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#エッセイ

春雨

肌に纏わりつく春に
安売りのあっぷるてぃーがよく似合う
赤いワンポイントを誇らしげに胸に掲げた少年が
電車を駆ける
それを信じていればいい
暗く陰った車窓にあらゆる瞬間が映り込んでいる
口に含んだ薄い味みたく
もう忘れてしまうよ
雨が降ったら
湿った肌ににおいが残るだろうか
残るだろうか

道路の少年

 私がはじめて編んだ詩集のタイトルは「道路の少年」という。その序文には「道路の少年」というタイトルが意味するところが書かれている。

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 道路には少年がいる。それはいつの時代も変わらない。道路にいる少年は、道路に見えないものを見る。それは地獄のマグマだろうか、アマゾンの鰐だろうか。屹度、そこには何かが蠢いている。そしてそれは本当

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台風の後の夜を散歩する

ラジオを聴きながら寝っころがっていると、カーテン越しに月明かりが見える。窓を開けるといつの間にか空は晴れていて、台風はもういなくなっていた。

手近にあったリトルトゥースのシャツ(もちろんラスタカラー)を着ると、外に出てみる。

雨風に清められ澄み切った空気に脳がさわさわとする。湿度を含んだ町から上を見上げると月がかすんで見えて、水中から太陽を見るみたいにゆれている。

人も車もなく、町は静かで、

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