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入道雲

もうすぐ夏が終わる。
汗だくの顔をハンカチで何度も何度も拭かなければならない季節からようやくおさらばできる。暦とか中秋の名月がどうとかニュースで聞いたけれどそんなことは関係ない。額から流れる汗が止まるくらいの気温になれば夏が終わると僕は思っている。ようやく秋が来る。やっと夏が終わる。


唯一寂しくなるのは入道雲が見られる季節をまた1年待たなければならないという事だ。


僕は入道雲が好きだ。

電車の車窓から見る入道雲も、
会社の屋上から眺める入道雲も、
帰宅中の夕暮れ時に見る入道雲も、
下を向いて歩いていた時に不意に見える入道雲も、
無条件に僕の心を刺激する。

今年の夏の入道雲

あのモクモクで真っ白の綿菓子みたいな雲が青空いっぱいに広がる圧倒的な存在感にいつだって魅了されている。なんでだろう。あの存在だけは他の季節では感じることができない懐かしさとか愛おしさとかそうゆう胸の奥にしまい込んだ気持ちを思い起こさせる。多分学生時代の夏の青春チックな思い出たちを彷彿とさせているのかもしれないが、あいにく僕の学生時代にそんなアオハルな思い出はただ一つもない。味わうことがなかったセンチメンタルな気持ちをも生み出してしまう。入道雲は不思議な存在なのだ。


あの夏の二人で見た入道雲



夏にしか見れない。
夏だからこそ見れる。
どんな名所や観光地もこの景色には勝てやしない。
日常に潜む感情にこそ輝きがあって、ちっちゃいことに目を凝らして見ないと本当に大事なことがすり抜けてしまうような気がする。


あと何回生きているうちに入道雲を見ることができるだろうか。

もうすぐ夏が終わる。
来年の夏はどんな夏になっているだろうか。
どんな入道雲に出会い、その度どんな感情に出会うのだろうか。
今から楽しみで仕方がない。

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