【詩】神様になれ

今日も誰かが惚けたように世界が綺麗だと言うから、嗚咽が止まらないのになにも吐くことができないぼくは、その誰かに倣うように世界が綺麗だと言う。けれどもそれはきっと嘘ではなくて、ぼくたち、吐きたくても吐くことができないのだから、そのぶんだけ世界は本当に綺麗になっていて、かき氷もサイダーもラムネ瓶も、太陽が反射するための余白を作ることができる。だから、世界のぜんぶ、吐瀉物で埋め尽くされていたなら、きっとぼくたちもっと苦しまずに済んだのに、ぼくたちが綺麗だと言って愛す世界中の余白は、誰かが苦しむことによって生まれている。ああ、誰か、綺麗でないものさえも愛してくれて、赦してくれるような神様になってくれよ。
ぼくたちは綺麗じゃない、だって太陽が反射しないのだから。その感情さえも吐き出すことができずに、太陽に照らされてもただ汗が噴き出してくるだけなのだから。証明問題で出ればたった一行で済ますことができるようなぼくたちを、どうか綺麗だと言って、愛して、そして赦して。ぼくは今日も透明なものに焦がれながら、自分が本当は綺麗な存在なのだと嘯いている。だから、いつかぼくのことを綺麗だと言ってくれる人が現れたのならば、その人はきっと神様だ。
愛だけがきっと、誰かが神様になるための唯一の希望なのだ、ぼくはそう信じるしかなくて、誰にも愛されないあいだ、止まらない嗚咽は続き、なにも吐き出せないまま、汗ばかりが身体中から噴き出していた。

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