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魔法のキャンディー

久し振りに、キャンディーを食べた。

友達からもらったお菓子セットに入っていたキャンディーは、りんごの味がした。
果物のりんごじゃなくて、お菓子のりんご味。

その、宝石みたいな赤い輝きに閉じ込められた、甘さ。

キャンディーは、わたしの魔法だったことを思い出す。

たぶん、虫の居所が、悪かったんだと思う。
細かいことはもう忘れてしまった、何年も前の話で
相手が言っていたことも真実で、わたしも悪い部分がきっとあったのだと思うけど
なんだか妙に、突っかかられる夜だったことを、いまでも覚えている。

いつもは煙草に火を付けて落ち着かせていた心だったけれど
煙草の火では、追いつけないほどのざわめきだった。

たまたま置いてあった、袋に入ったキャンディーを、ひとつずつ手に取る。

甘いのを少しだけ味わったあと、わたしはキャンディーを噛み砕く。
少しだけ目を閉じて、言い聞かせる。
それは、魔法にも呪いにも、祈りにも似ていた。

「キャンディーをひとつ、噛み砕くたびに、不快な感情も一緒に噛み砕こう」

キャンディーはわたしの、お守りだった。

甘さが欲しいときには、わたしの口を守ってくれて
キャンディーを食べているあいだは、他のお菓子を食べなくてすむ。

切なくなると噛み砕いて、
口に残る甘さが、わたしをやさしく包んでくれる。


キャンディーをひとつかみ
これからは部屋に置いておこう、と思っている。





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