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短い物語のようなもの
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2022年9月の記事一覧

二、終わりの先

二、終わりの先

無に返った。そうは言えなかった。
私達は多くを失ったが、そこには残ってしまったものがある。

瓦礫の山。積もった雪のような灰。誰かがどこかで泣いている声。

「こんなはずじゃなかった、のにな」

二、終わりの先

呆然と膝を折った貴方の前には、無よりも残酷な世界が広がる。
ここは、終わった後の。戦って、生き延びて、手にした勝利の先。
けれど絶望する暇はない。

「望まなければならないわ。未来を」

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一、それに気づくにはあまりにも遅すぎた

一、それに気づくにはあまりにも遅すぎた

なんと、美しい人だろうか。

一、それに気づくにはあまりにも遅すぎた

彼がこんなにも美しい人だと、こうして対峙してみて初めて解ったのだ。これが傍らに居たのだと思うと、背筋がぞっとする。なんとも惜しいことをした自分を殴ってやりたい。

──何故、今まで気づかなかったのか!

きっと私は、酷く歪んだ顔をしている。柄を握る手は白く強ばり、まるで温度を感じない。
対して、彼は静かにそこに立っている。両手

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