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【Youtube考察・分析】今のYoutubeには6つの文化圏がある(1/2)

目次
1、背景
2、SNS概観
3、今のYoutubeのコンテンツ特性
4、強力すぎる新参者たちの出現
5、文化圏の形成

1、背景―Youtuberを取り巻く環境の変化

Youtubeが最初にブームになってから、早8年近くが経ちました。
当初は一時の流行りものとして半ば嘲笑の的にもなっていたYoutuberも、いつのまにか一攫千金の象徴となり、ついには都知事と対談し、国家の危機を乗り越えるための大役を担うほどの存在になりました。

HIKAKINやはじめしゃちょー等、初期から活躍していた、いわゆるthe Youtuberが投稿の中心となっていた黎明期を経て、その後も様々なネット有名人を輩出しながら、
現在は「〇〇系Youtuber」が群雄割拠し、他SNSからのインフルエンサーの流入もあって、膨大な数の投稿者が幅広い視聴者層に情報発信する戦国時代になっています。

僕もかれこれ4年以上、時間があるときはYoutubeを4~5時間見続けているヘビーウォッチャーですが、ここ数年でも最近のYoutubeが一番面白く、また取り巻く環境も著しく変化しています。

Youtubeに対応した放送作家が表舞台にも出始めたり、著名人×テレビ番組や芸能事務所のスタッフから編成される質の高い投稿者が続々登場したり、投げ銭ライブ配信機能が流行り始めたりと、関連の仕事も動画としてのコンテンツも大いに盛り上がっています。

そんな中、最近僕は「Youtubeが分断されてきているな」と感じており、この気づきが、今の”国民総インドア時代”に新規参入するYoutuberにとって、何かのヒントになるかもしれないと思い、noteに書いておくことにしました。

まだまだ全然整理しきれていないので、これから定期的にアップデートしていきます。

2、SNS概観―コミュニティ形成と分断

少し広い話からすると、元々SNSは、”世界中のものすごいたくさんの人と無限に繋がる可能性を秘めている”という名目で価値提供されてきましたが、
特に日本においては、その活用の大部分が、限定的で閉鎖的なコミュニティを形成するのに活用されてきました。

そして、似たような性質の小規模なコミュニティが分散的に拡大する中で、1つのSNSを大きな括りとして、ガラパゴスのようにクローズドな文化圏が醸成されてきました。
その結果、日本のSNSは、媒体同士の繋がりが希薄になっていて、例えばTwitterによくいる人はInstagramをほとんど見ない、TikTokのキラキラ学生たちはFacebookのキラキラエリートと繋がらないといったように、特定のSNSの文化圏に生息する人は、他の文化圏で過ごすのにある程度の高いハードルを抱えています。

実際、インフルエンサーのコメント・リプライ欄では、TwitterとInstagram等SNSが変わると、見ている人や反応が全く異なることがよくあります。
そのため、あるSNSでフォロワーを獲得していたとしても、また別のSNSに誘導して自分の情報を追ってもらうことは、インフルエンサーにとっても労力がかかることだと思われ、フォロワーにしてみても、その人の情報を追うためだけに乗り気でないSNSの登録をすることには少し足が重くなります。

そんな分断されたSNS文化圏の環境下で、ほんの直近1~2年で、他の文化圏を飲み込みながらずんずん肥大化してきたのが、今のYoutubeです。

猛烈なYoutubeブームに乗っかって他のSNS等から発信軸を移行してきた あるインフルエンサーは、その初期には、「Youtubeと旧媒体の視聴者層がほとんど被っていない」と言っていました。
しかし、半年、1年と経つうちに、その人の力のこもった発信を見るため、徐々に元の媒体からYoutubeにファンが移り始め、他の文化圏から視聴者を迎え入れています。

3、今のYoutuberの発信コンテンツ特性―2つのサイクル

SNS時代のコンテンツ発信者のメリットの1つに、「1度発信したコンテンツを使いまわせる」ということが挙げられます。
特にYoutubeはそれが顕著で、他のSNSでこれまで発信されてきた内容を、再度Youtube向けに加工しなおすことでフォロワーを急速に増やしている発信者が数多く存在します。

例えば、メルマガや書籍で膨大なフォロワーを獲得していた”MB”さん、アフィリエイトブログ等でトップランナーだった”マナブ”さん、様々な文字媒体等で影響力のあった”イケダハヤト”さん、”ミニマリストしぶ”さん、
元はInstagramにファンがいた、インスタグラマー”ひよん”さん、”牛江桃子(ももち)”さん、元キャバ嬢”エンリケ”さん、ティーンモデル”福山絢水”さん等が、ここ1~2年で他媒体・SNSからYoutubeに参入し、安定的にフォロワーを増やしている代表的な発信者です。(※あくまで一例です)

