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「人としての器」を学ぶことの意義

「人としての器」を学ぶことの意義は何でしょうか?

この研究をはじめてから、「人としての器を学んで、何の意味があるんですか?」と聞かれることが増えてきました。

そのたび、私自身は答えを限定したくないという思いから明言することを避けていたのですが、そろそろ研究も深まってきたこともあり、一度言語化してみることにしました。

それは一言で言えば、自分自身や他者と真剣に向き合い、それによって豊かな人間関係を築く基盤ができ、一人ひとりの人生をより意義のあるものにするということです。

ハーバード大の成人発達研究を通じて、幸福・健康・長寿における最大のカギは、良好な「人間関係」にあるということが明らかになっています(『グッド・ライフ』辰巳出版を参照)。

つながりが希薄化した現代社会に生きる私たちにとって、豊かな人間関係を築くことは非常に重要なテーマです。

しかし、そもそも豊かな人間関係とは何でしょうか?

そして、どのようにして豊かな人間関係を築けばいいのでしょうか?

その際、「人としての器」の考え方がどのように役立つのでしょうか?

今回は、この点について深掘りしていこうと思います。


豊かな人間関係とは何か?

上述の書籍『グッド・ライフ』には以下の記述があります。

「幸せな人生は、複雑な人生だ。例外は、ない。
幸せな人生は喜びにあふれている……けれど、試練の連続だ。
愛も多いが苦しみも多い。それに、幸せな人生とは偶然の賜物ではない。
幸せな人生とは、時間をかけて展開していく一つの過程だ。
波乱、安らぎ、楽しさ、重荷、苦闘、達成、挫折、飛躍、それに恐ろしい転落がつきものだ。
そしてもちろん、幸せな人生も必ず死を迎えて終わる。
陳腐な話に聞こえるのは百も承知だ。それでも、はっきり言おう。
幸せな人生は楽な人生ではない。完璧な人生を送る方法など存在しないし、あったとしたら、ろくなものではない。
なぜかって?まさに困難や苦労こそが、豊かな人生──幸せな人生──をもたらすからだ。」

心から信頼できる人と日常的に関わることは、言うまでもなく重要です。

そういった相手からは元気や活力をもらえたり、安心感をもたらしてくれたりするため、一緒にいて心地よい人間関係は大切にすべきでしょう。

しかし、気持ちよく理解し合える人たちとばかりつながっていることが、豊かな人間関係を指すとは限りません。

どこか緊張感があり、不満や悩みをもたらし、疎外感を覚えたり、気分を害するような人間関係の中にも、お互いの視野や世界を広げ、人生を豊かにするためのチャンスが宿っています。

上述の引用にあったとおり、豊かな人生とは、困難や苦労を伴ってこそ得られるものです。

そして、そうした困難や苦労をもたらすのは、いつだって価値観の異なる他者の存在です。

だから、自分の器で受け入れられる範囲を超えた異質さや多様性とぶつかり、それでもなんとか受け入れようとして、どんな相手とも心から深く通じ合うおうと悩んでいるときこそ、豊かな人間関係をつくっていると言えるのではないでしょうか。


「人としての器」を学ぶことは豊かな人間関係の基盤をつくる

現代社会では人々の価値観が多様化し、価値観の違いゆえに、ときに衝突したり、ときに自分勝手になったり、ときに自分を押し殺したりします。

そうした中で、人としての器が目指している世界観は、「自分らしさを磨き、大きな心で包み込む」ことと表現できます。

「人としての器」の構成要素にある四つの領域の記事で述べたように、「感情」と「自我統合」は「器を磨く」というイメージで、「他者への態度」と「世界の認知」は「器で包む」というイメージで捉えることができます。

この「感情」「他者への態度」「自我統合」「世界の認知」という四つの領域から、人としての器が人間関係の構築にどうつながっていくのかを考えてみると以下のようになります。

まず、「感情」に関して、自分自身の感情を理解しコントロールしたり、豊かな感情表現で他者と気持ちを共有しあうことは、円滑な人間関係を構築するうえで重要な役割を果たし、こうした感情の共有を通じてこそ幸福感が得られます。

次に、「他者への態度」に関して、他者の意見を尊重し、思いやり、成長に向けて導き、愛情や謙虚さを通じて相手を包み込むような態度で接することで、周囲から信頼されたり愛されたりすることにつながります。

さらに、「自我統合」に関して、深い自己認識を通じて自身の良い面も悪い面も素直に開示したり、好奇心を持って自己成長を求めたり、自らしい信念に向かって挑戦・努力する姿勢は、自分という人間を他者に理解してもらったり、周囲に良い刺激や意欲をもたらしたりすることにつながります。

そして、「世界の認知」に関して、広い視野・高い視座を持って、現実の複雑さをより深く認識しようとする姿勢は、他者との対立や相容れない部分を乗り越えるなど、より深層のところで心から通じ合うことを可能にします。

まとめ

人としての器を大きくすることは、自分自身の人生を豊かにするだけでなく、社会全体を包摂的なものに変容させるためにも重要です。

新自由主義のイデオロギーにおいては、無意識のうちに、自分の幸せ、自分の成功、自分にとっての価値にとらわれてしまう懸念があります。

しかし、「人としての器」は、あくまで自分自身や他者と真剣に向き合うことを重視しており、それによって豊かな人間関係を築く基盤ができ、一人ひとりの人生を意義のあるものにします。

つまり、決して自分のためだけではなく、他者や社会全体のためにも、人としての器を大きくしていく努力が大切になります。

人は一人では生きていけませんし、多様な人と関わって生活をしている以上、人間関係の悩みは避けられないものです。

それほどまでに、豊かな人間関係を築くことは私たちにとって重要なテーマと言えます。

その際、「人としての器」の考え方を学ぶことは、豊かな人間関係を築くうえでの指針となるでしょう。

そして、お互いに支え合えるような関係を築いていくうちに、幸せになるために豊かな人間関係を築くのではなく、豊かな人間関係を育むというプロセス自体が人生の喜びであるということに気づくかもしれません。

言葉の上では理解しづらいかもしれませんが、これこそが「人としての器」が目指している世界観「自分らしさを磨き、大きな心で包み込む」ことなのです。

ご興味を持たれた方は、ぜひ一緒に「人としての器」の探究を通じて、素敵な器をつくることを始めてみませんか?


より詳しく「人としての器」を学びたい方は、金曜の夜は”いれものがたり”にご参加ください。

これまでの研究成果のエッセンスを紹介し、対話形式で理解を深める入門版ワークショップです。

https://h-utsuwa.com/iremonogatari


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