【詩】歩く駄作はまだ瀕死

嫌い、嫌い、嫌い。ハートを投げかけるように高い声で口遊むと、それはキャッチーなフレーズになって、周りの人たちにも伝染していき、わたし、やっと人だかりの隙間に隠れるように、なにかが嫌いだったことを忘れられる気がした。けれどそれはほんの一瞬の出来事で、しばらく経つと、わたしはまた思い出したように何かを創り始めるから、この数秒のあいだに、わたしの感情はまた歌になり、詩になり、物語になって、雨が降って地面に水滴が沁みていくみたいにどこかに吸収され循環する。
わたしは街中を彷徨いながら踊っている。酩酊しているわけでもないのに、ふらふらと千鳥足で、だから周囲の人はわたしに気づいては振り返り、訝しげな顔をしていたけれど、あなたたちの心臓にはすでにわたしの一部だったものが巡っているよ。嫌い、嫌い、嫌い、訳も分からないままあなたたちは口遊んでいる。でも、あなたたちはべつにわたしを認めているわけではないのだろうし、いざ出会ったらわたしの思想もまた簡単に否定してしまうだろうから、わたしが自傷するように創った意味もない駄作だけがわたしの支えで、それらは今日も二酸化炭素と酸素に混じりあい、わたし、まだぎりぎり瀕死のままでいられる。
どこにもわたしの声は届かないから、無意味に踊り続けている。わたしのことを認めてくれない人が嫌い、嫌い、嫌い。また、通りすがる人がわたしを見て振り返る、そんなわたしはきっと神様が作った駄作です。

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