彼・彼女らにおおよそ共通しているのは、元々一定のフォロワーがついていたコンテンツを、改めてYoutube用に発信し直しているということであり、出自のSNSのフォロワーとはやや異なりながらも、大枠で類似した層を新たにファンとして獲得しています。
(※Youtubeコメント欄と出自媒体のコメントやリプライの性質から判断しています、詳細は次回に記載予定です)

また、別のコンテンツサイクルとして、Youtubeに古くから投稿している発信者が、過去にアップロードした自分の動画をリメイクしたり、過去の自分の動画をオススメして再度視聴させるという動きも始まりつつあります。

人気コンテンツを選択的に再生産することで、発信者側は最小限の労力で視聴回数を増やせる上、自分の発信圏内に視聴者を留まらせることができ、視聴者側は探す手間を省略しながら面白い動画を楽しむことができます。

この、「長い間価値が出る(上がる)動画を投稿しておいて、旬なタイミングで再度リリースし、手間をかけずに再生数を獲得する手法」を、”岡田斗司夫”さんは「動画資本論」として広く提唱しています。
(岡田斗司夫さんは、Youtubeではサブカル解説をメインに活動されています)

4、強力すぎる新参者たちの出現―動画視聴数の限界

上記のような2つのサイクル・循環の他に、直近約1~2年にYoutubeから新規参入して有名になった人たちも、大きな存在感を示しています。
(数えきれないほどいますが、例として”エミリン”さん、”カノックスター”さん、”inliving(りりか)”さん、”マコなり社長”さん、”岡奈 なな子”さん、”にたまご”さん、”サラタメ”さん、”和田さん。”さん等)

そしてそれに加え、テレビ界隈からは、”カジサック”さんやYoutube大学の”中田敦彦”さん、”エガちゃんねる”さん、”ARASHI”さん、"ほんだのばいく"さん、”はーちゃんねる”さん、東大王で知られる”QuizKnock”さん等も本格的に進出しており、言うまでもなく尋常でない数の視聴者・登録者を得ています。

一方で、視聴者の目線からすると、とても追いきれない量の動画が毎日毎時間投稿され続けており、一般的なライトウォッチャーからすると、せいぜい4~5人の好きな投稿者の動画を追いかけるので手一杯です。

数年前までは「Youtubeを見ている」と言えば、”HIKAKIN”さんや”はじめしゃちょー”さんを皆が共通して思い浮かべていましたが、現状のYoutubeの状況を勘案すると、それはある人にとっては”きまぐれクック”さんと”SUSURU TV.”さんを指していたり、また別の人にとっては”てんちむ”さんと”ヘラヘラ三銃士”さんだったり、”あさぎーにょ”さんや”虹色侍”さんだったりするといったように、全く別の世界・コンテンツを見ていることになります。

5、文化圏の形成―分断される視聴者

ここまで書いてきた流れを踏まえると、今のYoutubeはどうなっているのでしょうか。その1つの答えが、まさに冒頭で申し上げた「Youtube内の分断が起きている」というのが僕の見解です。

整理すると以下のポイントがありました。
・従来SNSはそれぞれ文化圏を形成し、分断されていた
・Youtubeブームに乗って、他のSNSから有名人がコンテンツをリメイク・加工して参入
・Youtubeに各文化圏からインフルエンサーを追ってフォロワーが流入
・Youtubeで有名になった人たちも過去と類似のコンテンツを再生産する等視聴者の囲い込みを図る
・テレビ界隈に代表される強力な新規参入者の参戦
・見ることのできる動画数の限界による視聴動画の偏り

レコメンド機能の影響もあってか、視聴動画は加速度的に偏重傾向にあると思われ、またそれに伴い、投稿者側も、コメント内容の動画への徹底した反映や、オフ会等による自分についたファンの囲い込み、そして、他のYoutuberとのコラボによるファンの融合・交流を急ぎ足で進めています。

結果として、Youtube内には実質的に、多様に分断された文化圏が生まれていると思います。すなわち、本文で紹介したような従来SNS全体で起きていた現象に近いことが、その性質を引き継ぎながら、Youtubeの中で起きているということです。
そして、僕が持っている仮説としては、今のYoutubeを以下の文化圏に分けることができるのではないかということです。

それはシンプルに、従来ネットカルチャーが育まれてきたSNSや媒体の単位で、「Facebook・オンラインサロン文化圏」「Instagram・SNOW文化圏」「Twitter・2ch・ニコニコ動画・ブログ文化圏」「元祖Youtube・テレビ文化圏」「TikTok文化圏」「新生Youtube文化圏」6つに分けられると僕は考えています。

それぞれの動画の具体例や、そこに属する投稿者と視聴者の性質の違い、また、この分断化する環境の中で、これから投稿を始める新米Youtuberは何を狙ってどのような方針を取れば良いのか、僕なりの考えについて、次回後半パートに書いていきます。

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