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松屋ができたよ

駅の反対側に、松屋ができた。

駅の反対側はあんまり来ないので、もともと何があったかはわからない。
自分の住んでいる町なのに、どこかよそゆきの気分になる。
両手から何かを、零し続けてしまっているような
自分の目が、とんでもない節穴のような

自分のからだが少し浮いて
タイムスリップしてしまっているような
ここが、自分の住んでいる町であることを、きちんと確かめる必要がある。
そんな感覚だった。

そして、松屋はあった。
見慣れた黄色い灯りを放ちながら
煌々と佇んでいた。

牛丼屋とコンビニが照らしてくれる灯りに、安堵する。
いつでも、あたたかくて美味しいものを食べさせてくれること。
いつでも、明るく照らしてくれること。
いつの日か、あなたと過ごした夜のこと
ぜんぶ包んでそこにある。


駅の反対側に、松屋ができたよ。

そんなひとことを、言いたかった。
LINEを送るほどでもなくて、電話をする予定もなくて、手紙を書くころには、きっと忘れてしまうだろうけれど

本当はただ、そういうことを話したかった。


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