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入る額が大きくなれば、出る額も大きくなる。意外とブラックなホステス業|元銀座ホステスのよもやま話

こんにちは、Hannaです。
私は18歳の時から9年間、夜のお仕事をしていました。
六本木でキャバ嬢2年、西麻布でラウンジ嬢2年、銀座でホステス5年です。
詳しくは此方に書いてありますが、全然売れなかった半年間を経て以後8年半はナンバーから外れたことのない売れっ子へとなりました。

月収7桁を稼いでいると言うとやっぱり夜の仕事って儲かるんだなあと思われがちですが、間違ってはいません。儲かります。頑張り次第ではいくらでも稼げます。

しかしその分、月々の必要経費もまたそれなりにかかるのです。

直近で働いていた銀座のクラブを例にしましょう。
私が働いていた銀座のクラブは所謂高級クラブと呼ばれるお店で、キープボトルを入れれば一度座るだけで最低でも10万円以上かかるようなお店でした。
それとは別に抜きもの(シャンパン・ワイン)や、フルーツ、ドリンク、一品(おつまみ)などがありましたので、シャンパンやワインを入れようものなら一回のお会計は青天井。上を見ればキリがありません。
またキャバクラやラウンジであればお客様が「別の子を指名したい」と言えば指名替えが可能ですが、銀座のクラブは永久指名制度です。
他に気に入った子がお店に居たとしても、同じ店に担当の係ホステスが居る場合は、指名替えする事も出来ませんし、係のホステスを外すことは出来ません。
(極稀に例外もありますが、トラブルの元になるので滅多にありません)
故にお客様と係は銀座にいる以上、長いお付き合いをしていくことになりますので色恋だけではなく、人としての信頼や義理が重要になってきます。
しかしお客様も係ばかりでは飽きてしまいますし、係の居ない店で新しい女の子飲みたくなりますよね?

そこでお店や係にマンネリを感じて貰わないために、必要なのはヘルプと呼ばれる女性たちです。

ヘルプの主な仕事は、お客様のお席に着き接客をすること。
そして係の代わりにお客様と連絡を取り、来店を促したり同伴をするのがヘルプの仕事です。しかしヘルプは係ではないので、例えヘルプが営業してお客様に来て頂いたとしても売上は全て係のものになります。
これだけ聞くとヘルプって係の奴隷にも見えますが、そうではないのです。
それはお店側との雇用契約、そしてノルマの違いに理由があります。

まず、ヘルプ。ヘルプにも大まかに言えば2種類あります。
1つはゼロヘルプ。これはお客様が居ない状態のキャストを指します。
完全指名制度の銀座においてお客様を掴むのは容易ではありません。なので、月々○○万円の売上ノルマを達成できなければ日給を下げます…なんて事言ったら、非常に酷ですよね?
なのでゼロヘルプの課せられているノルマというのは月々○回以上の同伴をする事です。月々の売上ノルマはありません。(因みに同伴の回数は週の出勤日数と日給額によって異なりますが、出勤日数が多くて日給が高くなると同伴ノルマの回数も増えますよ)
同伴というのはお客様と一緒にお店に来ることなので確実な来店に繋がります。要は係のお姉さんやママの代わりに同伴をする事によって売上と来店のサポートをするのが主な仕事なのです。

次に経験者ヘルプ。これはお客様は居るけれど売上契約(後述します)をしていないキャストを指します。
ゼロヘルプと同じく月の同伴ノルマがありますが、それとは別に月の売上ノルマがあります。これが約定、いわゆる打ち込みと呼ばれるものです。
この打ち込みによってノルマの金額や回数が変わりますが、日給が高ければ高いほど最低売上ラインが高くなりますし、ノルマも厳しくなります。
因みにノルマが達成できなかった場合はお店によって異なりますが、同伴ノルマであれば達成できなかった日数の分だけ日給が100%引かれたり、売上が達成できない場合は逆スラ(銀座はスライド制度)で日給が減っていきます。

そして売り上げ。これはヘルプと違って日給ではなく、お客様がお店に使っていただいた金額の内40%〜60%をお給料として頂くキャストのことを指します。(折半とも言います)
キャストとお店側との契約によって条件が変わりますので一概には言えませんがノルマもありますし、何よりお客様に来て頂かない事には一銭もお給料が無いので、売り上げ契約は簡単ではありません。
因みに、お客様が居て一定の売上が見込める人気キャストやママレベルになると、移籍の際にお店側が支度金を用意する場合もあります。(実質バンスのような部分もありますが)

此処まで読んで頂くと解ると思うのですが、この銀座というシステムはお客様に来てもらわないとお給料にならない売り上げと、ノルマを達成しなければペナルティでお給料が減ってしまうヘルプたちが上手くお互いに協力し合うことで成り立っている業界です。

