見出し画像

誰も否定されない

「デジタル化した社会は、誰も否定されない。しかし誰も否定されないが故に誰も正しくない」
 
メタルギアソリッド2 SONS OF LIBERTYに出てくる愛国者達の台詞だ。
発売されたのは2001年だが、現在のネット社会を的確に予見している。

僕は間違った情報をnoteに垂れ流したことがある。
これは不本意で、投稿した後に自分で気付いたのだが、垂れ流した情報を誰も否定しなかった。《スキ》はいくつかついたかもしれない。しかし情報には誤りがあるのだ。

これは自分だけではなく、他者の発信する情報もそうだ。


劣等コンプレックス

劣等コンプレックスについて解説している動画があった。
そのYouTuberは劣等コンプレックスを「劣等感が複雑化した状態。あの人には○○で劣っているけど△△では勝っている…のような心理」と説明していた。
しかし他の解説サイトでは劣等コンプレックスを「何か理由をつけて努力から逃げている心理」と説明していた。

毒矢の例え

大抵の話に出てくるのは、釈迦が弟子にこの世の真理を問われた際に「毒矢が刺さったら、真っ先にすべきことはその矢を抜くことだろう。でないと毒が回ってしまう」という例えで弟子にやるべき事を解いた話なのだが、とあるサイトでは「生きることは毒矢に貫かれたが如くの苦しみ」と表現していた。
《毒矢の例え》というのは、この世の苦しみを毒矢に刺された痛みで例えているのではなく、順番を間違えると苦しみ続ける羽目になるということを、毒矢で例えている。

五蘊盛苦

五蘊盛苦はサイトによって解説が違う。
他の四苦八苦は全て解説が同じなのだが、五蘊盛苦だけは解説内容にかなり差がある。

とある本では《頭の中が情報でいっぱいになること》という解説。
しかし別のサイトでは《自分の心も身体も思い通りにはならないこと》という解説だった。
そしてまた別の本を見ると《五蘊が欲望に苛まれ、精神とのバランスを崩すこと》と書いてあった。
確かに《感覚》《精神》《苦しみ》という点では一致しているのかもしれないが、解説内容にかなり乖離があるように感じる。

これらサイトに対する僕の解釈すら間違っているかもしれない。

世界はひとつになるべきだ

これもメタルギアソリッドに出てくる台詞である。

ネットが普及することによって、世界はオープンになるどころか閉鎖的になってしまった。
エコーチェンバー、フィルターバブル…。
ネットの機能自体が、検索者にとって都合のいい情報しか見えないようにする機能なのだから当然だ。

真実などどうでもいい。
欲しいのは自分にとって耳障りのいい言葉。

《HSP》という概念は精神医療には無いのだと医者は言う。
しかしそんなものは(自称)当事者にとってどうでもよい。
悩んでいる時に自分にとって耳障りのいい言葉があった…。そうなれば人は信じるに決まっている。嘘か本当かなんてどうでもいい。よく分からないもの、悩んでいるものに答えを与えてくれればいいのだ。

仏教

宗教のようだが、実際宗教なのだ。というか逆に人間のこのような信じる心理が宗教を生んだとも言える。そして仏教は時代や地域の移行とともに教典の内容が変わっている。つまり真実が変わっているのだ。
何が正しいかは今になっては分からない。釈迦はとっくの昔に死んでいるし、どこからどこまでが釈迦の教えかも史実のエピソードなのかも分からない。そもそも釈迦という人間が存在したのかも分からない。

議論をしよう

それぞれのコミュニティで、一方的に発信をするだけでは平行線だ。
XもnoteもYouTubeも、開けた大海に見えて、実は井戸が増えただけなのだ。
確かに使っているアプリや機器は共通しているが、それは《同じ言語を使っている》というのと同じだ。
しかし同じ言語を使っていても、意思疎通ができないという例は山ほどある。
体育館に仕切りを置いて、それぞれ話しているだけ

仏教系発信者ならば仏教系発信者で開けた議論の場を作り、精神科発信者ならば、精神科発信者で開けた議論の場を作るのだ。
今の段階において、同じ精神医療系発信者でも、意見の相違が見られる。しかしその相違は、相違している者同士で確認をとらないため、小さなズレになる。それがやがて大きな溝になっていくのだ。

体育館の仕切りをとっぱらおうではないか。《仲間》ではなく《みんな》で話し合おう。 
この時、必ず齟齬が生まれるが、それが醍醐味なのだ。
大海で認知的不協和が起こった時に、井戸に引きこもらせないようなシステムが必要なのだ。

Xはコミュニティノートという世界の認知を統一するためのシステムを作っている。
しかしこれではまだ足りない。個々で都合のいい情報を発信するという閉鎖的な構図が変わっていない限り、世界はひとつにならない。
《コミュニティノートの追加》ではなく、《フィルターバブルとエコーチェンバーの軽減》が大切だろう。

しかしどれだけシステムを改善しても、陰謀論やフェイク情報だということを信じる人はいなくならない。どれだけシステムを変えても、変わらない心はある。それはそれで、人の良さなのだと思うしかない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?