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(詩)自愛

日が差し込まない灰色の空の下で
君は静かにキスをした
そのキスの味は、甘酸っぱくとも、とろけるような気もなく
ただ君の唇に触れたその事実だけが
僕の心に残留していた。


君を愛していなかったといえば嘘になる
ただ、大好きかと言われるとなにも言いかえせなくなる。
これが恋なんだろうか。
愛なんだろうか。
だとすれば恋というものは
黒く染まった心に一生懸命白色を足して
ごまかしているようにも見える。


お互い離れてしまえば忘れられるのだろうか。
求めれば諦められるのだろうか。
こんな気持ちになるならば
出会わなければよかったのだろうか僕たちは。

君が性欲に犯されていると知っても
それが人間の性だと考えてしまう。


なんて汚れているのだろうか
この世界は
どれも、これも、君でさえも
黒に近い灰色のような色をしている
なのに普段はその色を隠して演技してる。
そして最後に本性を露にする。



何度もみてきたそうやって騙されて堕ちていく人間を。
強いものに捕食される人間を。
快楽に溺れて洗脳されていく人間を。
権力を得て本性を出す人間を。



それでもどこか愛おしいのだ人間は、
自分の行為を正当化するための戯言かもしれないが、
皆必死になって白色に染まろうとしている。
皆必死になって金と愛を求めてる。
皆必死になって幸せを追いかけている。
皆必死になって誰かを抱きしめようとしている。
そういう人間臭い所がどうも嫌いになれないのだ。



半年ぶりに君と再開した。
あの日のように味気ないキスをして微笑んだ。
でも相変わらず愛情表現とは思えなかった。
それよりも、欲求を満たすための通過点としか思えなかった。
ふと互いの体を見る。
ああ、いつのまに黒色に犯されていたのだろうか僕たちは。
でも、もう戻れない、
もう灰色にすらなれない、
それでも僕たちは少しでもと
もう一度キスをした。
やはり味はしなかった、
でも何かが満たされる音がした。




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