【詩】冗長の詩

もうすぐ世界が終わりますね

先生、いかがお過ごしでしょうか

わたしはあれからどんどん文章が下手になっています。わたしは今でもはっきりと覚えているんです。あなたが文章の書き方を教えてくれたときのことを。

あなたはわたしの書いた文章をあれこれ見ては、これは無駄だ、あれは無駄だと切り捨てていった。そしてそのとき、先生にいらないと言われた多くの文字たちは確かに死んでいた。切り刻まれて飛び散ったみたいに宙を舞っていた。それで、そのとき死んだ文字たちは、後になって顔色の悪い亡霊みたいに蘇ってくるんです。

あなたは多くのものを無駄だと言った。けれども、あなた自身のことになると途端にぐずぐずし始めて、多くのものを切り捨てられなくなった。他人のことだから簡単に無駄だと言えてしまうんだね。それならいっそのこと、この世にあるすべてのものは無駄なんだと言ってくれればまだ清々しい気分になれるのに。

多くのものを伝えたいと思っていた。でもそう思うたびに、口にする言葉の数ばかりが増えていって、結局最後にはなにが伝えたいのかも分からなくなって、わたしはまるでもとから用意されている文章を読み上げるみたいに誰かと喋っているのです。

もうすぐ日が沈む。なにかを伝えたかったという感情さえも忘れて、世界が終わる。わたしは学校の屋上から今まで書いてきた文章をばら撒いた。もう誰にも伝わらなくてもいいから。だってすべてが無駄なんだから。だからせめて、せめて。わたしのなかでただ沈み込むように消えていって。わたしの好きだった文字たちよ。わたしの好きだった言葉たちよ。

世界が終わるまで、わたしは冗長の詩をうたっている





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