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高山チェル
2023年11月16日 17:11
夫が出ていったその夜、わたしは全く眠れなかった。 さっきまで普通だと思っていたのに、布団に横になると自分がどろりと溶けて地球の奥の方に吸い込まれていくような嫌な気持ちがして、目を閉じることができない。 明日、いや数日後に何もなかったかのように帰ってくるかもしれない。 でも、それにしては荷物をまとめたのがやけに念入りすぎる。自分で買った食器、わたしがあげたプレゼント、歯ブラシ、歯医者の診察券
2023年9月20日 17:23
被害者だったわたしが、加害者になった。そう、加害者になったのだ。 夫に傷つけられたわたしは、夫婦でセラピストのところに行った。ズタボロになったわたしを見て、彼女は夫を厳しくたしなめた。「勝手に、一方的に片方の家族が頻繁に来るのは、国際結婚のいかんに限らず、立派な離婚理由です」 その言葉は、夫に響いたようだった。わたしがいう言葉は届かなかったのに、先生の言う言葉は届くらしい。涙が溢れて止まら