文字にすると結構ブラック感が漂いますが、銀座の高級クラブと言われる店はおおよそこんな感じです。

なので売り上げ契約のママやキャスト、売上ノルマのあるヘルプにとって自分以外にお客様への連絡をし、営業をして来店に繋げてくれたり、同伴してくれたりするヘルプを常に探しているのです。
これが出来るのは簡単には指名替えの出来ない永久指名制度ならではです。

さて此処からは更に切り込んでいきましょう。具体的なお金の話ですよ。
最近では時給制度のお店も増えましたが、基本的には日給制度です。
勤務時間は大体が20:00〜24:00。
ゼロヘルプの最低日給は25,000円、平均は30,000円からです。容姿が良ければ良いほど日給は青天井、ゼロヘルで50,000円の子も居ます。
これだけ書いてると高いって思いますよね?
確かに高いのですが、ここからかかる必要経費についてお話します。

まず毎日のヘアメイク代。銀座のクラブはヘアメイク必須で、必ずヘアメイク専門店でヘアセットをする事が義務付けられています。一回あたり平均で2500円かかります。
交通費。出勤は電車通勤が出来たとしてもお店が終わるのは24時。なので基本はタクシー帰宅となります。しかしこれは出勤で電車が使える場合だけ。
銀座という街はいつ何処で人に見られるか解らないという事で、銀座を歩く時の私服ですら非常に制限があります。(デニム、スニーカーは絶対NG)
しかも銀座の建物は古い為、更衣室が狭いお店も多いです。
なので混雑する時間に出勤すると着替えに手間取ってタイムカードを押せない事もあるので、基本は家でドレスやお店で着用する服に着替えてタクシーで美容室まで行き、出勤した方が安全なんですよ。私の場合は片道1500円、往復3000円でした。
単純計算で出勤の度に毎回5500円の出費になります。
なのでゼロヘルで日給25000円貰っていたとしても、実質は19500円なんです。家が遠い子は電車で来る子も居ますが、帰宅の交通費が高くつくため改めて日給に換算すると17000円になってる子も
ここから厚生費や所得税、他に罰金や前借り金などがあれば引かれるものが増えるので総支給額として見るとあれ…?となる事も。

そして月に一度必ずある新調日。
これは月に一度は必ず新しい衣装を着る事を義務付けられている日です。
因みにこの新調日に欠勤するとペナルティとして1日の日給分100%が引かれます。
銀座という土地柄、お客様も目が肥えていますし安物を着ているとママやお客様に指摘されたり、お店の黒服や上役の人から怒られます。故にしっかりした物を買わなければなりません。
安くても30000円台〜、それ以上であればなお良しだと思って下さい。

お店によっては月に1回〜2回の着物日もあります。
これは月に1回〜2回はお着物を着てねという日で、これも新調日と同じく欠勤するとペナルティが課せられて1日分の日給が引かれます。
しかも着物というのは非常に奥深く、金額も張るのですぐにヘルプが買えるものではありません。季節の柄や色、生地で言えば絽、紗、無双…本当に枚挙に暇がないですね。
なのでお着物はレンタルをします。ヘアメイクのお店でレンタル着物を扱っているお店も多く、一番安くて10000円台からです。
また季節ごとのイベントがあります。
夏であれば浴衣日、クリスマス時期であれば色指定のドレス、年明け初日の営業日はお着物など…イベント日は出勤するだけで準備にお金がかかるのです。

でもそう言っても月に数回、1日の日給分を使うだけだから全然お金が余るじゃないか。とお思いの方も多くいらっしゃると思います。

いや、これで終わりませんよ。まだまだ出費があります。

それはお客様への贈り物代です。
まずお誕生日プレゼント。日頃お世話になっているお客様への感謝を込めてお送りするものですし、何より前述でも申し上げましたがお客様は非常に目が肥えていらっしゃる。銀座で飲み慣れている人であればあるほど数々のホステスから贈り物を頂いているので、ちょっとやそっとじゃ印象にも残らないし、変なものも贈れないんです。

あまり頻度はいらっしゃらないお客様には10,000~20,000円台。
いつもお世話になっているお客様であれば30,000~70,000円台。
頻繁に来ているor太客には100,000円台。


その上お誕生日の頃にお店にいらした時はプレゼントとは別にして、ケーキとシャンパンを自腹を切ってお出しします。お店側もその場合は仕入れ値で計算して此方に請求してくるのですが、なんだかんだで30,000円以上はかかります。

これ以外にもお客様のお仕事が上手くいった際のお祝いにシャンパンを出すこともありましたし、お客様の連れてきた取り引き先の方やお客様に対して手土産をお渡しする事もあります。勿論これは係のホステスが負担します。

次にお中元とお歳暮。これは銀座では必ず行われている事なので絶対にやらなければなりません。
金額としては3000円~10,000円くらいですが、お客様の数が多ければ多い分贈り先も多いので額も相当額になります。

バレンタイン、これもまた手を抜けないイベントですね。
金額としては3000円~7000円くらいですが、例えばこの時期にお客様のお連れ様もいらっしゃった場合のことも考えて余分に購入し裏に置いておいて、お客様とお連れ様にお渡しする…ことも考えて購入していましたので、これもまた相当額です。

