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トーナル→コーダル→モーダル(2)

(1)トーナルとはなにか
(2)ジャズ研におけるトーナル感覚の問題点    ←Now
(3)ジャズの歴史とトーナル→コーダル→モーダル
(4)トーナルと音感。トーナルだけでもジャズはできない。

Index

トーナル=調性感覚ということを(1)で述べました。
この調性感覚は、ジャズに限った話でもありません。
すべての音楽ジャンルにおいて有利な音楽の基本的な力といってもいいでしょう。

今回は、ジャズ界隈におけるトーナルの問題点を考えてみようと思います。

基礎=トーナルは応用=ジャズでは必須

ジャズには「難解」なジャズ理論、があります。
ツーファイブ、ハーモニック・マイナー、ホール・トーン、オルタード、アッパー・ストラクチャー・トライアド……etc.。
そもそもアベイラブル・ノートスケールもそうですが。
膨大な理論体系がある。

しかし、これを学ぶに際して「トーナル」感覚は、当然ある前提なんです。
でもそのことは誰も言ってはくれません。

例えば、中学に入学すると「数学」が始まりますね。
小学校の算数は当然理解している前提で、授業は始まります。
それに似ています。
実際、小学校の四則演算や分数を全く理解していなければ、数学に進んでも理解なんかできないわけです。

そうです。ジャズ研において「トーナル」全くない状態でジャズの理論だけ手を染めても、全くおんなじ状況になってしまうわけです。

ジャズ研学生の陥穽

この問題点が顕在化するのは主にジャズ研でのみ、と言えるでしょう。

音大や、音楽の専門学校では、あまり問題にはなりません。
音大には音楽経験がない素人は入ってきませんから。

習熟する過程で、このトーナル感覚はある程度磨かれ得るものです。
音楽の専門学校も同様です。カリキュラムの最適化のため、スクリーニングと振り分けは行われますし、能力を満たさない場合も、イヤー・トレーニングも含めて、リカレント教育は存在すると思われます。

幼少期に音楽をしているかどうか。
これ、やっぱり重要だったりします。
音楽の初頭教育では、用語としての機能和声とかダイアトニックコードとか、そんなしちめんどくさい話はしませんが、そのかわり、ある程度の時間音楽に触れれば、この「トーナル」感覚は体得できます。
そう、トーナルというのは「音感」という言葉でも表現されるものです。

ただし、ジャズ研では、この「トーナル」感覚を問いただされることは少ないわけです。
なんせ入部して下さる奇特な方、門戸を狭めるわけありません。

思春期になって初めて楽器を演奏する人。
こういう調性感覚を身に着けていなくて、すっぽりここが抜けている人は結構います。
(何を隠そう私もそうでした)

音大に幼少期に音楽をしていない人はまず入ってきません。
ところがジャズ研には幼少期に音楽をしていない人が一定数いるわけです。そして、そこを残念ながら補完する仕組みもない。

吹奏楽でもトーナルは磨かれない

フロント楽器(サックス・トランペット・トロンボーン・フルート)の奏者は、大学から始めるパターンもありますが、中学・高校で吹奏楽を経験している人も多いですね。
ただ、吹奏楽は音楽にかなりの時間触れる機会があるわりに、調性感覚を養うトレーニングはそんなには行わないですよね。
(これは、一世代前の経験にすぎませんがね。今はどうなんでしょうか?)

音楽経験がない状態で、いきなりジャズ研的な環境に放り込まれるとどうなるか。ジャズ研で、ダイアトニック・コード、機能和声、ツーファイブ、そういうチュートリアルは受けるかもしれない。
ところが、そもそもトーナル、音感が養われていないと、「算数なしで数学を始める」状態におちいるわけです。基礎が抜けている状態で応用をやっても、そりゃ全くわからない。当然、アドリブなんて、論外。
それでも10年くらいコツコツやっていれば、トーナル感覚は身につくかもしれませんが、大学のジャズ研なんて、長いようで短い。遅くとも2年生くらいで「アドリブできる子」「できない子」という選別がなされ、できない子には、そもそも期待されず、チャンスは与えられない、ということになる。

興味深いことに、ギター・ピアノは、このトーナルの感覚をそこまで必要としません。もちろん、超一流の段階は別です。その意味では必要です。
が、この感覚を持たなくても、理数的にバップの演奏はできる。
意外になんとかなる。
これは、ピアノやギターはコード楽器であり、コーダルに演奏することをまず要求されるされるからではないかと思います。

ピアニストで、すんごいうまいけど、歌うたわせたらめっちゃヘタ、みたいな人沢山いますわな。
だけど、口で吹いて息を出す楽器で、歌えない人は、かなり厳しい。

まとめ

理数系の頭は持ちつつ、音楽に対するフィーリングの欠けた人間たちの集団、ジャズ研にはそういう学生がある程度参入してくるわけである。
理数的に音楽を考える前に、感覚がきちんとしていないと演奏にもなりません。

でも、多くのジャズ研では、ここを伸ばしません。
結局小さい頃からピアノやってる人、音楽経験があって、音感ある、みたいな人が、ピックアップされて伸びてゆく。
特に、サックスとかラッパボントロはその傾向が強いですね。

そうでない人は、結局アドリブをあきらめることが多い。

あんまりにもつらい話ですやんか。
しかし「持ってない方」からスタートした私の経験を言いましょう。
私は音感ない人でした。今でも自信はありません。

トーナル感覚がなかったら、やっぱりジャズとかアドリブとか難しいです。
これは事実です。

ただし「小さい頃から音楽をしていないとジャズはできない」わけじゃない。トーナル感覚がないからできないのであって、トーナル感覚を養うトレーニングをすればいいだけです。
もちろん、吹奏楽でよくやる練習だけでは、無理です。
でも、それ専用のトレーニングを行う覚悟があれば、ジャズはできます。

ジャズに限らず、トーナル感覚があった方が、たとえばカラオケで歌うのも上手くなるし、いろいろいいこともありますけどね。

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