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勘違いの大失恋、でも…期待したり、されたりすることでしか味わえない感情もあるはず

心に穴が空いたとは、文字面では見たことがあるものの、体感したのは初めてでした。空虚とはこういうことをいうのかもしれないと、少しわかった気がして、今の思いを書きたくなりました。

簡単に言えば、私の見る目がなかったのだと、それだけなのですが、感じたことを綴ってみようかと思います。

私は、ずっと彼のことを誤解していたらしいのです。一見、クールで何を考えているのかわからない、いかにも賢そうで、無口で、謎めいていて、自分にストイック。多趣味で好きなことには全力。私が弱音を吐こうとも、甘々な言葉を囁いてくれるようなことはなく、終始正直でお世辞が言えない。けれど、必要とした時は、そんな調子でもなんだかんだ話を聞いてくれて。最後の最後、きわきわのところでは結局優しい人なのだと疑いませんでした。

失礼なことは当然のように言わず、最小限の紳士的な対応。その素っ気なさにこちらが気を引かれて、気づいた時には彼に惹かれていました。

大笑いとかは絶対にしないタイプであまり笑わないからこそ、たまに笑っていると嬉しくて。何をしたら彼が笑ってくれるのか、もっと笑顔が見たいなんて、こんなベタすぎることさえ思うようになりました。

会うたびに、彼と私の間では何かが育まれているはずだと、そう感じていたから、一緒に星を見に行った日に、私たちは体を重ねました。抱きしめられると嬉しくて、やっぱりそうだと感じました。雨で星が見えなくても、私にとっては煌めく夜に感じられて。明けるのが惜しい夜だった。

私は最初から彼のことが好きだったのだと気づいてしまいました。だから真剣に思いを伝えました。いつも緊張して、本当に伝えたいことを言えなかったから、文章にして精一杯伝えたつもりです。だけど、だけど違ったらしいのです。私の気持ちにはそんなに興味がないのだと。彼に限ってそんなことはないと信じたかったのです。が、人の感情を推しはかることに意味はないのだと、言われました。てっきり、彼は私への気持ちを隠しているのだと、恥ずかしいから、気持ちの部分はいつも語ってくれなかったのだと考えていました。しかし、それは私の思い違いだった。ただ、本当に、そこには感情が生まれてなかっただけのようで。自分が人に怒らないのは、期待しないからだと、私が彼のことを買い被りすぎたのだと、彼は言っていました。こんなのはよくある話なんだと。何だかいつもより楽しそうに半笑いで話す彼に戸惑いました。

彼にしてみたら、煩わしいことでしょう。警告しているのに、私が勝手に近づいてきて、惹かれて、好きになって、傷ついて、さらに今、向き合いたくもない相手に存在しない感情について話せと迫られている、総括するとこんな感じでしょうか。彼はそこまでは言ってないんだけど、なんて、やっと少し困ったように言っていました。

今まで重ねてきた思い出には感情が伴わず、彼がこんなにも簡単に人の心を荒らせる人だったなんて、あまりに衝撃的で、受け入れたくなくて、理解に時間がかかりました。私は彼のことを何にも知らなかった。そして、私は彼にとって、自分をさらけ出せる相手でもなかったのだと気付くこともできなかった。彼の目には、私がそういう扱いをされても平気な人だと映っていたことが、ただただ悔しかった。

私には、彼も私に惹かれているように見えていました。あの時からずっと恋をしていたのは私だけだったのに。勝手に無い部分を補って、ドラマを創り上げてしまっていた。ここまで来ると、もう自分の想像力の豊かさを憎むしかないですよね。

巷の人々は、こんな気持ちを経験したり、抱えたりしながらも、それをどうにか乗り越えて生きているのだと思うと、本当にすごいとしか言いようがないです。私にとっても初めての本当に辛い経験だったけど、また知らない感情に出会えたから、無駄だとは思いません。むしろ、ありがたいと思うくらい。

ここまで、私が勘違いして失恋したというだけの話を長々と書いてきましたが、最後に。感情にはあまり意味がないことに気づいたのだと、彼に言われてしまったのですが、私はそうは思いません。確かに、人の気持ちほど複雑で難しくてわかりにくいものはないと思います。そして、人の気持ちほど変わりやすいものも然りです。だからこそ、今回の私のように見誤ることだってあります。私が彼に期待していたことが叶えられることはなかった。だけど、そんな中でも、人の気持ちを押しはかったり、押しはかられたり、人に期待したり、期待されたりすることでしか生まれない感情もあるんだと、私は知っています。それらを一つ一つ集め、味わうことこそ、人生の意味なのかもしれないなんて言ったら、彼は大袈裟だと言って笑うのでしょうか。


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