そして自分のバースデーイベント。これに関してはバースデーイベントにお越しいただきありがとうございますというお礼を兼ねたものなので、一切手を抜けませんでした。
平均予算としては3000円~7000円の間でしたが、お客様が連れてくるお連れ様にも渡すことを考えると、足りなくなるということがあってはならないので予備分まで含めた数になります。10個、20個程度の話ではありません。
あとはお店を移籍した場合もバースデーイベントと同様ですね。

お客様の数が多ければ多いほどプレゼント代だけでも相当な金額になる事がおわかり頂けましたでしょうか?
しかも恐ろしいことにまだ必要経費があるんです。書いてる私も、えっ…必要経費多すぎない?と過去を振り返って胃がキリキリしています。

同業のバースデーイベントと開店イベント…これがまたお金かかるんです。
お花代は最低でも30,000円からですし、お祝いでプレゼントを用意します。同じホステス同士ですし、プレゼントのセンスが無いやつと見られては沽券に関わるので一切手を抜けません。
平均予算としては30,000~100,000ほど。

開店祝いやバースデーは共通のお客様と行く場合が多いのであまりお金はかかりませんが、稀にお客様無しで伺ってお祝いでシャンパンを下ろすこともあるので、その場合は50,000~青天井になります。

あといつも席に着いてくれてヘルプを頑張ってくれている子のお誕生日。
ヘルプ居てこそ仕事が円滑に出来るので、彼女たちへの感謝を忘れてはいけません。
これもまた一切手を抜けませんし、変なものを渡せば士気に関わります。
平均予算としては30,000~100,000ほど。
売り上げに貢献してくれてて頑張っている子にはお金をかけてプレゼントしますね。

お客様やお店のことで相談のあるヘルプの話を聞くのも係の務めなので、営業終了後にBARや飲食店に行き話を聞くこともあります。
その際にかかる飲食費は全て係である私持ちですし、帰りの際にはタクシー代を10,000円渡すので、なんだかんだでこれもまた馬鹿にならない額。

そして忘れてならないのは月々の美容代と習い事代。
そもそもホステスというのは美しくあることが当たり前ですし、今以上に美しくなるため必死に頑張っている女性たちが集う業界。
なので一芸以上に秀でて他と個性をつける為に、習い事をしている方も多いんです。なので当然ながらこれも手を抜けず。

・ヘアサロン代  25,000円
・ネイルサロン代 13,000円
・化粧品     20,000円
・美容皮膚科   40,000円~
・スポーツジム  10,000円
・ゴルフ     20,000円~
・エステ代    30,000円~
・茶道      12,000円~


これとは別にお店で使う靴やドレス、お客様との会話のネタを増やすために契約している新聞代や書籍代…書けば書くほどお金ばかり出ていきます。
故に水商売というお仕事は確定申告をしっかりすれば、以外なものまで必要経費として認められ、場合によっては還付金が貰えるケースもあります。
税金申告していないと税務署にバレた時に恐ろしい額の追徴課税を喰らいますから、確定申告をしていないホステスは是非納税を!(銀座では税金未納でひどい目に遭うホステスが少なくないです)

結局銀座という街でやっていこうとすると、人付き合いが重要視されます。人付き合いに対して然るべきお金の使い方をすれば評価があがり、そのお金が呼び水となって大きなリターンを生むんです。
それに出ていくお金が多い分、必要な時にお金がなければならないので節約をしようという心がけや、お金の扱い方について考える機会を与えてくれますし、お金の扱い方が解るようになるとお客様のお財布事情を考えた営業をかけられるようになるんですよ。
この業界にはチャンスボトルという言葉があります。それはキープボトルのお酒が無くなりかけている状態で、飲みきってしまえば次のボトルを注文できるので売り上げに繋がります。

しかしお金の扱い方が解るようになると、お客様が一ヶ月の内に使える予算が見えてくるんです。

なので「今日はチャンスボトルだけども、先週はシャンパンを3本も入れてもらったから無理に飲むのはやめよう」とか「今月はまだ予算残ってるだろうな」とか、状態によった営業ができるのでお客様も無理なく安心してお店に来てくださるんですよ。
お客様にお金を気持ちよく使わせてこそ一流のホステスです。
そうした気遣いや周囲の協力が積み重なって売り上げというものは出来ているので、出ていく出費は大きいけれども、金銭面や自分の成長という意味で価値のあるリターンを得られる業種の1つですよ。


と、綺麗にまとめたいのですが…それにしたって現役時代の月々の出費や必要経費、結構な額だな…と思ってしまうのも事実ですし、どれも削れない出費なんですよ。
稼げなかったら赤字になるような使い方なので、そりゃ皆必死に働くよな…と思うと、ヘルプは係の奴隷ではなく…そもそもホステスそのものがお金の奴隷なのかも知れないな…と腑に落ちてしまったのです。(でもこれってどんな職業にも言えますけどね)

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