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君に伝えたい百の言葉

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あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
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#友達

抱きしめてから蹴飛ばして

 ムカつく連絡がきた。  いやはや、心穏やかではないし、わざわざそんなこと言うなよ。と、お思いになるかもしれないけれど、確かにムカついた。  悪気の有る無しじゃなくて、それでいったら悪意はなくて  強いていうならば、「いつでもいいです」「なんでもいいです」が延々と続いて、全部こっちで決めることになってしまった。いや、いーんだけどサ……それが気遣いなのもわかっているし、ムカついたって仕方がなくて、何にでも合わせられることは長所だとも言える。  とにかく、怒っているバアイではな

ハッピーセットをポケットに

友達から連絡がきた。 ぽんっ、とひとつ、いつも通りのメッセージが届いたあと、しばらくしてこちらを気遣うような内容が続いた。自意識過剰かもしれないけれど、生身の、温かさを感じた。 わたしは時折、文章から必要以上の温度を感じ取ってしまい、それを勝手に受け取ってしまう。 感覚を信じすぎてはいけない、言葉は言葉であり、それ以上ではない。 わかっているのに、無視することができない。足裏を流れる、さざなみのように 心配をかけてしまったな、と反省した。 いつも、自分としては落ち着いた心

【お悩み相談】 知り合いは多いけれど友達は少ない

誰かにわざわざ話すことでもないけれど、 もしも誰かが「悩みとかない?」って尋ねてくれたら 深夜0時、暗闇にまぎれて、こぼれ落ちる言葉があるかもしれない。 おとなの保健室”深夜のお悩み相談” 今日は、このあいだやったプレゼント企画のときにいただいた悩みにお答えします。 いま、あなたが隣に座ってくれているかのように、つらつらおしゃべりしてみました。 長文なので、流し見読み推奨です。 友達が少ないことって、いけないこと?この質問って、「友達ってそんなにいなくても大丈夫だと思い

切なる願いで、生きてゆくこと

「恥ずかしいんだけど」って、言わないように気をつけることにした。 わたしが「恥ずかしい」という枕詞で話し始めてしまうと、同じ境遇の人に「恥ずかしい」という烙印を押すことになってしまうかもしれない、という危険性に気がついたからだ。 だから、何事もない顔で近況報告をするけれど、1週間ほど会社に行けていない。 正直、恥ずかしいと思う気持ちもあるし、不幸自慢と思われてしまっても仕方がない。 でもこれは、近況報告なのだ。 そして、友達がしんどいときには「休め」と言いたい。何も考えるな

どうでもいいこと / 覚えていたいこと

5月27日 町田プレイハウスにて、大学軽音部の同窓会を企画しました。 大切なこと、よろこばしいこと、嬉しいこと。 ほんとうにたくさんあった。 でも、誰も気づいていないと思うけれど これがいちばんだった。 今日は、そのことを書き残したくて この日のイベントを組むための紆余曲折も聞いて欲しいんだけど、そこがガツッと割愛して 結局、「身内だけの同窓会」+「現役で音楽活動を頑張っている山さん(山岡くん)の誕生会」を兼ねて開催することに 身内の同窓会は、こちらの不安をぶっ壊すく

手渡されたチケット

チケットが取れてしまった。 驚いている。 * 沖縄の友達が「東京へ行く」「チケットが取れたらね」と引用ツイートしていた。 ツイート元を確認してみると、チケットというのはレッチリのライブのことだった。 そうか、レッチリ来日するのか。 わたしが知る限り、友達が東京に来るのはとても久しぶりで、ぜひ会いたいと思った。 そしてもし叶うならば、わたしだってレッチリを見たい。と思った。 その日のうちに、共通の友達に話をした。 会いたいし、ぜひ見たいね。と言ってくれた。 そして翌朝

服さえ着ていれば

「恋愛がね、できないんじゃないかと思って」 スターバックスの、オレンジ色のひかりの中でつぶやかれた。 一日かけて、何時間も語り合ったあとで、我々はようやくこの話題にたどり着いた。 意図的に、触れないようにしていた話題だった。 なぜだか、言うべきではない、と 不確かなのに強固な警笛が響き続けていた。 言いたいようなことがあったら、言ってくるだろう。 そう思って、何年経っただろうか。 「え、いいじゃん。べつに」 なにも考えずに出てきた、それはもうとびきりの大安売りみたいな

