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中国経済再開による資源需給への影響

経済再開に傾く中国政府

中国でリオープンの機運が高まっている。11月末にかけ同時多発的に発生したゼロコロナ反対デモは政府によるリオープン加速という(良い意味で)意外な方向に進展しつつある。仔細は省くが行動制限の早期解除、自宅隔離容認や検査簡略化など、経済再開に向けた様々な兆候が見られる。

中国経済が再加速となれば企業業績にはプラスだが、他方でその程度によっては国際商品市況を押し上げ、米国を中心に問題になっているインフレを再加速させかねないだろう。足下ようやくインフレ減速やPIVOTに焦点が移りつつある状況下、資源価格(特に原油)の再上昇は相場のムードを腰折れさせかねない。

資源需要は増加するが・・

中国の原油輸入量を確認すると、2020年まで単調な増加が続いたものの、21年前後に反転減少し、現在はピーク時から▲10%程度減少して推移している(下図)。直感的にはリオープンによりこうした減少傾向が反転し、コロナ前と同じスピードで増加していくことが予想される。

ただ、中国景気の基礎的な回復力はコロナ前後で弱まっており、商品市況を需給面から押し上げる力は小さくなっているだろう。2021年の米国リオープンとの比較では、同国に株高・不動産高による強烈な資産効果の追い風が吹いたのに対し、現在の中国では両方とも逆向きに機能している(下図)。景気の回復力は本調子ではなく、失速を回避しこそすれ、低空飛行が続くだろう。

人流に使われる燃料はさほど多くない

リオープンそのものによる原油需要の変化は、人流・物流回復による燃料需要増加が最も大きいと考えられる。IEAによると、中国の原油調達における輸送燃料の割合は全体の38%程度であり、残りは製品・再輸出・備蓄に回される(下図)。

燃料を使う輸送については、貨物輸送がほぼ変わらず、旅客周遊が大幅減となっている(下図左右)。中国における貨物・旅客のガソリン消費量比率は不明であるが、日本の例に倣うと貨物:旅客で2:3とやや旅客の方が多い。中国リオープンで燃料需要が増えるのは、中国の原油使用の2割の部分ということになる。

製造業の原油需要は減速へ

燃料需要以外に原油の大宗をつぎ込んでいる石油加工品については、折しも中国景気のリオープンと交替する形で米欧景気が減速してきたことにより需要減の瀬戸際にある。11月の輸出も米国向けの減少により前年比▲9%減となった。総じて見れば、中国リオープンは原油需要に大きな影響を与えないとみる(下図)。

服飾や化粧品にプラス

なお、リオープンにより恩恵を受けるセクターは、服飾や化粧品などが幾分筋が良い。小売売上統計でも22年初来で化粧品や衣料品の売上の売上減少が確認できる(下図)。同じく落ち込んでいる家具や建材は不動産販売が回復するまで望み薄である。リオープンで繰り越し需要が現れるなら前者だろう。

日本企業としては中国製造業の回復による設備関連輸出に期待したいところだが、前述のとおり現在の中国はゼロコロナによる「消費不況」をようやく脱しようかという段階であり、製造業が上向く段階にはない。製造業に限れば、コロナ禍において中国政府が実施してきた企業減税や金融緩和によって早くから恩恵を受けており、今後上向く芽は小さいだろう。中国の消費市場回復が来年の投資テーマになりそうだ。

※本投稿は情報提供を目的としており金融取引を勧めるものではありません。

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