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はざまのひかり

夜は、眠ることにした。
「朝起きてから日課に取り組むこと」にハマっている。

これまでは、「夜眠るまでにやろう」と決めていた。
今日中に、という気持ちが強かった。
でも、「朝でもいいんじゃないか」と思えたら、暮らしの速度が少しずつ変わった。
夜は、眠ろう。
なにも考えず、倒れるように。
そして、朝のわたしに託そう。

きちんとパジャマを着て、コンタクトレンズを外して
わたしは、堂々と横になる。
目覚ましを、朝6時にセットしたら、もう何も考えない。
わたしはベッドと睡魔に呑まれて、思考を失ってゆく。

部屋の電気だけ、そのままにしている。

やっぱり、朝起きられるか不安だし、「日課をやり終えないまま眠る」という、言ってしまえば「今日が終わらない状態」で、深く眠ってしまうのは、少しだけ怖かった。
部屋の明かりだけが、今日と明日を、昨日と今日を、そして「紡ぎ続ける」と決めたわたしを、繋いでいた。

それは、取り残されたような明かりだった。

宇宙船のような、
潜水艦のような、
ぽつんとひとりで浮かんで漂う、船のようだった。

辺りはすっかり暗くて、舵を取る人もいなくて、なんだか孤独の匂いがするのに、不思議と寂しくはなかった。
どこへたどり着いても、
そして、どこへもたどり着けなくても、大丈夫なような気がしている。
大丈夫、きっと大丈夫。
如何なる瞬間も、わたしがきちんと”望んで”いれば、物語の続きは描かれる。

それは、ずいぶんあたたかな光だった。

今日もわたしは目覚めてゆく。
昨日と今日の狭間で、紡いでゆく。

寝起きなのに、不思議だ。
昨日のうちに浮かんだ感情がしっかりと定着して、きちんと言葉が生まれてゆく。
生まれた言葉たちは、笑って旅立ってゆく。
わたしはそれを繋ぎ止めて、形にしてゆくだけだった。

「昨日の日課」を終えると、朝が訪れる。
熱いシャワーを浴びて、歯を磨いて、身なりを整えて。

宇宙船や潜水艦の乗務員だったわたしは、またベッドに戻って眠っているのだろう。
ここにいるのは、おとなのわたしだった。
常識をわきまえて、まっとうなような顔をして、何事もなかったように
きちんとしたひとりのおとなみたいに、今日のわたしを始めてゆく。







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