涼介

エンジニアの視点から、ビジネスケース、生成AIについて時折発信しています。

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最近の記事

設計理論の考察(公理的設計:まとめ)

「設計」―技術者にとっては耳心地のいい用語です(この部門に属することが心地いいかは?ですが)。とはいえ、設計と言っても、プロダクトを設計するのか、プロセスを設計するのか、いや、製造系ではなく建築系の設計なのか、言葉の概念が広いため、その理論も構築しにくいことが現状です(それがいいのか?)。 この記事では、公理的設計をキーワードに;  ①文献調査  ②設計公理とは?  ③上記をもとに設計者が陥りやすい共通の失敗の考察 について記載しています。 1.「設計」の概念ここでは、製

    • 設計理論の考察(実践への応用): リサーチ段階(公理的設計)

      設計理論は、問題解決のためのシステマティックなアプローチとして非常に重要です。それは、製品やプロセスの設計において、品質、効率性、コスト削減、およびイノベーションを最適化する方法を提供します。 とはいえ、設計といえども、様々な分野があり(製造系、建築系など)、また、製造系に絞ってもプロダクト、プロセスなど多岐に議論があるかと思います。ここでは、製造系に絞り、この理解を深めることを目的にしていきたいと思います。 まずは、この理論の理解のために、第一歩として、「公理的設計」に

      • 電気自動車の需要減退とエンジン開発の復活

        *GPTs 自動ブログ記事作成を利用しています。 概要 近年、電気自動車(EV)の需要に変化が見られ、一部の自動車メーカーがエンジン開発を再び活発化させています。特に日本の自動車産業では、独自の技術開発によるエンジンの復活や、EV化への対応の遅れとそれに伴う巻き返しの動きが見られます。 エンジン開発の復活 マツダのロータリーエンジン復活: マツダは、11年ぶりにロータリーエンジンを復活させました。このエンジンは、プラグインハイブリッド車に発電用として搭載され、小型であ

        • コストと品質のジレンマ:X社の新素材開発の敗戦(ケーススタディ)

          *新素材の開発における典型的なケースです。 X社は、革新的な新素材の開発に取り組んでいました。顧客企業数社に加えて研究機関と共同で開発した素材は性能と環境面で優れており、業界からも高い評価を受けていました。 しかし、製造工程における課題が多く、特に、歩留まりは量産レベルには程遠いレベルでした。この時の開発チームは、性能面、環境面での業界からの絶賛がチームの眼を曇らせたのか、医薬品のように、出来てしまえば売れるものと錯覚させたのか、製造プロセスの効率化に注力せず、結果的に、

        設計理論の考察(公理的設計:まとめ)

        • 設計理論の考察(実践への応用): リサーチ段階(公理的設計)

        • 電気自動車の需要減退とエンジン開発の復活

        • コストと品質のジレンマ:X社の新素材開発の敗戦(ケーススタディ)

          新分野進出の落とし穴(ケーススタディ)

          *新分野へ参入する際によくある話です。 このケースは、長年、産業機器製造に特化していたX社が、自社の技術を用いて全く新しい市場に進出した事例を記載しています。新しい素材の採用と異なる業界の顧客への対応が主な焦点です。 長年にわたり産業機器の分野で特徴的な機器を製造してきたX社は、ついに産業機器以外の分野への進出機会を手に入れました。ある会合での出会いが、新たな商談へとつながったのです。 新しいビジネスでは、X社の既存技術を活用することになりましたが、使用する素材は従来の

          新分野進出の落とし穴(ケーススタディ)

          タグチメソッドによる製造現場の問題解決(ケーススタディ)

          よくある製造現場での話です。 *具体的な手法の紹介ではありません。 E社の製造現場では、品質に重要な影響を及ぼす成形工程の生産性に問題がありました。特に、成形品に微細なクラックが発生し、これが歩留まりの低下を引き起こしていました。この問題を解決するため、クロスファンクショナルなチームが結成され、実験的なアプローチを採用しました。 チームは、因子の特定には成功しましたが、具体的な解決策を実施する前に、実験設備を設置して詳細な検証を行うことにしました。しかし、時間とリソースの

          タグチメソッドによる製造現場の問題解決(ケーススタディ)

          新製品の遅延:Z産器の決算問題とその後の波紋(ケーススタディ)

          Z産器社は、新機構を搭載した革新的な次期製品を計画していました。開発プロセスにおいて、同社は生産パートナーであるX社と緊密に協力し、厳格な品質管理と生産プロセスの監査を進めていました。しかし、Z産器社の決算に不正が発覚し、製品発売の計画が大幅に遅れる事態に直面しました。このケースは、Z産器社の決算不正が開発パートナーであるX社に与えた影響と、X社の対応策に焦点を当てています。 Z産器社の決算不正発覚により、予定していた製品発売が延期され、開発プロセスに深刻な影響が及びました

          新製品の遅延:Z産器の決算問題とその後の波紋(ケーススタディ)

          新製品開発における技術の価値評価(ケーススタディ)

          ブログ記事:不確実性の中の意思決定:新製品開発でのNPVとリアルオプションからのケースです。 夏の連休が終わり、業界はA社の意表を突く新製品発表で沸き立ちました。予期せぬ時期のリリースで、かん口令が敷かれた中で進められていた新製品は注目を集め、業界各社は対応策を模索しました。 N素材を用いる新製品は、業界の中でA社以外にテスト的に販売する企業もあり、業界では注目されている技術でした。 一方、X社もこれに対する対応を展開。A社と同じ発売日に新製品を発表し、開発の加速を図り

