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できないことではなく できることに目を向けましょう の言葉

このカフェに勤務するようになってから
心が震えるほどに感動したことは数限りないのですが
3本の指に入るほど印象的だったのは、入社当時に出会った表題の言葉です。

ここで思い切って告白してしまうのですが、わたしは今で言う、軽度の発達障害です。
ADHDの、多動がないやつ??
注意欠陥障害の、グレーゾーンです。

中学まではなんでも満遍なくできる優等生として周囲をごまかせていたのですが
高校になるとさすがに学力もデコボコになり
友達との待ち合わせにきちんと行くのが至難の業で、いつも遅刻して相手をついに激怒させたり
絶対に忘れてはいけない忘れ物を玄関においてそれを見事に踏んづけて出かけたりと
マンガさながらのアンビリバボーな離れ技を数限りなく記録しながら生きてきました。

成長と共に、自分の特性を知り、操縦方法も段々と分かってきて
幼い頃のような失態はずいぶん減っていくのですが
それでも人のやらないような大ボケをかましてしまうたび
自分には社会で生きていく能力が欠如している…と、人知れず枕を濡らしたものでした。

自分のよいところを 人の前で指摘してもらった日

そんなデコボコのわたしですが、晴れてカフェに採用していただきました。
努力を惜しまず役に立つスタッフになるぞ!!と、やる気は十二分でした。
ただ、脳裏には常に、いつ失態を犯してしまうかという不安があったのも事実です。
化けの皮剥がれたり〜!!となる瞬間が訪れることを、わたしはとても恐れていました。

そんなある日、表題の言葉と出会いました。
研修の時に言われたのです。
「日本人ってつい、今日1日を振り返る時に、反省点ばかり探すよね。
 何ができませんでした、これが足りませんでした。それも確かに大事だよね。
 でもね、それと同じかそれ以上に、できたことを必ず見つけてください。
 必ず成長したことがある。そして、あなたにしかできないことが、必ずあるから。」
そしてコーチは、わたしの素晴らしいと思うところを直接伝えてくださいました。
「なとわさんは、圧倒的なホスピタリティ。これはもうすごすぎる。神が与えたギフトだね。
 業務やレシピはいずれ必ず覚えるから、これからもお客さまの笑顔のために、そのホスピタリティをどんどん発揮してください」

ダメダメ社会人、と自らに貼っていた悲しいレッテルを
ちょっと書き換えられるかもしれない…?
わたしの中の灰色の雲が、ゆっくり動き出した瞬間でした。

脳科学的にも証明されているらしい できないことよりできることに目を向ける能率性

その日から、わたしはお口あんぐりなミスを披露するなとわを卒業できたのでしょうか?
いえいえ、もちろん大なり小なり、ミスはたくさんしましたし、お客さまに謝罪したことも、仲間に迷惑をかけてしまったことも何度もありました。
ずいぶん減ったものの、今でもミスはゼロには成りません…大きな声では言えませんが…。
でも、確実に言えることは、わたしはあの言葉と出会ってから、自分を誇りに思い、大事にできるようになったと言うことです。

判断スピードのピカイチなAちゃんと同じようにスピーディーに動くことは無理でも
他の人の気づかなかったお客さまの表情に気づき、声をかけることが得意だったり。
気難しいお顔でご来店された方をなぜだか最後はニコニコにしてしまうささやかな魔法を使えたり。
もちろん完璧ではありませんが、入社当初に褒めていただいたホスピタリティは
今もわたしの接客の軸となってわたしを強く支えてくれています。

数年後に雑誌の記事で読んだことですが、脳科学的にも、失敗を数え上げて反省するよりも
失敗を認知したあとに必ず成功を探し、数え上げて次に臨む方が
脳は活発に、能率的に機能するのだそうです。
脳科学のことは詳しくありませんが、体感的にもそれを実感しています。
何か明確に自信を持てる部分があると、自然と他のミスも減るから不思議です。

新人バリスタと出会うたび 必ず同じメッセージを伝え続けている

あれからずいぶん時が経ち、気がつけばわたしも大ベテランバリスタとなりました。
たくさんの後輩と出会いました。新人研修を何度となく担当させていただきました。
そのたびに、わたしがもらったのと同じ言葉を必ずかけるようにしています。
自分のできなかったことに気づくこともすごく大切。だけどそれと同じかそれ以上に、できたことに目を向けてみよう。
今日わたしはこんな成長を遂げた!それを必ず見つけて帰ろう。
出来ないことはフォローするから大丈夫。できるようになったこと、できていることをどんどん伸ばしていきましょう。
そんなふうに声をかけると、時々泣いてしまう人もいます。
その涙に、新人として期待と不安をどちらも抱いていた20代の頃の自分を思い出します。

あなたにしかできないことがある。
それは本当のことです。
きっとこの仕事に関係なく、すべての仕事においてそうでしょう。

できないことではなく、できることに目を向けて。
明日も仲間たちと共に、素晴らしい仕事を目指したいと思います。

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