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今日は、風が吹いている

電話をするときの何回かに一回は、近くの川辺まで行く。
川が好きだ。

今日は同居人がゲーム実況をやってたので、電話のために外に出た。
1時間、わたしは煙草を吸いながら友だちと話す。
一瞬、雨の気配を感じたけど、すぐに去っていった。
水面を撫でたあとの風は、どうしてこんなにおだやかなんだろう。

家に帰ったら大変な熱気だった。
「実況中は声が大きくなるので、絶対に窓を閉める」というのは、わたしが決めた約束だ。
前の家で、「うるさいから」と警察を呼ばれ、退去に追い込まれたことを、わたしはまだ根に持っている。

実況が終わったあと、エアコンの温度を下げようかと思ったけど、
そういえば外のほうが涼しいかもしれない。
この家の窓は、リビングと居間の窓が、距離を挟んで向き合っている間取りだ。
風の通りはいいはずだと思い、試しに窓をあけた。


ぶわっ、と気持ちのいい風が通り抜けていった。


濡れた髪を乾かさなければいけない、
noteも書きたいし、ゲームもやりたい、
ああでも、いまは、そうじゃない。
風の通り抜けるのを感じながら、わたしはぼおっとソファーに倒れた。
まだ、気持ちのいい風が通り抜けている。


人は毎日、あまりにも多くのことを考えて、
忘れたり、根に持ったりする。
常に、タスクを抱えている、またはタスクを抱えているような気持ちでいる。
髪を乾かさなきゃ、歯磨きしなきゃ、本も読みたいけどゲームもしたい、
気づいたら、「もう寝なきゃ」の時間だ。


ああ、でもいいんだ。
今日、いま、こんなふうに気持ちのいい風が吹いている。

もう、30年も生きているので「この風が不安をすべて吹き飛ばしてくれる」とは言わない。
不安は不安で、きちんとわたしの隣りに座っている。


それでも、
いま、こんなふうに気持ちのいい風が吹いている。


そのことに気づけて、その風を全身に受け止めるわたしは
きっと明日も、したたかに生きていけるのだと思う。


photo by amano yasuhiro

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