          新製品開発における技術の価値評価(ケーススタディ)

          新製品開発における安全性とスピードのジレンマ(ケーススタディ)

          (記事「技術者のジレンマ:ダイハツ不正問題の根底にあるもの」からのリンクです) 私たちの応用研究チーム(研究所所属)と設計チーム(事業部所属)は、合同で新製品の開発に取り組んできました。異なるブランドの製品を次々と市場に送り出すという、挑戦的なタスクでした。 ある新製品の開発段階で、一つの重要な問題が浮上しました。応用研究チームが進めた仕様に基づいて製造された試作品は、検査部門の安全性試験をパスしたものの、自社の既存製品と比較して安全性に劣るという結果でした。しかし、これ

          新製品開発における安全性とスピードのジレンマ(ケーススタディ)

          AIとFEMの融合によるいくつかの利点

          どのような利点があるのか、早速ChatGPTに聞いてみた。 戦略的な意思決定とAI 私たちはデータ駆動型の意思決定、効率性、リスク管理といった概念を深く学びます。AIの進化はこれらの概念を新たな次元に引き上げています。特にFEMにおいてAIを活用することで、予測精度が向上し、複雑な問題の解決が可能になっています。 FEMにおけるAIの応用 FEMはもともと精密な設計と分析に不可欠でしたが、AIの導入によりその能力はさらに増幅されています。AIアルゴリズムは、大量のデー

          AIとFEMの融合によるいくつかの利点

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(7)最終ー二酸化炭素排出量の推定

          二酸化炭素排出量の推定 今回の記事では、鉄鋼が製造されてから、ある部品が完成するまでに排出される二酸化炭素の量を推定していきます。 *それぞれの値は、生産1トン生産当たりの排出量です。 ますは製鉄です。 高炉製鋼法:主に鉄鉱石を使用して鋼を製造:約2㌧ 電炉製鋼法:スクラップ鉄を主成分として使用:約0.5㌧ 上記に関しての参考 ・Steel industry emissions of CO2(Steelonthenet.com) ・経済産業省HP内での記載 ・東京製鐵

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(7)最終ー二酸化炭素排出量の推定

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(6)

          金属加工業の企業戦略 前回の記事では、非調質鋼のもたらす変革(用途)について見てきました。今回は、製鉄面ではなく、製鉄メーカー以後、最終ユーザーまでのなかにある金属加工業の企業戦略について考えてみます。 企業の戦略は、過去の選択や経験が今後の選択肢や進むべき道を制約している面があります。 これは、過去の選択や決定が現在及び未来の状況にどのように影響を与えるかを研究する概念で、関連性の高い概念として技術軌道という概念があり、しばしば絡み合っています。 先程、引用した書籍

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(6)

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(5)

          非調質鋼がもたらす金属加工業の具体的変革:事例の紹介 金属加工業における非調質鋼の利用がもたらす革新と効果は、一部の先進企業ですでに具体的に現れています。今回は、その中からいくつかの事例をピックアップし、非調質鋼がもたらす可能性とチャンスを紐解いてみましょう。 事例1:自動車産業 自動車のシャーシやフレーム、ボディパーツなどは非調質鋼から作られることが多いです。非調質鋼は加工しやすく、一定の強度と耐久性を持っているため、これらの部品に適しています。 ・自動車用非調質鋼に

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(5)

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(4)

          非調質鋼の利用が金属加工業にもたらすこと 金属加工業は、自動車の部品や産業用パーツの製造など、私たちの生活や経済活動の基盤を支える重要な業界です。その生産過程においては、熱処理という工程が必要不可欠でした。しかし、最近では非調質鋼の利用により、この熱処理工程を省略することが可能となり、製造プロセスの効率化が進んでいます。 非調質鋼は、その名の通り調質(熱処理)を必要としない鋼材です。この特性により、製造工程が省略されるため、エネルギー消費が減り、それに伴い二酸化炭素排出も

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(4)

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(3)

          前回の記事では、非調質鋼の特性とその重要性、そしてその製造プロセスの効率性について見てきました。今回は、非調質鋼の製造における炭素排出の削減とその方法について考えてみます。 まず、鋼の製造における炭素排出の主な源は、鉱石から鉄を抽出する際に使用されるエネルギーです。これは通常、石炭を燃焼させて生み出される高温の熱エネルギーを利用します。しかし、このプロセスは大量の二酸化炭素を排出します。 これに対する一つの解決策として、再生可能エネルギーの利用が考えられます。太陽光や風力

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(3)

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(2)

          非調質鋼とは?そしてなぜそれが重要なのか 私たちの日常生活は、さまざまな形状と大きさの鋼製品に支えられています。自動車、建築物、家電製品、あらゆるインフラストラクチャーで、鋼はその強度と耐久性により、不可欠な材料となっています。ここでは、その鋼製品の中でも特に重要な非調質鋼について詳しく見ていきましょう。 非調質鋼とは、一般的には、炭素や他の合金元素の含有量が低い、鋼の一種を指します。これらの鋼は、合金元素も少なく設計されていることが多く、鍛造や成形が容易で、多様な用途に

          カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(2)