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包まれる鈍器

これまで中古で本を買うという経験をほとんどしてこなかったので、メルカリで見つけた『魍魎もうりょうはこ』がとても綺麗な状態で届いた時にはちょっと感動してしまった。新品ではないので裁断したてのような紙の「キレ」は感じられないものの、シミや角折れなどもなく、新品で買えば1,650円のところ半額程度で入手できたので大満足である。京極堂シリーズは表紙がおどろおどろしいため、ソファやテーブルにそのままポイと置いておくと自分で仕掛けた罠に自分でびっくりしてしまうので、正和堂書店のオンラインショップで手に入れたブックカバーをかけている。文庫本の概念を覆す信じられないくらいに分厚い京極堂シリーズも余裕で包み込んでくれる正和堂のブックカバー。ありがとうございます。

『狂骨の夢』『鉄鼠てっそおり』『絡新婦じょろうぐもことわり』はAmazonで中古品を探して購入してみた。メルカリと違って実物の写真がほとんどないので、コンディションが「良い」もしくは「非常に良い」であることを必須条件として、商品説明文と価格&配送料を参考に、状態の良いものが届きますようにと毎回祈るような気持ちで購入の手続きを進めている。今のところ届いたものはおおむね商品説明に偽りはなく、目立った傷や汚れもないし、最新版の商品画像とは装丁の異なるもの(本体に表示されている価格も最新版よりずいぶんお安い)が届いても届き次第すぐにブックカバーをかけるので問題はない。『絡新婦の理』だけは、前の持ち主さんが気に入って何度も何度も読まれたんだろうなと想像を巡らせるくらいには中古感が強くて、「いやこれはコンディション「良い」じゃなくてせめて「可」やろがい!」と中古で本を買うことの現実を突きつけられて届いた時こそちょっとだけぷんぷんしてしまったけれども、ブックカバーをかけて読み終わってみれば、多少の角折れさえも味だなと受け入れられるくらいに気持ちは落ち着いている。中古本の傷も汚れも一度読んだらわたしのものになる、みたいなテーマで一句詠みたいほどである。

『絡新婦の理』、京極堂シリーズの第5弾にして「え、これ以上とかあるの?」と思うほどに、「京極堂の世界で溺れたい」というわたしの欲望がすっかり満たされてしまった。物語の舞台から、女たちの人物描写から、構成から、なにもかもが「非常に良い」。1,400ページ近くもある長い長い小説を読んでからのダ・カーポ。使いどころがわからないけれども声に出して読みたい日本語の上位に君臨する「快哉を叫びたくなる」ってまさに今なんじゃないかと思った。完全に京極夏彦先生の手の平で転がされている。これなら新品を1,870円で買っていたとしても何の悔いもなかったと思う。前の持ち主さんが何度も何度も読み返してこれほどまでに中古感が高まったのも今ならわかる。わかるけれども、販売者さんよ、コンディションは絶対に「可」だ。コンディションが「可」であったならば、わたしは買っていなかった。コンディションが「良い」であったから、わたしは買って、読んで、まんまとその世界に溺れてしまった。コンディション「可」レベルの中古品でもコンディション「良い」で販売したくなる魅力が『絡新婦の理』にはあったということか、わかる。京極堂シリーズならコンディション「可」も「良い」になる、みたいなテーマで一句詠みたく、まではならない。

第6弾は『塗仏ぬりぼとけうたげ』。「宴の支度」「宴の始末」の二部で構成されるシリーズ最長編とのこと。京極先生も二部構成というお考えはお持ちであったのですね。てっきり、分厚すぎて見開きの中央付近の数行が影になって読めないというクレームが多発するまで分厚さを追求されていくのかと思っていたので軽い驚き。今回も京極堂シリーズ補正はあるかもしれないと覚悟はして、Amazonの中古品のコンディション「良い」で購入した。「宴の支度」と「宴の始末」、それぞれ別のショップから購入したのだけれど、今回はどちらもとてもきれいな状態のものが届いた。前の持ち主さんは、買ったけれども読まなかったのか、それとも1回読んだきりで手放したのかしらなどと考えたりしてしまっているので、完全にどうかしている。

二部構成ということは、今こそあのブックカバーを使う時なのではないか。

支度が青、始末が赤。似合うー!
後姿はなんの変哲もないただのの青と赤。
二部構成なので京極堂シリーズにしては薄め。右肩あがりは気のせいです。

榎木津礼二郎、ずっと阿部寛さんのイメージで読んでいたのだけれど、『鉄鼠の檻』あたりから沢村一樹さんのほうがしっくりくるようになった。京極堂は堤真一さん以上の適役はなかなか思いつかないのでそれがファイナルアンサーかもしれない。京極堂の妹の敦子は深津絵里さん。木場修太郎はずっと考えているのだけれどぜんぜん思いつかない。関口くんは、永瀬正敏さんも椎名桔平さんもなんだかしっくりこない。椎名桔平さんなんて、どちらかといえば京極堂のイメージじゃない?でも京極堂にはすでに堤真一さんがぴたっとはまっているしな。ダブルキャストもありかな。次の『塗仏の宴』は木場さんと関口くんのキャストを考えながら読みたいと思っている。次はしっかり関口くん出てくるかな。関口くんが出てこないな、とちょっとだけ気にはなりながらもすっかりその世界に溺れて散々楽しんでしまった『絡新婦の理』を読み終えて、なんだか関口くんに申し訳ないような気持ちになって、一刻も早く関口くんにぴったりのキャストを見つけなくてはと思いながら、木場修太郎が思いつかない時には椎名桔平さんで手を打とうと思いついて、椎名桔平さんの汎用性の高さに勝手に驚くなどしている。相変わらず一文が長くて申し訳ありません。

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