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境界知能が空港で出産した事件について

2019年11月、就職活動のために上京した羽田空港のトイレでKさんは赤ちゃんを産み落とします。そして直後に殺害。遺体を紙袋に入れて空港内にあるカフェに向かいます。そこでアップルパイとチョコレートスムージーを注文し、写真を撮影。「頑張っている自分へのご褒美」というコメントをつけてインスタグラムにアップしています。その夜、Kさんは東京都港区の公園に移動し、素手で穴を掘り、遺体を埋めました。そうして翌日、予定通りに就職面接を受けたのです。

Yahooニュース

犯人は大学生だった。

就職活動をしていたが、履歴書の志望動機は白紙。

この事実が示すのは、彼女には周囲に頼れる人間がいなかったという悲惨な状況だ。

《志望動機が白紙》というのはちょっとドキッとした。
自分も同じ経験があるからだ。

理由としては「めんどくさかった」というものだが、通るとは思っていた。しかしこの白紙にして出す行為は、世間的に見て異常のようだ。

なんなら面接において「自己紹介をしてください」という問いに対して、「好きな食べ物はラーメンです」と答える始末。それはハローワークの集団練習でのことだったのだが、隣の参加者に鼻で笑われてしまったことは今でも覚えている。

後で分かったが、僕は知的障害だった。

僕は彼女と違い大学には行っていないが、一歩間違えたら彼女のようになっていたかもしれない。

彼女は風俗で働いており、子供はその時に身ごもった。
親には言えなかったという。

彼女は境界知能であった

境界知能とは、知的障害以上健常者未満の知能指数だ。

その上で彼女は孤独でもあったのだ。

境界知能は失敗経験が多い。大人の集団に1人だけ子供が混じっているようなものなので、周囲と比べて出来ることがどうしても少なくなる。
そうすると周りは「無能」「バカ」「付き合いにくい」といった評価を下してしまう。
本人にとっては何故できていないのかが分からない。しかし怒られる。
そのうちできていないことを隠すようになる。どうせ怒られると分かっているからだ。

境界知能当事者は自己肯定感が低く、打たれ弱いとされる。打たれ弱い理由は上記の通りだ。何をやっても失敗し、何をやっても怒られる。だから何をするにも怖くなる。しまいには相談もできずに孤立してしまうというオチになるのだ。

彼女はそれに加えて殺人も犯してしまった。
ここがマズく、判決も厳しいものだったが、どのみちいい人生にはならなかったと思う。
境界知能は運良く面接が通ったとしてもその後の仕事で絶対につまずく。
度重なる失敗経験により遂に精神疾患を発症して精神科にかかった際、気づくというケースがほとんどだろう。
そして社会から弾かれてしまう。
ルート分岐しているように見えて《ドロップアウト》という結末を辿る。初手で詰んでいるからだ。

しかし判決が厳しかったと感じる。
結果的に殺してしまったとはいえ、好きで妊娠して好きで殺した訳ではないからだ。
混乱していて、どうしたらいいかが分からなかったのだろう。パニックになった末の行動が、空港での出産と公園での遺棄に繋がった。

そして彼女が風俗業を選んだ理由は、成功体験にあるのだと思う。
普通のアルバイトにおいては能力的な面で使いものにならないため続かないというのは容易に想像できる。

そして行き着いたのが、ある意味単純労働である風俗業だった。
そこで人生初の成功体験、褒められるということを経験してしまったのだろう。
子供が出来たのも、《子供の作り方を知らなかった》という可能性もあるが、《褒められるから言うことを全て聞いた》という可能性もある。

客が彼女の自己肯定感を満たしたのだ。

初めての承認、初めての評価⋯。
承認されたことは、後になっても覚えているものだ。
承認された経験が少ないならなおさら⋯。

懲役を終えても彼女は風俗業に身を投じるだろう。


参考サイト


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