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散乱した詩

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ことばの集まり
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2022年10月の記事一覧

何だったのか解らない

何だったのか解らない

削られていく
零れ落ちていく

砂のように指の間を
擦り抜ける何かが

何だったのか解らない
とても大切なはずなのに

どうして大切にしていたかも
もう思い出せそうにない

ただ懸命に手繰ろうとしている
取り戻そうとしている

元通りにならないことだけは
明確に知っていながらも

悲しい「私」が生まれる前に

悲しい「私」が生まれる前に

悲しい「私」が生まれる前に
誰か早く助けに来て

途方に暮れた足下に
優しい歌を贈って

悴んで震える指先に
温かい花を添えて

失くしたと嘆くこの世界で
まだ願いだけが形を持っているから

影を落とすのが光なら
まだ間に合うと信じているから

悲しい「私」が生まれる前に
どうか早く助け出して

明日が許してくれないとしても

明日が許してくれないとしても

今日の失敗も
昨日の恥も
生まれ持った劣等感さえ

全部

明日が許してくれないとしても

この夜だけは
こんなに情けない気持ちを
笑い飛ばしてくれたらいいな

守るものが違うだけで

守るものが違うだけで

守るものが違うだけで
私達は簡単に敵同士だ

愛しい命を抱いた手で
誰かの最愛を奪っている

私も貴方もただ必死で
世界を守ろうとしているだけ

そうして築いてきた不幸の上に
幸せは僅かに煌めく

私が欲しい「あなた」

私が欲しい「あなた」

私が欲しい「あなた」は
いつだって此処にしかない

他人の主観では描けない
ましてや享受出来ない

望みよりも願いに近く
祈りよりも幸いから遠い

空想よりも厄介で
現実よりも面倒な

私の頭の中の「あなた」が
私はいつだって欲しい

「ぜっと通信」もよろしくお願いいたします
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https://note.com/hane2_t/n/n6715e383cb4f

居心地のいい闇

居心地のいい闇

暗いところから明るいほうへ向かうのは
本当はとても簡単なことのようだ

だってここからは君の笑顔がよく見える
君のいる眩しいほどの世界がよく見える

目指すべきものはわかってるのに
光にすくんで手が伸ばせない僕は

まだ思いつく限りの言い訳を並べて
この居心地のいい闇から抜け出せずにいる

「ぜっと通信」もよろしくお願いいたします
↓↓
https://note.com/hane2_t/n/n

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絶望とは

絶望とは

絶望とは

何処か遠くから
やって来るものではない

常に足下を這い
機会を窺っているのだ

私達が気づいてしまうのを
ただ待っているのだ

狡猾で獰猛で
何より情け深い

去っていく

去っていく

去っていく
ただ去っていく人達

その濁流の中で
いくら手を伸ばしても

記憶の底に消えた光は
二度と戻ってこない

忘れたくないのに
忘れないと思っていたのに

どうして私達は
進まなければならないのだろう