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【詩】バック・ミラー

ハンドルを握る 帰り道  

疲れた身体に 月は見えず

若い車に 追い越され  

信号待ちで ラジオをつける

流れてきたのは 好きだった  

あの頃歌った 陽水の歌


重ねた年月(としつき)  少しずつ  

あきらめたものは 数え切れず

無茶をやめた 馬鹿もやめた

それでもすべてを

捨てたわけじゃない


バック・ミラーが 後ろを映す

あの頃の自分は まだここにいる



コンビニのそばで 車を降りる

眩しい灯りの 中に入る

ポスターの男の 名も知らず

幼い顔の 店員が

笑顔で入れた コーヒーは

いつものそれより ほろ苦い


重ねた年月 少しずつ

あきらめたものは 数え切れず

熱くはならず 冷たくもない

それでもすべてを

許したわけじゃない


バック・ミラーが 後ろを映す

あの頃の自分が また呼んでいる



重ねた年月 少しずつ

あきらめたものは 数え切れず

無茶をやめた 馬鹿もやめた

それでもすべてを

捨てたわけじゃない


バック・ミラーが 後ろを映す

あの頃の自分は まだここにいる




☆☆ミニ作品解説とおしゃべり☆☆

今の自分は思い描いていたものから遠ざかっているのかもしれない。それでも自分のことを信じている『過去の自分』に支えられながら、もう一度前に向かって歩いてゆこうとする主人公の姿を詩にしました。

吉田拓郎さんや井上陽水さんをトリビュートするバンドのライブで、会場にいらしたみなさんの背中を見ていてイメージした作品です。




©︎ 2020 松本アニー


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