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それがたった5千円だったとしても

 人生で初めて仕事をして得たお金はとても嬉しかった。

 私が仕事を始めたのは21歳ぐらいだっただろうか。
 盲学校を卒業した後、視覚障碍者が中心の就労継続支援B型作業所に入った。
 そこは視覚障碍者が中心ということで、市の広報や点字名刺の印刷、さらに軽作業などの仕事をしていた。将来は点字に携わる仕事がしたいと考えていたので、盲学校の高等部での作業実習でその作業所を訪れた時から、卒業後はここに行きたいとずっと思っていた。

 そんな念願叶って入った作業所での初めての仕事は、ホテルで使うタオルが入った袋に歯ブラシを入れていく軽作業だった。やりたいと思っていた点字の仕事ではなかったけれど、それでも軽作業も好きだったので一生懸命やらせてもらった。
 そのうちに名刺にくぼみを入れる仕事(名刺に点字を入れる際の目印をつけるための物)や、印刷された広報のページ確認など、点字に関わる仕事も少しずつさせてもらえるようになった。

 そんな中初めてもらった工賃はわずか5千円だった。
 B型作業所とはいえ、毎日これだけがんばっても5千円しかもらえないのかーと残念な気持ちもないわけではなかった。しかしそれがたったの5千円だったとしても、自分が仕事をして初めて得られたお金なのだという喜びの方があの頃は大きかったかもしれない。あまりの嬉しさに、帰ってから祖父の仏壇にこっそり備えたのを覚えている
 しかしその5千円を何に使ったのかは覚えていない。たぶん通勤のバス代で一瞬にして飛んでしまったのだろう。まあB型作業所なんてそんなものなのだ。
 そりゃあ仕事をするからには、毎月生活していけるだけのお金が稼げるのが良いに決まっているし、そうあってほしいと思っている。でも仕事をする上で1番大事なことって、お金よりもやりがいなんじゃないだろうかとも思うのだ。

 今回のnoteのお題チャレンジ投稿企画で、
#はじめての仕事
というテーマを見つけて、改めて作業所に入った21歳の頃の気持ちを思い出した。
 現在入所している施設での訓練が終了したら、この施設の系列の作業所に行きたいと考えている。ちなみに作業所という場所に行くのは約8年ぶりぐらいである。
 その時には、作業所に通い始めたあの頃の気持ちを忘れずにいたいと思う。

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