「ありがとう」を美しいと思ったあの夜を、

ああ、なんと美しいんだろう。 わたしも、然るべきときにはそう在りたい。 と、強く願った。 * 「洗っておくよ」と言われた。 赤いネルフのロゴ入りの、黒いマグカップはわたしのお気に入りで 昨日から、飲みかけのコーヒーを冷蔵庫に入れっぱなしになっていた。 今夜はもうコーヒーは飲まないから、洗っちゃおう。 そう、思ったときにこと。 「いいよ、わたしやるよ」 だってマグカップひとつだし。 わたしは、シンクの前に立っている。 君はこのあと、手を洗うついでだと言ったけれど ぜんぜ

くたびれた電池

画面の、右上に視線を動かす。 思い出、タイムマシン 繋がっている外付けハードディスクのアイコンの上に、小さな通知。 流し読みして、「閉じる」を押す。 通知の内容は2種類で、 ひとつは、Dropboxの容量がいっぱいになっていること。 (友達と共有しているフォルダなので整理が面倒。Googleドライブに乗り換えて、今では使っていない) そしてもうひとつは、「電池が切れるのですぐに変えてください」 わたしはいつも、すべてを無視する。 まあいいや。いまは動いているし。問題ない

晴れた日、午後のカーテン

左手の指輪を忘れた。 ここのところ、もう何年になるだろう。 ずいぶんと長いあいだ、左手の中指に指輪をしていた。 指輪を忘れると、寂しい。 なんだか、落ち着かない。 忘れないように、いろんな工夫をした。 財布にしまったり、鍵と一緒にキーホルダーにくっつけたり。 忘れてしまった日には騒いで、リボンを巻いてもらったこともある。 だから、細心の注意を払っていた。 左手の中指は、わたしのポラリスだった。 迷っても帰ってこられるように、幼い魔法がかかっていた。 わたしは、いまでも

ひとり暮らしのあなたに、知っておいて欲しいこと。 〜新型コロナウイルスに感染したわたしより

「熱が出た」 その連絡がきたときに、「ついに」と思った。 人間だもの、誰だって熱は出る。 でも、このご時世だ。 不安は、ぐっと募る。 熱が出たところとは別のところで、わたしは安堵していた。 約束が、果たされたことに。 * 今日は、ひとり暮らしのあなたに。 または、大切な人がひとり暮らしをしている、というあなたに 2021年8月に新型コロナウイルスに感染したわたしが「知らずに困ったこと」と この経験を経て、大切な友達に伝えたことをお話したいと思います。 1.熱が出たら

キッチン

「うちに住めばいーじゃん」 これはもはや、君の口癖と言っていい。 すぐ、言う。 昨日も言っていた。 「そっちのほうに住みたい」という友達に、 「家決まるまで、うちに住めばいーじゃん」 わたしは慌てて、「うちでよければね!」と付け足す。 うちは、2人暮らしの1LDK。 キッチンはキッチンであり、それ以上の役割を持たせることが難しいタイプの間取りで リビングにはテレビとソファーがあって、同居人の私室を兼ねている。私室って言っていいのかわからないけれど。 たったひとつのドア付き

どうせ、めんどくさい人生だから

言えなかった。 人に頼む、というのは妙に面倒だったりする。 不思議だ。頼み事は自分の手から離れてゆくから、わたしは身軽になるはずなのに。 「頼んだ結果、良いものが返ってくることを願う」と、なかなか大変だ。 その先にはずいぶん面倒な説明と、大きな落胆が待っているかもしれない。 「忙しそうだしな」と思うこともある。 嫌な顔をされてしまうかもしれない、と思う。 最後はいつもこうだ。「自分でできるから」 そうして、唇はいつもの言葉を紡ぐ。 「自分でやったほうが早いし」 その

わたしはその日、仕事を休んだ。

「そういえば、ようやく言ったよ」 彼女の声は、いつも通りだった。 「”アレ”、要らないって」 “アレ”というのは仕事関係で定期的に届く、まさしく”アレ”のこと。 先方はよかれと思っている、または送らなくては失礼だと思っている、とか、そういう類のものだった。 が、彼女は”アレ”が大の苦手だった。 彼女の目につかないよう、わたしがこっそり捨てることもあった。 長年、小さなたんこぶのようだった。 要らないと伝える、という選択肢は、近年になってようやく浮かび上がってきた。 不思