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これだから、人生は愉快だと思う。

小さな猫が、駆け抜けて行った。

小さな猫だと気づいて、確信したとき。わたしは驚いた。
そうか、わたしは猫の大きさがわかるようになったのか。

実家では犬を飼っていた。
周りもみんな犬ばかりで、猫を買っている先輩とはあんまり親しくなかったので、猫のことはほとんど知らずに育った。
近所の猫も、一匹を除いて懐いてはくれなかった。
懐いてくれた彼(ライオンの王様、ムファサと名付けた。メスだったかもしれない)は、もう友人みたいなもので、猫という次元を越えていた。一緒に散歩をして、月を眺めたら、それはもう友人だと、わたしは思っている。


友達が、猫を飼い始めたときには驚いた。
その、あまりの小ささに

ブリーダーさんから、適切な時期に引き取ったその猫は、生後数ヶ月は経っていたと思う。
でも、あまりにも小さくて、踏み潰してしまいそうだった。
わたしもどきまぎしていたし、猫も猫で不安そうだった。
あれから3年以上経って、身体の大きさもあんまり変わらいところまで成長した。
もう、自宅を悠々自適に歩き、走り回っている。

目の前を通り抜けた猫は、ずいぶんと小さかった。

そしてわたしはようやく、人生に於いて猫の大きさを判断できるようになったことを知った。
知っている猫は、たった一匹だけど
道端の猫を、大きいとか小さいとか、思えるようになる日がくるなんて、ぜんぜん思っていなかった。
そうか、わたしはそんなふうにまたひとつ、物事を知っていったのか。

ぜんぜん気づかなかったな。
知らないうちに知っていって、当たり前になっていたな。
そういうことを、たまに気付ける。
わたしは、にやりとする。

これだから、人生は愉快だと思う。

ささやかなことで、とても愉快になれる、と気づいて、やっぱりわたしはまた、笑ってしまった。




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