【詩】物語

まるで物語みたいだ、なんて、物語が必要ない人たちが言っている

それは、ふたりの空間を埋めるため
それは、空間の無機的な冷たさを、温度で溢れた甘言で埋めるため

わたしは、ずっと胸に分厚い本を抱えていた

ページみたいには破れない彼らは、目の前に広がる風景を、繊細な指でやさしくなぞっていて、なぞらえていて、
それは、あたかも、思い出すみたいだ、日向を。
ああ。どこかで見聞きした物語が、今この瞬間、きっとその瞳の上で、鮮やかに映写されているんだろう 
そうしてなにかに見惚れながら、その物語は彼らの一部になってゆくんだろう
わたしはただ、すがりついていることしかできないのに。

物語の外側で、
燃え上がるわたしの嫉妬が、いつか星になればいい、太陽になればいい、と
そう願うくらいの存在です、わたしは。
ページをめくる、
活字が並んでいる。






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