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「ゆきぼうはいっつもおせえなあ」

 今日11月一日は点字制定記念日である。
 今はどうなのかは分からないが、母校の盲学校では、毎年11月一日前後になると、「点字競技会」という校内イベントが行われていた。
 イベント前半は点字の成り立ちや歴史についての話を聞いた後、後半は50音を2分間でどれだけ書けるかを競う「50音書き」、点字で書かれた文章を、こちらも2分間でどこまで書けるかを競う「点写(写し書き)」、さらには先生が読む短文を、2分間で何回書けるかを競う「聴写(短文聞き書き)」の三つの競技をやっていた。

 今でこそ「点字読むの早いねえ」とか「書くの早いねえ」などと褒められることが多いのだが、これでも本格的に点字を使うようになった小学1年生の頃は、教科書の点字を読むのはもちろん、ノートをとるのに点字板で点字を書くのも、他のクラスメートたちの中で1番遅かった。
 その当時の地元の盲学校の小学部には、点字の授業というのがあった。
 その授業では、さきほど点字競技会のところでも書いた競技とほぼ同じことを毎週やっていた。
 読むのも書くのも遅かった私は、点字の授業の度に、クラスの男子たちから「ゆきぼうはいっつもおせえなあ」と言われ続けていた。ちなみに「ゆきぼう」というのは、その頃つけられていたあだ名である。
 その頃から負けず嫌いだった私は、男子たちから毎回そう言われるのが悔しくて仕方なかった。
 だからできるだけ毎日点字を読んだり書いたりするようになった。少しでも読み書きが早くなりたくて、間借りなりにもがんばっていたのだ。クラスの男子たちから「ゆきぼうはいっつもおせえなあ」と言われたくない一心で…。

 今思うと、点字での読書が好きになったのも、担任の勧めで点字を読む練習のために図書室で本を借りて読むようになったのがきっかけだった。さらに今こうしてnote記事の下書きを点字でするようになったのも、あの時の書く練習があったからだと思う。
 あの時クラスの男子たちから「ゆきぼうはいっつもおせえなあ」と言われ続けていなかったら、そこまで点字の読み書きをがんばらなかったと思う。これも負けず嫌いな性格のおかげかもしれない。
 そんなことを、点字制定記念日の今日改めて思ったのだった。

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