ホラー映画になるはずだったもの

『忘却』

ある住宅街の廃墟のアパートの前で呆然と血まみれの若者が立っていた。近所の人がそれを発見するが、彼はすでに発狂してしまっていた。彼は「お前は知らない…お前は知らない」とぶつぶつ繰り返していた。
ある大学のオカルト部の部室。ラジオでは人口減少を嘆き少子高齢化対策の新法案が可決したことを伝えるニュースが流れている。
この都市伝説に興味を持った部長の主人公は原因を明らかにするべく、記録係や祈祷師の仲間を集めて4人で噂の廃墟に向かう。4人の詳しいキャラはまだ決まっていない。主人公以外をA,B,Cとする。主人公は女性、Aはバットが武器の男勝りな女性、Bはびびり。
大きめのバンで到着した4人は早速アパートに乗り込む。中は薄暗い。奥へ進む道と2階へ上がる道二手に分かれている。3人と1人の二手に分かれ、主人公、B,Cは上へあがっていく。主人公たちが二階の部屋を探索していると、一階から叫び声が聞こえる。一階に残したAの声だ。急いで下に駆け降りると、血まみれの人が呆然としているAの前に倒れている。Aに尋ねると、「誰かも知らない、突然気が狂ったように縋り付いてきたからバットで殴った」と応えた。
気が動転しているAを連れて、ほか3人はふたたび上へ向かう。そして、さきほど訪れた部屋の扉を開けると、前に見たときはなかった靴が置いてあった。ビビりなはずのBがおそるおそる奥へ静かに部屋へ入ると、奥の部屋に大きな男性が立っていた。姿こそはっきり見えなかったが、武器を持ち、目が合うと雄たけびを上げてきた。ビビりのBは驚いて腰を抜かし座り込んでしまう。失禁。近づく大男、間一髪で主人公らの助けにより命びろいする。
部屋から出て扉をおもしでふさぐと一目散に駆け出す主人公たち。ドアノブが中からガチャガチャと動くがしばらくしてやむ。アパートの共同キッチンでやっと一息つく主人公たち。そして主人公が周りを見渡すと、一人多い(Dとする)。パニックになる一行。しかし、Dは普通の人間で、よくよく話を聞いてみると、主人公たちのことをよく知っている。混乱する主人公たち。Dは主人公たちとともにアパートに来たと話す。そしておそらく主人公たちが不思議なことに一方的に彼に関するすべての情報を覚えていないという結論に至る。
そんな一行に忍び寄る影。さきほどの大男である。しかし彼も忘れ去られた一行の一員であった。そうして覚えのない知り合いを連れて探索を再開しようとした矢先、Cが「誰だお前たち。俺は一人でここにきたはずだ」と発狂し、仲間を切りつけようとする。知らない人間がさも前からいたかのようにさらに突然2人増える。今度は大男が発狂する。そして、残りの人間が急に主人公に敵意や恐怖に満ちた目を向け「お前は知らない!!!!!」と叫ぶ。
事態の重大さに気付いた主人公は階段を駆け上り、屋上に向かう。追いかけてくる元仲間たち、そして屋上にたどり着くと、血で書かれた魔法陣の様な模様と赤ん坊のミイラがあった。
途中落ちていた、「信者勧誘のためのボランティア募集 主に血をささげよ」というビラを思い出す主人公。このアパートはかつてカルト宗教の温床で、赤ん坊はいけにえにされてしまったのである。気づいた主人公は、ナイフをその赤ん坊に突き立てようとする。迫りくる元仲間、間一髪で赤ん坊を突き刺す。すると赤ん坊からありえない量の血が噴き出し、不気味な叫び声をあげ、ついに死に絶える。
全てを思い出した主人公、他の仲間たちも我に返る。彼らは8人でこのアパートに来たはずなのに、互いに互いを忘れ去ってしまっていたのであった。不自然に定員の多いバン、3人と1人に分かれた不可解な人数、すべて腑に落ちる。主人公が意味深に、「人が増えるということはその分誰かを忘れ去ってしまうことなのかも…」そういって仲間と生きている喜びを分かち合いアパートを後にする。しかし、誰かをまだわすれていたのであった。そう、最初にAが殴り倒した仲間を…
終わり

備考

人から忘れられることって怖い
人が減るホラー映画はあるけど人が増えるやつはない
最初の人数が4人(9人)と縁起の悪い数にしました。
主人公の女の子はかわいいほうがいいです。かわいい子が恐怖に顔をゆがめます。
ワンピースのドレスローザ編に出てくるホビホビの実、リックアンドモーティのシーズン2エピソード4「ニセモノか、ホンモノか」、悪魔のいけにえ、カメラを止めるな、Night of the Living Deadを元にしている。

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