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何度でも読み返したいnote3

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。こちらの3も記事が100本集まったので、4を作りました。
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2022年5月の記事一覧

ボーリングの玉を捨てたい

パート先の同僚たちとゴミ回収の話になった。 それぞれ住んでいる地域が違うから、少しずつルールが違って、そのことで昼休みのトークが盛り上がった。 一人の同僚が言った。 「うち、ボーリングの玉があるんだけど捨てられなくて困ってる」 家にボーリングの玉がある、とは? 「兄貴がボーリングに凝ってた時期があって、何点以上出したらもらえる記念のボールをもらってきちゃった」 お兄さんはもう家を出ていて、ボーリングの玉だけ置いていかれたと言う。実家というのはえてしてよくわからないも

ちょうどいい人間であること。

可もなく不可もなく。 一般にこれは、あまりよろこばれることのない言葉だ。人物的な評価として「可もなく不可もなく」とされるのも悲しいし、仕事の評価が「可もなく不可もなく」であっても、やはりさみしい。人は「可」がほしいものである。 しかしながら現在、オフィスの窓を開け放って仕事をしながら「なんてちょうどいい気候だ」と思った。暑くもなく、寒くもない。エアコンを動かす必要もなく、半袖のシャツを着て仕事をするのにちょうどいい。この「ちょうどいい」とは、言い換えるならば「可もなく不可

とりあえずビール考

とりあえずビール、の、とりあえずって何なんだ、と思っていた時期がある。大学生のころだ。 そのころ私はお酒を飲むことを覚えたばかりで、ビールのことをそれほど好きではなかった。入っていた部活では飲み会の機会がそれなりにあったけれど、公式の飲み会は必ず安居酒屋の飲み放題プランで、大人数で押し掛けるものだからビールはプラスチックのピッチャーで供されていた。今思えばあれは、ビールではなく発泡酒だったのだと思う。 安っぽいプラスチックの大味な容器から、くもった小さいコップに注がれて泡を

こころ泥棒

宮崎駿監督の「ルパン三世 カリオストロの城」はだれもが知っている名作だ。 名場面は数々あれど、ぼくの好きなのは最後のエピローグ的なワンシーン。ルパン一味がカリオストロ城を去ったすぐ後に、銭形警部がクラリスのもとに駆け付けてくる。銭形警部が「ルパンはまた盗みやがった」というと、クラリスはルパンは何も盗みませんでしたという。すると銭形警部は「あなたのこころを盗んだのです」という。 いやぁ、今思い出してみてもいいシーンだ。猪突猛進でちょっとおっちょこちょいなTV版の銭形警部がこ

人には二つのタイプがあるんだ

鮮やかに咲き誇っていた春の花たちが姿を消したかと思えば、新しい新芽たちが競って自分の緑色を深めようと賑やかだ。 澄み切った五月晴れが続いていたかと思えば、気づかないうちにしとしと雨が降りはじめる。街路樹の下に駆け込むと、うっすら湿った風が肌をさする。もうすぐ梅雨がやってくるんだなと気づく瞬間だ。 長めにとったゴールデンウィークとその直後の出張が重なり、久方ぶりに単身赴任先のマンションに戻りました。休暇前に綺麗に掃除したはずの部屋には、なぜか薄らと埃が溜まっている。「ふぅっ

昔女の子だった私と、今女の子の君。

図書館で、司書として働いている。 毎日たくさんの蔵書とともに過ごしているわけだが、その全てを知り尽くしているわけではない。(もちろん、得意分野はそれぞれあるけれど) 利用者さんがカウンターに持ってきて初めて「うわあ、こんな面白そうな本、どこに隠れてたんだ!?」と、その存在に驚かされることがしばしばだ。皆さん本当に目利きで、何万冊もある中でよくぞまあ見つけて下さいました、と言いたくなるほど珍しい本を借りていかれる。そして、ものすごくそそる本なのである。 私は利用者さんが見出し