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ひとつぶのチョコレート

なにか甘いものを食べたい、と思ったときに
リンツのチョコレートのことを思い出した。

このあいだ2粒、買ってもらったチョコレート。

リンツの前を通ると、チョコレートを買うようにしている。

よく言えば「好き嫌いがない」
別の言い方をすれば「好きな食べ物がない」という相手と暮らしていると、相手を喜ばせるのがなかなか難しい、と思う。

いちばん手っ取く喜ばせる方法がプレゼントで
いちばん手っ取り早いプレゼントが食べ物なのに。

そんな同居人が珍しく喜んで食べるのがリンツのチョコレートだった。
だから、見かけるたびに買ってゆく。

いつも同じものをふたつ。
こんなのでいいのかなあ、いつも同じで
と、不安に思ってはいるのだけれど、気づくと冷蔵庫から消えているので
まあ、食べているならいいか。
そんなふうに思っていた。

冷蔵庫にふたつ、リンツのチョコレート。

このあいだ一緒に出掛けたとき、久し振りに自分の分を買ってもらった。
マンゴー味と、オレンジ味。

マンゴーの、金色のフィルムを剥いで
白いチョコレートが現れて、にんまりする。

リンツのまあるいチョコレート。
そのまま口に放り込む
ああそうだ、この幸福感は何にも替えられないのだから

そしてこの幸福を誰かから贈られているとするならば
ああそれは、きっとーーー

わたしはまた、リンツの前を通ったらチョコレートを買うのだと思う。
何度も、飽きもせず
移ろうことのない、確かな幸福を求めて




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