか? 

あまり決めていないです。好奇心の赴くままにやろうと思っています。
でも今は若干時間や場所の制約があるので、もうちょっと自由度が上がるためにどうしたらよいか考えています。 
仕事を介して、いろいろな社長と話したり、いろいろな会社のリアルが聞けたりするのは、当たり前だと思っていたけれど、なかなかない経験なんですよね。独立してもいいけど、独立したらこんなにたくさんの人に会えないと思ってしまうので二の足を踏みます。やりたいことは、変わりたい人のサポート。私は元々人の気持ちに敏感なので、困っている人を見ると助けたくなる。そこが強みでもあり弱点だよねと言われています。
 
あと、娘は今思春期で、一人っ子だというのもあって、夜中の1時頃から語り出すんです。成人になったからって独立するわけではないので、もう少しそこには向き合い続けていこうと思っています。自分にとって大切なものを大切にしていきたい
実は、子育てに悩んでいるママたちから相談を受けることが多いので、勉強会ができるといいなと思って企画しています。私が教えるのではなくて、「話せるづくり」をしたいと思って、そのためのツールをいろいろ仕込んでいるところです。働かないにしても、私が学んでいることは地域のことに活かせると思うんです。

―――仕事以外ではいかがですか?

私、フットワークが軽いんです。友人と旅行したり、地域のおじさん、おばさんたちでやるテニスも楽しいです。娘が歌っているのを聞いているのも幸せを感じます。小さなことでも幸せに感じられるようになったのかな。夫は夫ですごく行動的で、全部は付き合わないですけど。
あと人間観察は元々面白い。どこまでが仕事かわからないです。ワークとライフを切り分けるのではなく「インテグレーション(統合)」、私は元々そういう考えです。ワークライフバランスって一日ごとではなく、もっと長い期間でバランスするものだと思うので、あまり切り分けていないんです。


 発達段階を味わって越える。一足飛びにはいかない(女性たちへのメッセージ)


―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?

私は今、「成人発達理論」を、学び続けています。私もそんな考え方があるって知らなかったんですけど。一生懸命考えているのに対話にはならなくて、でもそれも面白い。嚙み合わない時期が私にもありましたが、その理論では、そんな発達段階を味わって越えるものだと言うんです。一足飛びにいくものではないって。みんな悩みながら上がっていく。上がったからって幸せになるというわけではないですけど。
あと、人と人は違う。とにかく決めつけないこと。決めつけ自体が自分の思考の枠組みの中でしかないので。口で言うのは簡単だけれど、思い込みを手放すのは難しいですよね。年をとってくると耳も目も悪くなるけれど、見えなかったことが見えてくるようになるからとんとんなんだなと思っています。そういう人でありたいと思っているから学び続けているんだと思います。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか?

私は壮大なことをやろうとしているのではないかと心が折れそうになることは山ほどあるんです。でもやっぱりそっちがやりたいんだなということが改めてわかりました。
本当は、「組織開発」という言葉は使いたくなくて、それが一番わかりやすいから使いましたけど、親子とか介護のチームとか、もっと小さいチームでもいいんです。教育とも、もっとうまく結ばれるといいなと思っています。

(*文中の写真はイメージです)

インタビュアーズコメント

人を育てること、人を良い方向に導くことに興味と努力を惜しまない方だと思いました。お話を聞いていると論理的な印象を受けましたが、元々は論理より人の気持ちを優先する傾向が強いそうで、仕事をしている中でその他の要素も強化されていったそう。高い空の上から何かを見ている人っていう感じがしました。「学び直し」という言葉が言われるようになりましたが、人生後半に向けて、自分の中にある枠や決めつけをいったん捨てて、他者理解のスキルを身に着ける必要があるなと気づかされました。

【L100】自分たちラボ からのお知らせ

ライフデザイン研究会【L100】自分たちラボでは、働く女性に対するインタビューを行っています。詳細は『働く女性の人生カタログ』~プロローグ~をご覧ください。
ご感想やリクエスト、インタビュー希望などのご連絡は下記メールアドレスへお願いします。また、よろしければフォローもしていただけると嬉しいです!
L100lab.tokyo@gmail.com


よろしければサポートをお願いします。