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12月

煌びやかな季節になるといつも思い出す、しょっぱい思い出がある


大学1年生の夏まで付き合っていた彼氏は同じ高校の1つ上のバスケ部の主将だった人だ。

かれこれ2年のお付き合いの末、別れることになった。

付き合い始めた当時、田舎の公立高校という狭いコミュニティの中で、高校2年生の私にとって3年生のバスケ部の主将はキラキラ輝いて見えた。

なんとなくその人に選ばれた自分が誇らしく、根拠のない自信とともに四六時中彼のことを考えていた。

2年たち、私も大学生になり、知らない街で一人暮らしをして、世界が広がったことでかっこいい先輩の姿が急に小さく見えた。

ずっと見上げていた存在だったのが、いつしか目線が同じになっていた。

彼が知らないことを知ったり、彼が経験したことのないことを先に経験したり

そんな私を見て、面白くなさそうな彼の姿が余計小さく見えた。


そうして破局を迎えてからも定期的に連絡が届いた。

一方で私は勉強にバイトに明け暮れて、ほぼ返信していなかった。


大学2年生の冬
12月24日


なんの予定もない自分に気づいた。
テレビをつければ綺麗なイルミネーションの中で楽しそうに歩いている男女の姿が映った。

普段恋愛にあまり興味がない私でも


、、いや、普段から独り身が寂しかった。20歳の女子大生が彼氏も作らず勉強とバイトしかしていない、その状況が不満だった。それがクリスマスイヴの夜爆発寸前にまで膨れ上がっていた。


そんな時思い出したのがバスケ部の主将元カレだった。


そして彼のことを改めてよく考えた

  • 憧れの先輩だった人と付き合えた過去

  • いろんなことを教えてくれた

  • 私の一方的な理由で別れた

  • 別れてからも定期的に連絡をくれて思い続けてくれている


自分がとんでもなく悪い奴に思えた。
大切にしてくれる人を大切にしなければ

よくわからない使命感に駆られ、ずっと返していないメールを返した。


そしてその24日の夜、二人で会うことになった。

当日にもかかわらず彼が用意したのは、隠れ家的な居酒屋でロゼシャンパンで乾杯をして、夜景を見に行くコースだった。

急いで着替えて髪を巻いてタクシーを呼んだ

ソワソワしながら待ち合わせ場所でたくさんのカップル達に紛れながら彼を待っていると




彼は両手をポケットに入れながら現れ

会うなり
「へぇー!なんか色気出してんじゃん」と私に言った


この瞬間、さっき一人の部屋で思い巡らせた彼への想いは全てただの勘違いだったと気づいた。

彼は憧れの人だっただけで、今も憧れているわけではないこと
いろんなことを教えてくれたのは感謝しているが、それの多くは彼のたった1/Nの考えであったこと

ついでにひどい浮気性であることなど忘れていた要らぬ思い出まできちんと記憶を呼び戻した。


夜景にたどり着いた頃には私は一刻も早く帰路につきたかった。
一方で、彼のボルテージがヒシヒシと上がってきたことを感じた。

私への視線がやけにしっとりしている
そして距離が近い


「このままではめんどくさい事になる
自分が蒔いた種とはいえ、穏便に対処したい」


強くそう感じ、夜景のフロアををまるでスカイツリーの回路のように早足で一周し、そのままエスカレーターに乗り明るい飲食店フロアに降りた。


振り切るようにタクシーに乗り込み、私の20歳のクリスマスイヴは終わった。





クリスマスの魔法のせいで冷静な思考回路が保てなくなっていた。
本当に危ない季節だ。


これからの1ヶ月、皆さんくれぐれもご注意を。


クリスマス、一人でアマプラ観てたっていいじゃない。


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