ぺんぎん組

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小説「裏切りの伽羅」を書いています。気軽に立ち寄ってください~ フォローされた方には、フォロバさせて頂きます。

最近の記事

第一世界#7 ツリノブセ

 己こそが愛国主義の極致であると、ミウラコウタは声高らかに宣言した。  この男をどうにかできれば、この危険な世界から脱出できるかもしれない。そう思うと、自然と手足がひりつくソウキャとレッキャであった。 「それで、どう時間稼ぎをするんだ?」 「私に、任せて貰える?」  そう言うと、レッキャはミウラの方を向き、一歩前に出た。 「総裁。あなたに質問したいことがあります。」 「裏切り者の話に耳を傾けつもりはないが。」 「この国の愛国主義の在り方についてです。」 「……ほう。」

    • 第一世界#6 愛国主義者ミウラコウタ

       走れ。走れ。  一瞬たりとも足を止めるな。  生き延びたいなら、何も考えずに玄関へ向かえ。  廊下に横並びで飾られたポスターを、視界端に見送りながら逃げる。いずれにも「シュゴハジポポンダ!」の黒文字が描かれている。まるで終わりの見えない空間を逃げているような感覚だ。  でも玄関を出た後は?  この世界に、居場所なんてあるの? 「くそっ。くそっ!」  階段を飛ばし飛ばしで駆け抜ける。気持ちだけは10段飛ばしをしている。  背後で同じように生き急ぐ足音を感じる。 「レ

      • 第一世界#5 裏切りの伽羅

        「以上より、当該高校に突如出現した木製オブジェクトは、新生アルムホルデビトの仕業であると推定されます。」 「先日その高校の転校生を騙り、逃走中のメンバー『ショウキャ』も奇術を使っていたらしい。間違いないだろう。」 「なお、当該高校は半壊。教室棟のある校舎の方は無事なこともあり、死者は出ていないとのことです。」 「分かった。ご苦労。」  部下の退出を見送り、ギィーッと総裁椅子の背に重心を預けるミウラコウタ。  生徒の犠牲者が居なかったのは朗報だ。社会で活躍する愛国の徒のいわば

        • 第一世界#4 白馬の幼児様、ウィッカーマン

           まどろみの中で、思い出す。  己が理想のために、周囲の人間から記憶を消去した。  いや、違うのかもしれない。記憶を消去したのではなく、《《記憶を押し潰した》》。こっちの方がしっくりくる。  どちらにせよ、初めて仮面の機能を使ったのにも関わらず、初めてではない感触だった。  意識して使っただけで、まるで元々自分に備わっていたかのよう。  ごくごく自然な、人間の本能的能力なんだよ、と。 ***  「チャールズ!」  あまりにも突然のことに、ソウキャ、ヨウキャ、レッキャ

        第一世界#7 ツリノブセ

          第一世界#3 喋り過ぎだァ

          「なあソウキャ。朝、何でピストル向けられてたんだ?」 「さあ。そもそも図書室で目覚めてからおかしいことだらけだからな。」 「チュートリアルを受けてから、冒険を始めるべし。そういうことよ。」  お昼休み。転校生への質問責めが一段落し、やっと合流できた3人が、足早に向かう先は当然図書室だ。目覚めたのもあの場所。この頓痴気な世界から脱出出来るかもしれない。  レッキャは視線を悟られないように、ソウキャを横目に見る。  そもそもがおかしいことだらけ。それはそうだが、その場全員が彼

          第一世界#3 喋り過ぎだァ

          第一世界#2 平和になあれ

          「じゃあ、行ってくるよ。」 「お父さんに、手を合わせてきた?」 「ああ、したよ。」 「頼むわね。どうか、どうか、この国のために。」 「約束する。ジポポンを世界に通用する国にして、帰ってくるよ。」  父との約束。母との悲願。  全てが始まった、あの冬の日の言葉を忘れず、春夜に駆け出していく。  まずは合流しなければ。同じ誓いを立てた隣人と。  それは旅立ちの一幕。  大志を胸に、十余年を過ごした田舎の村を後にした少年。 <血気盛んな少年の物語が、いよいよ幕を開きました。>

          第一世界#2 平和になあれ

          第一世界#1 晴れ渡る空には銃声を

          「このように、人類は宇宙から飛来した先祖によって生み出されたとされています。」  竹井 鈍《たけいにび》はタブレットの画面いっぱいに、イメージする宇宙人を書いてみる。タコよりもイカ寄りのエイリアンが出来上がる。どうよこれ、とそのまま後ろの席の奴に見せようとしてとどまる。  今日まで猩真は停学期間だったな。 「ていうか、あれまだ書けてなかったわ。」  ガサゴソと、丸めたプリントで溢れた机の中から、手帳サイズの紙を抜き出す。「自分の『キャラ』を考えよう」と印刷されたタイトル

          第一世界#1 晴れ渡る空には銃声を

          裏切りの伽羅 第一世界「Our Island ジポポン」 斉藤花吉 著 

           さあさあ、お立会い。  記念すべき最初の物語は「愛国主義」の世界。  お国のために全てを捧げ、全てを犠牲にする素ん晴らしい世界。  まあ待ちなされ。  ちょいっとその前に、旅仲間9人の邂逅の一幕から。  「Our Island ジポポン」5巻 あらすじ  異端者集団アルムホルデビトとの長きに渡る死闘を終え、安寧を手に入れたのも束の間、国家総裁となったミウラには数多の政的問題が残される。利己主義の残党、言論統制、「愛国濃度の見える化」…。そして現れる、新生アルムホルデビト

          裏切りの伽羅 第一世界「Our Island ジポポン」 斉藤花吉 著 

          裏切りの伽羅(キャラ) 作品紹介

           コグチ高校1年4組の学級活動にて行われた「自分の『キャラ』を考えよう」。各々が回答を出す中、白紙のまま提出しない男女がいた。居残りという形で図書室に集まる生徒たちの前に、突如チャールズと名乗るシルクハットの男が現れ、一冊の本を開いて告げる。「物語で悪役を演じてみせよ。」と。  気づくと彼らは、過激な愛国主義が猛る、現代ジポポンの地にいた。    脱出条件は、その物語を正しきバッドエンドに導くこと。  物語の「キャラ」×己の「キャラ」を巡る、群像冒険譚。

          裏切りの伽羅(キャラ) 作品紹介

          裏切りの伽羅(キャラ) 序章

          みなさんは「哲学」というものがどうやって誕生したのか、知っていますか。    うん、反応がない。  一説によると、紀元前6世紀ごろのギリシャで「それをする時間ができたこと」がきっかけと言われています。生活のほとんどを奴隷に任せることで、考える時間が生まれ、それまで世の中の原理を神話任せにしていた時代から一歩踏み出したのです。聞いてますか。  興味ない? ああ、そうですか。  まあいいや。ここでよく焦点が当たるのは、それから哲学はどう変化していったのか。  あえて、変わら

          裏切りの伽羅(キャラ) 序章