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コゴトをオオゴト

なんだか、すぐオオゴトにしちゃうね。
後回しにするたびに、コトはどんどん大きく膨らんで
手を付けられなくなってしまう。

という、錯覚。

ありがとう、と思いながらぐっと唇を噛んだのは去年のことだった。
お見舞いに送られてきた入浴剤。

お風呂に入るのがいいよ、なんてやさしい言葉じゃなくて
「ずっとお風呂に浸かっていたい」っていうのが、彼女らしかった。

お風呂に入る習慣があまりない。
シャワーでよくないか?と思う。
「シャワーじゃあったまらなくない?」って言われるけど、
汗を流すんだから、べつによくない?

身体を痛めたときに、「お風呂が大事」って主治医に叱られて
頑張ってみた時期が、あったりするけれど。
お風呂掃除って面倒だし。
お風呂ってなんで、あんなすぐに汚れるんだろう。
バスタブなんて使ってないのに。

最近は病を言い訳に、お風呂掃除もサボリ気味。
なんて言いながら、もう半年。

やらなきゃね、面倒だね、なんて思いながら時間ばっかり経って。
汚れは積み重ねられてゆく。
増えるのは手間ばっかり。

掃除をしない期間が長くなれば汚れは増えるけれど、根本的にやることは変わらないのだから。
早くやればいいのに、どうしてこんなに面倒になっちゃうんだろう。

後回しにするたびに、コトはどんどん大きく膨らんで
手を付けられなくなってしまう。
そしてオオゴトになってしまう、という。
それは錯覚だと、気づいている。

今日はお風呂を掃除した。
「何もしないでいちにちが終わること」よりも、掃除をするほうがいいように思えたから。

水を張ったバスタブに洗剤を投げ込んで、追い焚きをして
排水口にも専用にアイツを流し込んで
スポンジでこすったり、細かいところは歯ブラシでこすって

最後に、バスタブに浸かった。

オレンジ色のバスタブは思ったより幸福で、
ただ、それだけの出来事だった。

ぜんぜん、たいしたことなかった。
むしろ、「磨けば落ちる汚れ」は愉快だとすら思えるのに。
むしろ、こんなにスッキリするのに。

動けなかった、半年間も。

なんだか、オオゴトにしちゃったね。
そうしていくつを、遠ざけたり、諦めたりするんだろう。

すべて拾えるようなまじめな生き方はしたくないけれど、
「できなかった」と思いながら首を絞めるような生き方も疲れてしまうから

次はどんなオオゴトをやっつけてくれようか。
なんて、
今日くらいは、そんなふうに考えてもいいかな。





※今日のBGM

(あのときは、お見舞いをありがとう。その気遣いに救われました)





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